八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム事業の付け替え県道

 八ッ場ダム事業における主要道路事業は、付け替え国道と付け替え県道です。
 付け替え国道は現在、吾妻渓谷沿いにJR吾妻線と並行している国道を八ッ場ダム湖の水没線(586メートル)より標高の高い位置に付け替える事業です。付け替え国道は一部暫定ではありますが、昨年末にほぼ全線が開通しました。
 八ッ場ダムの水没予定地には、国道以外に県道も走っています。JR川原湯温泉駅と川原湯温泉を結ぶ県道238号川原湯川原湯停車場線です。八ッ場ダム事業ではこの県道も沈む予定であるため、県道の付け替え工事が行われています。もともとの県道(川原湯川原湯停車場線)は総延長856.8メートルという短い道路ですが、新たにダム事業で造られつつある付け替え県道は総延長8.5キロメートルです。

★中之条土木事務所のホームページ 「一般県道」リストの9番目
http://www.kendoseibi.pref.gunma.jp/chiiki/nakanojou/table_road.htm

 八ッ場ダム事業では水没予定地にある各集落がダム湖の両岸に移転するため、両岸に現在の国道以上の道路を整備することが地元から長年要望されてきました。
 付け替え県道は、川原湯温泉の移転地である打越代替地のライフラインと位置づけられており、川原湯地区における生活再建事業の中で重要な位置を占めています。八ッ場ダム計画では付け替え県道は昨年3月に完成する筈だったのですが、工事は大幅に遅れています。未開通区間のうち、吾妻渓谷の下流部がようやく本日開通するとのことです。
 これまで未開通だった吾妻渓谷の下流部区間(東吾妻町)700メートルは天狗山に接しており、工事が難航してきました。工事現場の正面には駐車場やトイレがあり、ガラガラと石が崩れ落ちる現場で苦労している作業員の姿を、観光客がハラハラしながら見守ることもよくありました。
 付け替え県道の下流部が開通することで、川原湯の打越代替地への交通アクセスは改善すると国や群馬県は説明していますが、吾妻渓谷下流部の付け替え県道沿いには、八ッ場ダム事業による温泉公共施設「天狗の湯」がすでに開業している一方で、打越代替地での川原湯温泉の再建はいまだに見通しが立っていません。現在の川原湯温泉の「王湯」は、ボーリングによる「天狗の湯」よりはるかに泉質がすぐれていますが、温泉街の観光客は減少の一途をたどっています。
 政権交代後、十字架上の橋脚としてテレビに盛んに取り上げられた湖面2号橋(不動大橋)もこの付け替え県道の一部です。また、現在、JR川原湯温泉駅前で建設中の湖面1号橋は八ッ場ダムによって沈む予定の町道の補償工事として造られていますが、従来の町道よりはるかに規模が大きく、県道に格上げされています。

★群馬県ホームページ
 「県道川原畑大戸線道路新設事業」
http://www.kendoseibi.pref.gunma.jp/section/seisaku/seisaku/H22yokuwakaru/008nakanojyo/PDF/nak-028.pdf

 関連記事を転載します。

◆2012年5月11日 上毛新聞25面

 ー県道全線開通 月内に送湯試験 八ッ場代替地生活再建へ一歩ー

 八ッ場ダム建設に伴い工事を進めてきた県道林岩下線(長野原町林~東吾妻町岩下)で、未開通だった東吾妻町内の700メートル区間が11日午後1時、供用開始する。これにより、総延長8.5㌔が開通。川原湯温泉の旅館などが移転する代替地へのアクセスが良くなり、生活再建が一歩前進する。代替地に源泉をくみ上げる配湯施設もほぼ完成し、今月下旬に国が送湯試験を行う。
 県道は吾妻川右岸の付け替え道路として、国と県が整備を進めてきた。今回開通するのは国施行分。主に同川左岸を走る八ッ場バイパスは昨年12月に全線開通している。
 送湯試験は、現在の温泉街にある「新湯(あらゆ)」源泉近くの送湯ポンプ所から、中継ポンプ所を経由し、新温泉街となる打越代替地の配湯所まで行う。配管の長さは全長約630メートル。現在の温泉利用に影響が出ないよう、旅館側と調整を行い、近く日程を決める。配湯所には50㌧の貯湯タンク2槽を整備し、ここから各旅館に湯を送る仕組み。代替地に移転した旅館はまだ無いため、今回の試験はタンクまで。移転後にスムーズに配湯できるよう、今後も定期的に試験を行う方針。

★温泉配湯施設についての記事と説明は以下のページにも載せています。
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1632