八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

天下り、お手盛り検証についての八ッ場国会論戦

2012年2月2日
 昨日の衆議院予算委員会はNHKで中継されましたが、この中で、塩川鉄也議員(共産党)が八ッ場ダムのお手盛り検証、天下りの実態について、前田国交大臣、野田首相に質問しました。

 中継録画は衆議院TVで見られます。
 http://www.shugiintv.go.jp/jp/index.php
 2012年衆議院予算委員会 

 昨年暮れ、政府が「八ッ場ダム建設継続」の根拠とした八ッ場ダムの検証作業は、国交省関東地方整備局と関係都県の幹部によって行われました。関東地整は八ッ場ダム事業を進めてきた組織ですが、関係都県の意見を聞いたという形式をとることで、「地方」を尊重して客観性を保ったと国交省は主張しています。
 しかし、関係都県の重要ポストは中央省庁の出向者が占め、利権を温存するために国と関係都県が手を携えて推進してきたのが八ッ場ダム事業です。

 群馬県庁で八ッ場ダムを担当する県土整備部の部長も代々、国交省出向者のポストです。笹森秀樹県土整備部長は昨年末、前田大臣が八ッ場ダム再開を現地で表明した時、万歳三唱をした「地元住民」の中にいましたが、県議会の八ッ場ダム対策特別委員会では、欠伸をよくすることで知られています。
 官僚はふだんは表に出ず、名前も出ません。しかし、実際の政策を進めているのは官僚です。誤った政策を実施した結果、被害が生じても官僚は責任をとりません。ダム推進者は、しばしばダムを造らずに被害が生じたら、責任を取るのかとダム反対運動を非難します。けれども、これまでダムに欠陥があったり、治水事業が失敗して住民が犠牲になったことはいくらでもありますが、その時、ダムを推進してきた官僚や学者や政治家が責任をとったことは一度もありません。
 被害住民が補償を求めた時、行政が責任を認める場合もありますが、その時、補償金はダムを推進してきた人々が支払うのではなく、納税者が支払うのです。こうした構造は、原発問題と同じです。
 責任を負わず、権力を握って天下りできるのですから、議会では欠伸も出るでしょう。”政治”ではなく、”官治”が罷り通っている限り、犠牲は庶民に押し付けられ、国は破綻への道を転がり落ちて行くばかりです。こうした状況に危惧を抱いた国民の期待が、民主党政権を誕生させたはずなのですが、前田大臣は河川官僚の論理をふりかざすばかりで国民の方など見ていませんし、野田首相の答弁も中身がありませんでした。

 関連記事を転載します。

◆2012年2月2日 朝日新聞社会面
http://www.asahi.com/national/update/0202/TKY201202010797.html?ref=goo

 -八ツ場ダム受注の46法人、国交省から104人天下りー

 昨年末に建設再開が決まった八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)で、関連の工事や調査を受注した167法人のうち46法人に、国土交通省からの天下りが104人いたことがわかった。1日の衆院予算委員会で、塩川鉄也議員(共産)の質問に前田武志国交相が答えた。

 国交省によると、国交相が公表した天下りの実態は、2004~08年度に1千万円以上の事業を受注した法人への昨年6月までの再就職分。

 前田国交相は、天下りが建設の是非の検証には影響していないとの考えを示し、「河川は専門的な分野(の人)が必要。検証では本省の有識者会議が『瑕疵(かし)はない』と判断した」と述べた。

◆2012年2月2日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000001202020003

 -八ツ場関連天下り・出向 客観性に疑問の声ー

 八ツ場ダムに、国土交通省からの天下りや出向者が多数絡んでいる実態が明らかになった。1日の衆議院予算委員会。前田武志国土交通相は建設再開判断への影響は「ない」としたが、見直し派は「再検証の客観性への疑問が高まった」と主張する。

 国交相答弁や大臣官房人事課によると、八ツ場ダムで2004~08年度に1千万円以上の関連事業を受注したのは167法人。うち昨年6月末までに再就職した「天下り」が46法人にいて、延べ104人にのぼった。

 前田国交相は予算委で「河川は専門的な分野がある」と述べたが、質問した塩川鉄也議員(共産)は「専門性という口実は自公政権以来だ」と突き、再検証やり直しを求めた。

 また、予算委では、建設是非を国交省関東地方整備局と再検証してきた6都県の幹部に、多くの出向者が含まれていることも取り上げられた。6都県の13人の部長級幹部がメンバーだったが、群馬1人、茨城2人、千葉1人の計4人が国交省、埼玉1人が総務省からの出向だった。

 野田佳彦首相は「ちょっと出向者が多いなと思うが、予断なく検証はした」と苦しい答弁。国交相には「官房長官裁定を踏まえ、対応していただきたい」と注文を付けた。

 水問題研究家の嶋津暉之さんは取材に「天下りや出向で、おいしい思いをしている『国交省一家』がダム推進に向け、やりたい放題だ。客観的な検証は行われていない」と話した。(小林誠一)

◆2012年2月2日 しんぶん赤旗
http://p.tl/x2nO

 -八ツ場 検証は“身内” 塩川議員追及 「ムダ続けて増税か」 衆院予算委ー

 民主党が公約を投げ捨てて建設継続を決めた八ツ場ダム(群馬県長野原町)の検証について、実質的な協議の場に参加した1都5県のダム担当部長のうち、4県の部長が国交省と総務省からの出向者で、“身内の検証”だったことが1日、判明しました。日本共産党の塩川鉄也議員が衆院予算委員会で明らかにし、「八ツ場ダム推進の国交省関係者ばかりが集まって、どうしてまともな検証ができるのか」と追及しました。

 八ツ場ダム検証の場となったのは、国交省関東地方整備局と1都5県のダム担当部長による「検討の場」の「幹事会」。メンバーのうち、群馬、茨城、千葉の関係部長は国交省の出向者で、埼玉の関係部長は総務省の出向者。メンバー13人の4割が政府からの出向者でした。

 塩川氏は、群馬の県土整備部長が「完了が間近な段階になって…検証するのはなじまない」と発言していたことなどを指摘。「『八ツ場ダム推進』という予断を持つ身内による『検証』では信頼度はゼロだ」と批判しました。

 さらに塩川氏は、2004年度以降、八ツ場ダム関係の工事・業務契約をした企業や団体に国交省から104人が天下りし、天下りを受け入れた46法人の八ツ場ダム関連契約額が約150億円に上ることを明らかにしました。「八ツ場ダムを必要としているのは国民や県民ではなく、天下りを受け入れる受注企業や団体ではないか」と述べ、企業・団体献金を禁止し、天下りを根絶して、「ダム利益共同体」を解体すべきだと主張しました。

 野田佳彦首相が「予断なく(検証の)プロセスをたどってきている」と弁解に終始したのに対し、塩川氏は「まともな検証なしの八ツ場ダム推進の結論は許されない。ムダ遣いを続けながらの消費税増税などとんでもない」と批判しました。

 -制作・出演は国交省 塩川議員が明らかに 八ツ場ダム “建設先にありき”の茶番 4人の出向者が議論リードー

 八ツ場(やんば)ダムの建設再開にゴーサインを出した“茶番劇”の制作、出演は国土交通省だった―。1日、衆院予算委員会で日本共産党の塩川鉄也議員が明らかにした同ダム検証会議の顔ぶれ。“建設先にありき”だった会議の中身を見てみると…。(矢野昌弘)

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 八ツ場ダム建設の是非を“予断なき検証”をしようと2010年10月から国土交通省関東地方整備局が開いた「検討の場」幹事会。

 幹事会のメンバーには、同ダム事業に参加する1都5県(東京、埼玉、群馬、千葉、茨城、栃木)の関係部長13人が名を連ねました。

 塩川議員の調査で、このうち群馬、千葉、茨城の3県4人の部長が国交省からの出向者(表参照)だったことが判明しました。自治体の代表として、検証する側の参加者が、国交省の“身内”だったことになります。

 全10回の幹事会の議事録を見ると、国交省出向者が同ダム建設を強硬に主張したことがわかります。

 第1回の会議では、群馬県の川滝弘之県土整備部長が「完了が間近な段階の事業なんです。これから検証するのは、どうもなじまない」とかみつけば、茨城県の進藤崇土木部長も「なるべく早く結論を出して、速やかに対策を」と畳みかけます。

 第3回では、千葉県の橋場克司県土整備部長が「検証でダム建設が明らかになった場合には、速やかに本体工事に着手して」と、早期の再開を促します。

 一方の国交省側は、第4回会議で同ダムに代わる対案を提示。静岡県を流れる富士川の水を埼玉県の利根川流域までパイプでつなぐなど、とんでもない案が並びます。

 この対案に、国交省の出向者らが「とてもできると思えないような案をいちいち真面目にやるのはやめて」(茨城県の榊真一企画部長)の大合唱。4回目にして、すでに同ダム“優位”で固まります。

 こうした議論の中で、検証のそもそもの出発点となった首都圏の水余りの現状や八ツ場ダムの治水効果の薄さなどは議題にのぼらずじまい。

 そして、同ダム継続を結論づけた第10回の幹事会。出向者たちが「(継続は)当然の結果」とのべる中、検証は幕を閉じました。

 この会議を傍聴し続けた嶋津暉之さん(水源連共同代表)は「『早くつくれ』という発言ばかりの会議だった。『関係都県の意見を聞く』という場だったが、実態は国交省と一体の組織で、この会議の茶番ぶりは明らか」と話します。

 中央省庁出向者の図