浅間山の泥流を防ぐ砂防事業

2012年1月23日
 八ッ場ダム予定地の上流にある浅間山は、わが国有数の活火山です。国土交通省は来年度から、浅間山の噴火に備えて、砂防事業を始めることになりました。八ッ場ダム予定地を抱える長野原町も砂防事業の対象自治体に含まれます。この砂防事業がどれほど効果があるかは定かではありません。

 国交省は浅間山噴火の際、八ッ場ダムに砂防ダムの役割を期待できるとしています。浅間山は数百年に一度、大噴火を起しており、過去何度も泥流が流下した吾妻渓谷に八ッ場ダムが建設されることになっています。噴火の形態によっては、八ッ場ダムが火山災害を増幅する危険性が指摘されています。しかし、国交省は天明三年の大噴火の際、ダム予定地を流下したとされる泥流の推定値の最低値と八ッ場ダムの貯水容量がほぼ同じであることを根拠に、「八ッ場ダムは砂防ダムの役割を果たす」という荒唐無稽な見解を唱えるようになりました。様々な火山学者の見解がある中で、八ッ場ダム建設にとって最も都合のよい想定のみをピックアップした結果と考えられますが、東日本大震災を経た今も、このような想定に安住しているとは、驚くほかありません。
 ちなみに、浅間山の噴火泥流の総量について、国交省関東地方整備局の委託による平成5年の調査「火山活動に関するダムへの影響調査」(国土開発技術研究センター)では、1.4億トンと推定しています。また、1108年の噴火は、天明三年の噴火よりはるかに大規模で、噴出物総量は30億トンに達したと推定されています。こうした大爆発が起こった時、八ッ場ダムはもちろん、砂防ダムの役割を果たせないでしょう。災害の規模があまりに大きく、ダムによる被害の増幅など、それに比べれば大したことはないので考えないことにしたのでしょうか。 
 ダムは完成後、次第に堆砂によって貯水容量が減っていきます。1億トンの泥流が流下した時、八ッ場ダムが砂防ダムになるという想定は、堆砂も考慮していないことになります。

◆12月27日前田大臣会見録より(国交省ホームページ)
http://www.mlit.go.jp/report/interview/daijin111227.html

 それからもう一つは、天明の地震というものも検証の中に入っておりました。これは1783年、天明3年か4年です。浅間が大爆発して、山麓をえぐって、大火砕流、大泥流が発生しました。何とそれが、吾妻川が利根川に合流する地点です。多分、前橋の辺りだと思います。その辺りまで10メートルの段波が襲ったのです。それがずっと下流の江戸湾まで到達して、その後、江戸末期から明治、大正と随分と河床が上がって洪水が何度も繰り返されました。
 八ッ場ダムは約700平方キロの集水面積を持っておりまして、洪水カットについて非常に効果的なダムです。しかも天明の大爆発は何百年に一度はあり得ると見られておりまして、最大で1億トン位の泥流が発生するだろうと。それを八ッ場ダムでは止め得る可能性があることを、タスクフォースの先生方の御意見を聞いて、そうした感触もつかんだわけです。
 勿論、検証のスキーム等を経て、瑕疵のない検証を行ってきてくれたわけですが、それとは別に、災害の歴史、そういった教訓をどうくみ取るかということも背景にあったということも触れさせていただきたいと思います。そして苦渋の決断をしたわけです。
 いよいよ年が改まれば、私共国交省が掲げている「持続可能で活力ある国づくり、地域づくり」の方向に向けて、国交省の新しい地平を拓いていきたいと思っているところです。

◆2012年1月12日 信濃毎日新聞 
http://www.shinmai.co.jp/news/20120112/KT120111ATI090010000.html

 -浅間山融雪泥流で対策 来年度、国が砂防事業を開始ー

 浅間山(2568メートル)の噴火に備え、国土交通省は2012年度、長野、群馬両県の山麓で初となる「直轄火山砂防事業」を始める方針を固めた。噴火に伴う火砕流で雪が解け、土砂や火山灰と混ざって流れ下る融雪型火山泥流の発生を想定し、26年度までに総事業費約250億円を投じる計画。砂防ダムの整備や、噴火状況に応じた緊急対策ができるようコンクリート資材の備蓄などを進める。

 浅間山周辺の小諸市や佐久市、北佐久郡軽井沢町、御代田町、群馬県長野原町、嬬恋村が事業対象。比較的活発な火山の上、周辺には観光地も多いため、事業では中規模噴火を想定。民家や事業所、農業用地、幹線道路などへの被害を防ぐ狙いだ。両県とも山麓に通常の土石流を想定した砂防ダムは設置しているが、噴火時を想定した砂防事業は初めて。

 周辺市町村や両県、国交省などでつくる浅間山火山防災対策連絡会議が昨年8月に作成した融雪型火山泥流の被害想定マップに基づき、事業範囲を固めた。

 発生が予想される全ての場所に砂防ダムを設置することは予算面などから事実上不可能なため、監視・観測装置配置の拡充も進め、前兆現象などから泥流の発生範囲を予測。備蓄した資材で応急的な砂防ダム、泥流の流れを変える堤防を造って対応する考えだ。こうした平常時と緊急時の2段階の対策を組み合わせた「火山噴火緊急減災対策」は国内で初の取り組みという。

 政府が12年度予算案に計上した砂防事業費は680億円。国交省はこの中から今回の事業費を充てたい考え。同省で近く開く有識者委員会による事業評価を経て、3月末の個別事業の予算配分で正式に事業化が決まる見通し。初年度は設計や用地取得などに取り掛かる予定だ。

◆2012年1月21日 信濃毎日新聞 
http://www.shinmai.co.jp/news/20120121/KT120120ATI090007000.html

 -緊急ダム、泥流防げるか 浅間山噴火で2段階砂防事業採択へー

 国土交通省は20日、浅間山(2568メートル)の噴火に備え、2012年度事業化を目指す「直轄火山砂防事業」について、長野、群馬両県に常設の砂防ダムをそれぞれ8基設けるなどとした事業計画案の概要を明らかにした。同事業は両県の山麓では初めて。

 噴火に伴う火砕流で雪が解け、土砂や火山灰と混ざって流れ下る融雪型火山泥流や、土石流の発生を想定。常設の砂防ダムは平常時、泥流などが流れる可能性がある渓流に1基ずつ設置を進める。

 被害をさらに軽減する国内初の「火山噴火緊急減災対策」を採用し、噴火の前兆現象を把握した場合、常設ダムの下流側に、備蓄したコンクリート資材を使って緊急時用砂防ダムを施工。

 長野側6カ所、群馬側5カ所想定しているが、実際に設置するのは前兆に応じて予測した地点に限るとしている。群馬側には、泥流の方向を変えるための堤防も緊急時に設置。4地点を想定して準備を進める。

 国交省は同日、有識者による火山砂防事業評価検討委員会で事業を説明、来年度新規採択の了承を得た。事業期間は15年間を予定し、総事業費約250億円。対象は浅間山周辺の小諸市や佐久市、北佐久郡軽井沢町、御代田町、群馬県長野原町、嬬恋村。