「ダムの事業費が16倍に、事業期間が過ぎてから延長も」

 1月19日に会計検査院が治水事業について調査報告した内容を詳しく紹介した記事が日経BPネットに掲載されています。

 会計検査院の報告や過去記事は、こちらに載せています。
 http://p.tl/nJ72

◆2012年2月1日 日経BPネット
http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/const/news/20120131/557316/?P=1

 ーダムの事業費が16倍に、事業期間を過ぎてから延長もー

 会計検査院は国土交通省と(独)水資源機構が2010年度時点で実施中の大規模な治水事業について検査。ダム事業費の増額に対する詳細な資料がそろっていないなど、不備を指摘した。スーパー堤防の整備率などでは、完成していない箇所を含めて集計しているとした。参議院の要請を受けて検査したもので、1月19日に結果を報告した。

 検査した47ダムのうち、事業費を増額していたのは24ダム。このうち、9ダムでは当初の2倍以上に増えていた。例えば、近畿地方整備局が建設している大滝ダムでは当初、230億円だった事業費が2008年7月時点で15.8倍の3640億円へと増加しており、増額の割合は最も大きかった。

 増額した理由について、各ダムの事業主体は物価の上昇や消費税の導入、追加の対策費用などによると説明している。しかし、既存の資料には増額の詳細な要因や内訳が明示されていないと会計検査院は指摘。今後は事業費の変更の詳細な要因と内訳などを調査して分析し、検討するよう求めた。

 33ダムでは、当初の事業期間を延長していた。そのうち、7ダムでは当初の2倍以上へと大幅に延長。さらに、延べ48回に及ぶ事業期間の変更のうち、23回は事業期間を過ぎてから延長していた。

 例えば、水資源機構が建設している川上ダムの当初の事業期間は、1981年度から2004年度までの24年間。ところが、最終年度を5年以上過ぎた2011年2月になってから、2015年度までの35年間に延長した。

 事業期間の延長について、各事業主体は主に用地補償に時間を要したことなどによると説明したが、既存の資料では詳細が明らかになっていなかった。

 スーパー堤防の整備率は1%

 高規格堤防(スーパー堤防)の整備延長と整備率についても指摘した。国交省は、完成延長と暫定完成延長、事業中の延長の合計を整備延長として計上。2010年度末の要整備区間*の整備延長を50.6km、整備率を5.8%としている。国の中枢機能などを防御する重点整備区間*も同様に算定し、整備延長を27.7km、整備率を12.4%としている。

(表)要整備区間の整備延長と整備率の比較

(表)重点整備区間の整備延長と整備率の比較

 ところが、スーパー堤防は破堤しないことが前提であることから、堤防の勾配を3%以内としており、幅は高さの約30倍が必要になる。この高さと幅を満足した場合に、完成したものと認められると会計検査院は指摘した。

 そこで会計検査院が改めて集計すると、要整備区間の場合は整備延長が9.4km、整備率が1.1%。重点整備区間では、整備延長が2.4km、整備率が1.1%となった。例えば、国交省が2009年度に完成延長を600mとした利根川の大高島地区。堤防の高さや幅を満足する箇所の延長は290mで、残り310mは堤防の背後の盛り土を施工しておらず、完成していなかった。

 利根川の大高島地区のスーパー堤防

 こうした状況に対し、会計検査院は整備の目的や効果を考慮した算出方法を確立するよう国土交通省に求めた。

 *スーパー堤防の要整備区間と重点整備区間

 河川整備基本方針などで、スーパー堤防を整備するとした区間を「要整備区間」と呼ぶ。このうち、国家的な中枢機能と活動が集中している区域を防御する区間を2005年3月に「重点整備区間」として設定した。

 山崎一邦=フリーライター[日経コンストラクション]