川原湯温泉食堂休業へ

 八ッ場ダムの水没予定地にある川原湯温泉街で唯一、昼間も営業している食堂として川原湯ファンに親しまれてきた食堂が平日は休業になるとのニュースが昨日の新聞に載っていました。
 川原湯温泉街はもともとは山あいの鄙びた湯治場でしたが、ダムの関連事業が進む昨今は、旅館が次々と解体され、さながら工事現場のような様相を呈しています。
 温泉街の人々の多くは、長年のダム闘争に疲れ果て、1980~90年代にダム計画を受け入れた後は、国が水没住民のために水没線より上に移転代替地を造成し、川原湯温泉を湖畔の新しい温泉街として生まれ変わらせるという約束に希望を託してきたのですが、代替地はいまだに未完成で、代替地の温泉街ゾーンは分譲も開始されていません。川原湯地区の代替地には、すでに移転した家屋が十数軒ありますが、代替地はいまも造成の途上にあり、温泉も引かれていませんので、観光業の従事者で移転したお宅はありません。
 地域の有力者らは国交省、群馬県の意向に沿って、「ダム湖観光による生活再建と地域振興」を掲げ続けていますが、八ッ場ダムは水質、ダムの運用の問題などにより、ダム湖観光には不向きなダムとされており、一般住民からはダム湖観光に期待する声は殆ど聞こえてきません。また、仮にダム湖観光が実現するとしても、国交省の試算によればダム完成までまだ7年かかります。地質等による工事の難航により、完成年度がさらに遅れるとの専門家の指摘もあります。それまでの間、住民は何を糧に生活を営んでゆけばよいのでしょうか。
 現地では八ッ場ダム事業による”川原湯つぶし”が一歩一歩進められています。

◆2012年3月17日 読売新聞群馬版 
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20120317-OYT8T00104.htm

 -川原湯温泉食堂休業へ  唯一昼営業の「旬」 「もう限界」ー

(写真)二十数年間営んできた店の休業を決意した水出さん(15日、長野原町で)

 八ッ場ダム(長野原町)の水没予定地、川原湯温泉街で唯一、昼間に営業していた食堂「旬」が3月末で休業する。ダム問題の長期化や景気低迷などで近年、売り上げは激減し、経営者の水出耕一さん(57)は「商売にならない。もう限界」と語った。4月から町内に勤めに出る。(佐賀秀玄)

 温泉街にはかつて約20軒の飲食店があったが、夜間営業中心のすし店1軒になる。

 旬は1985年開業。昼は丼物やラーメンなどを提供し、夜は酒も楽しめ、バブル期には「自宅に帰る暇がなく、店で寝たことも」(水出さん)というほど繁盛した。

 しかし、水没地区の土地の補償価格が決まった2001年以降は店や住居の移転や休業が始まり、22軒あった温泉旅館も現在は5軒に。不況も追い打ちをかけ、観光客数も減少。昨年の売り上げは一昨年の6割に落ち込んだ。今年1、2月は、昨年の半分しか売り上げがない状態だという。

 水出さんは「売り上げは無いのに、仕入れの経費だけかかる。少しでも生活費を稼ぎ、将来のことを考えようと思った」と決断。川原湯温泉協会の幹事や川原湯地区ダム対策委員会の書記も辞し、4月から平日は町学校給食センターで臨時職員として働く。

 水出さんは今後、代替地で営業再開を目指しており、店舗兼住居を設計中。今後、妻の良江さんが仕事が休みの時、現在の店で軽食などを提供することもあるが不定期で、本格的な営業再開のめどは立っていない。水出さんは「ずっとここで商売していたかった。リフレッシュし、新しい場所で店を造り替えたい」と決意を語った。

 温泉街では、このままでは昼に食事できる店が無くなるため、「吾八寿司」の主人清水英之さん(65)は「昼の営業も検討したい」としている。