東京都、水需要右肩上がりの予測を撤回、八ッ場ダムは維持

 八ッ場ダムは高度成長を背景に、首都圏の水需要の増大を前提とした計画でした。東京は1978年に水需要がピークを打ち、その後、減少の一途を辿ったにもかかわらず、こうした実態を都民に伏せ、ダム計画に反対する地元住民をねじ伏せて強引に進められてきました。
 水需要が減少し始めてから34年がたちますが、東京都は八ッ場ダム事業への参画を正当化するために、今も水需要が上昇するという予測を立てています。しかし、さすがの東京都も、人口減少時代を前にして、このほど2020年を機に水需要が減少するとの見通しを発表しました。

◆2012年3月28日 朝日新聞夕刊

 -水需要右肩上がり撤回 都の長期見通し 供給の規模は維持

 東京都が28日午後に公表する水需要の長期見通しで、これまでの右肩上がりを改め、2020年をピークに減少するとの想定を初めて出す。しかし、災害への備えを理由に膨大なコストがかかる供給施設はこれまでの規模を維持する方針で、新たな水源として八ッ場ダム(群馬県)が必要との姿勢も変えない。
 需要予測は人口や経済の見通しなどから、一年で最も水が使われる日の配水量を算出している。1970年には、85年に一日931万トンが必要になると想定。だが、東京の水需要は実際は78年の645万トンをピークに、2010年は490万トンまで減少している。それでも、予測は右肩上がりを維持。03年公表の現行予測でも13年に600万㌧になると想定している。
 都が今回初めて減少すると想定したのは、都の人口が20年に1335万人で頭打ちになるとの予測が出たことが影響した。
 だが、需要が減る20年以降も、546億円を負担する八ッ場ダムを含めた供給力の維持を掲げる。都水道局の幹部は、「災害や渇水のリスクに備える必要があるため」と説明する。
 25年以降は施設更新費として総額約1兆円が必要とされる。都の水道料金は電力と同じ「総括原価方式」で、コストが増えれば料金の転嫁が可能。将来的に利用者の負担増となる恐れもある。
 大阪府知事時代の橋下徹氏は09年、過剰な需要予測にメスを入れた。10年前の予測は253万㌧だったが、実際は170万㌧台。「予測はずさん。今の施設が大きすぎるなら、縮める方向で検討する」とした。
 これを受け、大阪府水道部(現・大阪府広域水道企業団)は09年の見直しで、20年の一日最大給水量を149~168万㌧へと大幅に下げた結果、29年までに見込んだ整備費5400億円が半分程度に削減できる見通しになった。
 橋下氏は府議会で「民間なら投資に失敗したら、自らの人件費に跳ね返るが、それがない組織は厳しく予測するのが難しい」と述べている。(菅野雄介)

 —転載終わり—

 大阪府の橋下知事は、府の槇尾川ダムの中止を決断したことで知られます。しかし、一方で橋下知事は、同じく府営の安威川ダムについては、推進の姿勢を変えていません。これは槇尾川ダムにくらべ、安威川ダムの方が規模が大きく、それだけダム利権の抵抗が大きいためと言われます。
 
 現在、八ッ場ダムに反対する市民運動の理論的支柱とされる嶋津暉之さんは、かつては東京都の環境科学研究所に務める都の職員でした。嶋津さんが東京都の水需要がピークを迎えていることを踏まえ、八ッ場ダムの不要性を訴えるようになったのが1978年のことでした。1980年代、嶋津さんに呼応して八ッ場ダムの反対運動が東京で始まりましたが、当時すでに国家権力に屈した地元では、今さら遅い、という声がよく聞かれたということです。
 現在、国交省は八ッ場ダムの完成予定年度を2020年度としています。水需要の減少を東京都すら認めざるをえない時に完成するということなのですが、関連事業が難航している状況から、八ッ場ダムの完成年度はさらに遅れることが予想されます。
 2009年の政権交代で八ッ場ダム事業の行方が注目されると、今さら八ッ場ダムを中止するのは現実的ではない、という声が盛んに聞かれるようになりました。水没予定地に付け替えの道路や橋などの施設が大量に造られ、地元がダムを前提として進んでいる、ということが理由のようです。しかし、ダムによる破壊は今も進行しています。八ッ場ダムの本体工事が始まれば、さらに破壊は進むでしょう。問題を先送りにするツケは将来世代が負うことになります。

 過大な水需要を前提にダムを推進してきたのは、むろん東京都だけではありません。2004年に完成した岡山県の苫田ダムは、国と県による地元住民の弾圧で知られています。ダム計画に抵抗し続けた奥津町は、ダム阻止条例をつくって抵抗し、三代の町長がダムに反対しましたが、最後は行政圧迫に屈しました。地域は破壊しつくされ、住民は国のダム政策を揶揄する「苫田ダム建設銭次第」という大きな看板を掲げました。
 昨日は、その苫田ダムのために、水道企業団の料金が引き上げになるというニュースもありました。

◆2012年3月28日 山陽新聞
http://www.sanyo.oni.co.jp/news_s/news/d/2012032821222333/

 -16市町からの受水料金改定 12年度から県広域水道企業団ー

 県広域水道企業団は28日、構成自治体の首長による議会を開き、苫田ダム建設などで発行した企業債(借金)の返済資金不足に対応するため、水道水を卸売りしている16市町からの受水料金を改定することを決めた。2012年度から適用し、全体では年約1・8億円の増収を図る。

 改定は、定額部分を1トン当たり15円から34円に引き上げる一方、受水の従量部分を同88円から47円に引き下げる。結果として岡山、瀬戸内市など10市町は増額、美咲町など6市町は減額となる。収入総額は10年度の43・5億円から45・3億円に増える見込み。

 同企業団は給水需要が見込みを大きく下回る一方、企業債の元利償還費が膨張。18年度にも収支不足に陥る恐れがあるため、給水を始めた1993年度以来初めての料金改定に踏み切る。

 負担増となる市町が水道料金を値上げするかどうかはそれぞれの判断になるが、岡山市は「行革で財源を捻出し、料金転嫁は考えていない」とした一方、高梁市は「人口減などで収入が減っており、見直しは検討課題」とした。

—転載終わり—

 3月27日の紙面には、大阪市水道と大阪広域水道企業団が統合するという記事が載っていました。
 大阪市水道は大阪市内の家庭、事業者に水道水を給水する末端水道供給事業者です。大阪広域水道企業団は大阪府内の市町村水道に水道水を供給する水道用水供給事業者です。後者は平成23年度に大阪府水道から企業団組織に変わったばかりです。

 他の地域でもこのような統合が進んでいくことが予想されます。千葉でもそのような話が出ているといわれます。どのように評価するか難しいところがありますが、水源の融通ができ、水あまりが一層明白になっていのではないでしょうか。

◆2012年3月27日 朝日新聞大阪版
http://mytown.asahi.com/osaka/news.php?k_id=28000001203270002

 -市水道局統合へ 大阪市、企業団と合意ー

 大阪市を除く42市町村でつくる大阪広域水道企業団と大阪市水道局の統合に向けた検討委員会が26日、初会合を開き、市水道局を丸ごと企業団に統合する方向で合意した。8月までに浄水場や職員など統合の具体的な課題を整理し、来年2月に各市町村議会に規約改正案を出す方針。

 会合には橋下徹大阪市長と企業団の7市長が出席。企業長の竹山修身堺市長は「(市と企業団が)浄水場をそれぞれ持つのは非効率。統合で水を効率的に活用でき、料金値下げにつながる」と期待を示した。

 市町村には統合後の会計のあり方や組織体制を不安視する声があるため、委員会は8月までに中間報告をまとめ、再度市町村に説明する方針。11月に最終的な統合形態を決め、来年2月の各市町村議会に大阪市と統合する規約変更案を提案することをめざすという。

 会合では橋下市長が主張する柴島浄水場の廃止に疑問の声が上がった。橋下市長は「(柴島廃止は)水道だけでなくまちづくり戦略の話。府市統合本部や知事の判断を踏まえ、皆さんと議論して合意したい」と答えた。橋下氏はこれまで市水道局の民営化にも言及してきたが、民営化すれば企業団と統合できなくなるため、この日は「統合が決定したので(民営化は)もう口にしない」と述べた。