八ッ場ダムの事業費増額と工期延長を既定化する国交省

2012年5月15日

 国土交通省の各地方整備局は5月10日に今年度の直轄公共事業の計画を発表しました。

 これは直轄事業の今年度当初予算の事業計画を各都道府県に通知するものです。

 関東地方整備局については、こちらに掲載されています。
 http://www.ktr.mlit.go.jp/shihon/shihon00000085.html

 群馬県 http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000060943.pdf

 その中で、八ッ場ダムについては次のように記されています。(4ページ目参照)

 八ッ場ダム 全体事業費 4,783億円**   〈事業展開〉** H25~H30:約1,030億円

 今年度当初予算の負担基本額(治水分)  群馬県 8.38億円 (1都5県 62.59億円)

 今年度当初予算の地方負担額(治水分)   群馬県 3.93億円

 ここで注目すべきことは、総事業費が八ッ場ダム事業の基本計画で定められている4600億円ではなく、4783億円、工期が基本計画の平成27年度ではなく、平成30年度になっていることです。これらの数字は、2010年から2011年にかけて行われた国交省関東地方整備局による八ッ場ダムの検証によって試算されたものです。

 しかし事業費増額と工期延長は、八ッ場ダムの基本計画を変更しなければ変更することはできません。基本計画の変更は、八ッ場ダムに関係する各都県議会の議決が必要ですが、各都県(東京都・埼玉県・千葉県・茨城県・栃木県・群馬県)はいずれも基本計画の変更による事業費増額と工期延長に強く反対していますので、基本計画の変更は容易ではないはずです。
 次の〔注〕が付いているとはいえ、八ッ場ダム事業の基本計画が変更されていない現時点で、あたかも既定であるかのように群馬県への公式文書にこのような数字が公然と使われているのは問題です。

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 「** 総事業費及び工期については、八ッ場ダム建設事業の検証に係る検討において実施した点検結果を記載しております。この点検内容は、さらなるコスト縮減、工期短縮などの期待的要素を含めずに検討したものであり、今後の工程、事業展開については、改めて精査した上で、お示しいたします。」
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 2009年の政権交代により、民主党政権は当初、前原誠司国交大臣がマニフェストに掲げた八ッ場ダム中止を実現すると表明しました。
 しかし、その後、中止方針は次第に後退し、昨年暮れには条件付きではありますが、本体工事の予算計上を認めてしまいました。現時点では、条件の一つである「八ッ場ダム事業を組み込んだ利根川の河川整備計画」が未策定であるため、八ッ場ダムも本体未着工ですが、民主党政権下で八ッ場ダムの中止方針が覆った最も大きな理由は、関係都県が中止に強く反対したからだと言われます。
 八ッ場ダムの本体着工を求める関係都県は、都県住民の多くが利権の温床であるダム事業の中止を支持したにもかかわらず、八ッ場ダムの中止方針を掲げる民主党政権を地方自治を無視した強権政治と批判し、責め立てました。
 しかし、上記の文書を見る限り、国交省と関係都県は主従関係にあるようです。実際、関係都県ではダム関係の主要ポストに国交省の出向者が就いていることが多く、各都県の意見は実質的に国交省の意見をそのまま踏襲したものになっています。各都県はそれぞれの議会で、八ッ場ダムに反対する議員の質問に対して、国交省の意見をそのままオウムのように繰り返すばかりです。
 間もなく開会する各都県の議会では、それぞれの議員が八ッ場ダム事業の実態と各都県民の意見を踏まえ、将来を見据えた真摯な議論を行うことを望みます。

 国土交通省の発表については、上毛新聞が次のように報じています

 2012年5月11日 上毛新聞一面

 ー総事業費は4783億円 地滑り対策費上乗せ 八ッ場ダムで国交省ー

 国土交通省は10日、2012年度に全国で予定している直轄公共事業の計画を公表した。
 八ッ場ダム事業(長野原町)ではこれまでの検証結果を踏まえ、基本計画上4600億円としていた総事業費を地滑り対策費などを上乗せして4783億円とした。計画上15年度までの工期については18年度となる可能性も示した。
 関東地方整備局は「検証結果を反映したが、さらなるコスト縮減や工期縮減の期待的要素は含めない」と述べ、コスト縮減と工期短縮に含みを持たせた。