民主議連、生活再建支援法案についてヒアリング

 長年ダム計画の犠牲になって来たダム予定地の人々がダム中止後、地域の再生と生活再建に取り組むことを支援する法案が今国会に提出される予定です。
 昨日、法案作りに関わってきた民主党の「八ツ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」が国交省の準備している法案についてヒアリングを行いました。
 国交省の説明によれば、この法案は、ダム事業のために住民から買収した水没予定地の土地を地元自治体に無償で譲与したり、ダム中止後も関連事業を継続することなどを可能とするものです。
 懸案とされてきた補償金の扱いは、この法案には具体的に盛り込まれていません。ダム事業は時間がかかり、全国のダム計画の中には、何十年も前にダム計画が始まり、水没予定地の人々の生活が破壊されてきながら、住民が補償金を受け取っていないというダム事業がいくつもあります。八ッ場ダムもその一つです。八ッ場ダムの水没予定地住民の多くは既に補償金を受け取って転出していますが、いまだに地域の中核であった川原湯地区の移転代替地が完成していないため、代替地への移転を望んでいる住民が不本意ながら水没予定地に住み続けているというケースがあります。ダムの補償金は、水没予定地の土地を明け渡し、家屋を解体して初めて支払われますので、これらの人々は補償金を受け取ることができずにいます。
 国交省は、ダムの補償金を資産を失う代償と定義していますが、実際には資産以外に、ダム計画によって生活が破壊されてきたことへの代償という意味合いを含んでいます。そうした実態からすれば、川原湯地区の人々が今も補償金を受け取っていないのは、国の代替地計画が大幅に遅れていることが原因ですから、そのことに対する償いも含めて、ダム事業が中止になったとしても補償金を支払うことが道義上求められます。民主党議連による法案では、こうした考えに基づいてダム中止後も補償金を支払うこととしていましたが、国交省の法案では、これが抜け落ちています。
 昨日の国交省の担当者の説明では、こうした問題を解決するために、たとえば水没予定地でいまだに補償金を受け取っていない住民の土地を区画整理や地域振興事業の用地として指定するなどにより、ダムの補償に代わる措置を取ることも可能という説明がありました。これに対して昨日のヒアリングでは、議連のメンバーである中川治衆院議員から、国交省の法案に取り組む姿勢には、地元の人々を犠牲にしてきたという贖罪の気持ちが欠けているという厳しい指摘があり、宮崎岳志衆院議員は具体的に書き込まなければうやむやにされてしまうのではないかと懸念を表明しました。
 このように、国交省の法案には不備がありますが、ダム中止を想定した法整備が現状では全くないわけですから、この法律によってダム予定地の再生に一定の道が開かれるのも事実です。しかし、国交省はこの法案を川辺川ダム予定地の五木村をモデルとして準備したと説明しており、八ッ場ダムの予定地に適用することは想定していません。
 八ッ場ダム予定地にこの法案が適用されるためには、近い将来策定される予定の利根川の河川整備計画に八ッ場ダム計画が位置付けられないことが必要です。国交省は八ッ場ダム計画を組み込んだ利根川の河川整備計画を早急に策定することを目指しており、八ッ場ダムの関係都県(利根川流域一都五県)の知事らも国交省に同調しています。この路線が続く限り、八ッ場ダム予定地では延々と関連工事が続き、地元の犠牲が積み重なることになります。

 昨日の議連のヒアリングを報じる記事を転載します。

◆2012年2月29日 朝日新聞群馬版
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581202290001

 -生活再建法案を民主議連に報告ー

 民主党の「八ツ場ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟」が28日、衆院第二議員会館で総会を開いた。国土交通省が「ダム事業の廃止等に伴う特定地域の振興に関する特別措置法案」の素案を報告し、意見を交わした。

 法案はダム廃止で水没しなくなった地域の住民生活の安定が目的。八ツ場の是非論議では、こうした法律がないため、地元住民らから「廃止では生活できない」との声が根強かった。

 法案では、ダムが廃止されると地域を指定し、都道府県が住民意見を反映した振興計画を作成。取得した計画地を自治体に譲与したり、元の所有者に優先売却したりできるようにする。

 議員連盟は、計画地から移転しなかった人にも支援金を出すよう求めたが、国交省は「個人資産への措置は、自然災害の被害を受けた場合に限られ、移転した人や他制度との不公平が生じる」として見送った。

 同法は八ツ場の本体工事の条件とされる。29日の民主党国土交通部門会議に法案が報告され、承認の見込み。国交省は3月上旬の閣議決定を目指している。

◆2012年2月29日 東京新聞群馬版
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20120229/CK2012022902000075.html

 -ダム事業廃止地域振興特措法案 国会議員らが議論ー

 八ッ場(やんば)ダム等の地元住民の生活再建を考える議員連盟の総会が二十八日、衆議院第二議員会館で開かれた。ダム事業の中止に伴う生活再建を支援する「ダム事業廃止特定地域振興特別措置法案」をめぐり、議員らが国土交通省の担当者と議論した。

 法案は、ダムを含まない流域の河川整備計画が策定され、関係自治体などが合意した段階で、ダム事業中止とみなし、生活再建の手続きに入れるとした。

 建設予定地だった地域は「特定地域」に指定され、都道府県が地元住民らの意見を聴き、振興計画を作成。国に買収された土地の都道府県などへの無償譲与や道路整備など必要な事業の継続なども盛り込まれた。

 ただ、ダム予定地に残る「非移住者」への支援金については、国交省側が「個人資産への補償は法的に難しい」と難色を示したため、複数の議員が反発。

 傍聴していた市民グループ「八ッ場あしたの会」の渡辺洋子さん(前橋市)は、八ッ場ダム建設予定地の長野原町を念頭に「非移住者の数は少ないが個別の補償を必要としている」と懸念を示した。

 法案は二十九日に開かれる民主党国土交通部門会議での議論を経て承認され、今国会に提出される見込み。 (伊藤弘喜)