「利根川の治水安全度と目標流量」のパブリックコメントについて

2012年6月5日

 「利根川の治水安全度と目標流量」のパブリックコメント
   国土交通省関東地方整備局にNO!を突きつけましよう。

 5月25日、関東地方整備局は「利根川・江戸川において今後20~30年間で目指す安全の水準に対する意見募集の実施について」を発表しました。
 関東地方整備局のホームページをご覧下さい。 http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000200.html

●意見募集要領
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000061901.pdf

●意見提出様式(ワード形式)
http://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000061903.doc

 昨年の暮れ、野田政権は八ッ場ダム本体工事費の予算案計上を決定しましたが、官房長官の裁定により、八ッ場ダム計画を組み込んだ利根川水系河川整備計画の策定が本体工事予算執行の条件になったため、八ッ場ダム事業の今年度の当初予算では本体工事費は見送られています。

 今回のパブリックコメントは、利根川水系河川整備計画の策定に当たって、関東地方整備局が局の整備計画案の前提としている「治水安全度1/70~1/80(70~80年に一度の規模の洪水に対応)、治水目標流量17,000?/秒(八斗(やった)島(じま)地点、利根川の治水基準点、群馬県伊勢崎市)」について、国民に意見を聴くものです。
 締め切りは6月23日(土)です。

 関東地方整備局の狙いは、流域自治体等からパブコメで大きな治水安全度・目標流量を求める声があることをもって、大きな治水目標流量17,000?/秒を正当化し、それによって、17,000?/秒を前提として求められた八ッ場ダムの大きな治水効果(恣意的な計算)を既成事実化して、利根川河川整備計画に八ッ場ダム計画を組み込むことにあります。

 最近60年間で八斗島地点の最大実績流量は1998年の10,000?/秒程度ですから、17,000?/秒はきわめて過大な数字です。関東地方整備局は17,000?/秒は1/70~1/80の洪水に相当する流量としていますが、それは現実から遊離した洪水流出計算モデルで求めたものであって、科学的な根拠はありません。利根川の洪水流量について科学的な計算を行えば、1/70~1/80の洪水はもっと小さい流量になります。

 さらに、利根川水系河川整備計画の策定で何よりも考えなければならないことは、利根川流域の住民の安全を守るために今何が必要とされているかです。これからの時代は巨額の河川予算を利根川に投入し続けることはできません。流域住民の安全を守るための喫緊の対策を厳選して、そこに河川予算を集中しないと、氾濫の危険がある状態が半永久的に放置されてしまいます。過大な目標流量を設定して、過大な河川施設の建設を進めようとする関東地方整備局の考えは、流域住民の安全を守ることを蔑ろにするものです。

 このような国交省関東地方整備局のやり方に疑問を感じる方は、今回のパブコメに対して是非ご意見を提出してください。

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 以上の考えについて少し詳しく説明します。

1.利根川流域の住民の安全を守るために何が本当に必要なのかの議論を優先すべきです。
 今回のパブコメの狙いは、八ッ場ダムの検証で前提とした大きな治水目標流量17,000?/秒を正当化し、それによって、利根川において八ッ場ダム建設事業をはじめ、過大な河川施設の建設を進める河川整備計画を策定しようということにあります。
 しかし、このようなやり方では利根川流域で氾濫の危険性のあるところが放置されてしまいます。これからは、つくりすぎたインフラ施設の更新・維持管理の費用が急増していく時代ですから、巨額の河川予算を利根川に投入し続けることはできません。流域住民の安全を守るための喫緊の対策(4.参照)を厳選して、そこに河川予算を集中しないと、氾濫の危険がある状態が半永久的に残されます。
 したがって、利根川水系河川整備計画の策定では、何よりもまず、「利根川流域の住民の安全を守るために今、何が必要とされているか」の議論が必要なのであって、過大な河川施設の建設を目的とした今回の治水安全度のパブコメを河川整備計画策定の前段階でやることは有害無益です。

2.治水安全度1/70~1/80の流量は17,000?/秒よりずっと小さい数字です。
 一般に治水安全度が高まることに反対する人はいないと思います。それが今回のパブコメの狙いです。八ッ場ダムを造ったからといって、治水安全度が高まるわけではありませんが、治水安全度を1/70~1/80にすることに賛意が得られれば、それは八斗島地点の治水目標流量17,000?/秒に相当するとして、17,000?/秒を正当化し、八ッ場ダムをも正当化できるように仕組まれています。
 しかし、1/70~1/80の洪水流量=17,000?/秒は、現実から遊離した洪水流出計算によるものであって、科学的な根拠はありません。この洪水流出計算については昨年、日本学術会議のお墨付きを得たとされていますが、学術会議といっても、その構成委員の大半は、いわゆる河川ムラの御用学者の面々であり、その審議結果は信頼できるものではありません。むしろ、その会議資料によって、洪水流出計算の非科学性が明確になっています。利根川の洪水流量について科学的な計算を行えば、1/70~1/80の洪水は17,000?/秒よりずっと小さい流量になります。

3.治水目標流量は机上の計算ではなく、実績洪水流量をベースにすべきです。
 治水安全度から整備計画の治水目標流量を求める方法をとると、現実から遊離した洪水流出計算によって過大な値が求められてしまいます。治水計画は基本的に過去の洪水の再来に備えられるように策定されるべきであって、利根川の場合は戦争直後で森林が荒廃していた昭和20年代前半を除いて、最近60年間の最大洪水実績流量をベースにすべきです。その最大流量は1998年の約10,000?/秒ですから、それに余裕を見た12,000~13,000?/秒を治水目標流量とすべきです。それで、利根川流域住民の安全は十分に確保されます。
 この目標流量を超えた想定外の洪水への対応策については5.で述べます。

4.利根川で必要とされている喫緊の治水対策を考えてみましょう。
① 脆弱な堤防の強化対策
 国土交通省の調査により、利根川及び江戸川の本川・支川では、洪水の水位上昇時にすべり破壊やパイピング破壊を起こして破堤する危険性がある脆弱な堤防が各所にあることが明らかにされています。国土交通省によれば、破堤の危険性がある区間の割合は利根川62%、江戸川60%に及んでいます。もし破堤すれば、甚大な被害をもたらすので、脆弱な堤防の強化工事を早急に進めなければなりません。

② ゲリラ豪雨による内水氾濫への対策
 昨年9月上旬の台風12号で群馬県南部で記録的な大雨があり、伊勢崎市等で床上浸水14棟、床下浸水89棟の大きな被害がありました。この時、利根川やその支川からの越流はなく、浸水被害は被災地でのゲリラ豪雨が引き起こした内水氾濫(小河川の氾濫を含む)によるものでした。近年はこのようなゲリラ豪雨が利根川流域などでも起きるようになりました。雨水浸透施設の設置、排水機場の強化など、内水氾濫対策の実施が急務になっています。

5.想定を超える洪水が来ても壊滅的な被害を受けないための対策も必要です。
① 壊滅的な被害を受けないための対策
 3.11東日本大震災や昨年9月台風12号の紀伊半島水害を踏まえれば、利根川においても想定を超える洪水が襲った場合に壊滅的な被害を受けない治水対策を同時並行で進める必要があります。
 その対策で中心となるのが耐越水堤防への強化です。現在の堤防は計画高水位までの洪水に対しては破堤しないように設計されていますが、堤防を超える洪水に対しては強度が保証されていません。壊滅的な洪水被害は堤防が一挙に崩壊した時に生じるので、堤防を超える洪水が来ても、直ちに破堤しない堤防への強化を進めることが是非とも必要です。

② 耐越水堤防の技術
 耐越水堤防としては最小限の費用で堤防を強化できる技術を選択しなければなりません。鋼矢板やソイルセメント連続地中壁を堤防中心部に設置するハイブリッド堤防が安価な技術であり、このような技術による堤防強化工事を早急に推進することが求められます。
 堤防の強化、耐越水堤防は今後の治水対策の要ですが、それはスーパー堤防や、首都圏氾濫区域堤防強化対策事業などの巨大土木事業ではありません。スーパー堤防は1㎞の整備に500億円以上の事業費を要するため、 「点」の整備しかできませんので、治水対策としては非現実的です。首都圏氾濫区域堤防強化対策事業は利根川・江戸川の右岸側堤防(埼玉県側)を大きく拡幅する事業です。この事業は堤防の裾野を拡げるため、1,200戸以上の家屋の移転が必要となるもので、完成まで非常に長い年月を要し、事業費(現事業費約1,700億円)も大きく膨れ上がることが予想されます。人命を守ることを目的とする治水対策は、最小の費用で最大の効果があり、長い年月を要しないものが選択されなければなりません。

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★「利根川の洪水調節」(治水)は、八ッ場ダムの主目的の一つです。(もう一つの主目的は「利水」です。)
 八ッ場ダムと治水の問題全般については、こちらのページに説明や図、グラフ等を掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/modules/problem/index.php?content_id=16

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<国土交通省関東地方整備局のホームページ募集要領より>
http://www.ktr.mlit.go.jp/river/shihon/river_shihon00000200.html

     -「利根川・江戸川河川整備計画」における治水対策に係る目標流量に関する意見募集-
                                   平成24年5月25日

 河川整備計画は、河川法第16条の2に規定されており、長期的な河川整備の最終目標である河川整備基本方針に沿って、中期的な具体的な整備の内容(計画的に実施すべき具体的な河川工事及び河川の維持等)を定める計画です。
 利根川・江戸川については、平成18年12月に利根川・江戸川有識者会議を設置して学識経験を有する者からご意見を伺うとともに、関係する住民の皆様からご意見を募集するなどして、河川整備計画の策定に係る検討を進めてまいりました。また、平成21年度に全国のダム事業の検証を行うこととしたことを踏まえて、平成22年度からは八ッ場ダム建設事業の検証を行ってまいりました。八ッ場ダム建設事業の検証においては、今後20~30年間で目指す安全の水準を表す「河川整備計画相当の目標流量」の設定等を行い、河川法第16条の2に準じて学識経験を有する者、 関係住民、関係地方公共団体の長等の意見を聴き、八ッ場ダム建設事業に関する対応方針を決定しました。

 このたび、「利根川・江戸川河川整備計画」の策定に当たって、あらためて、利根川・江戸川において今後20~30年間で目指す安全の水準について、河川管理者としての考え方をお示しします。
 「利根川・江戸川河川整備計画」の策定に当たっては、今後20~30年間で目指す安全の水準に対応する「治水対策に係る目標流量」を設定することとしています。具体的には、河川管理者から提示した案に対して関係する住民の皆様のご意見をお聴きし、ご意見から得られた論点及びそれ に対する河川管理者の見解を整理した上で、それらの情報をもとに、学識経験を有する者や関係都県のご意見を聴いて設定することとしております。
そのため、別添の「利根川・江戸川において今後20~30年間で目指す安全の 水準についての考え方」について、今後20~30年間で目指す安全の水準(案)に対するご意見や河川管理者の 考え方に関するご意見等を、関係する住民の皆様から広く募集します。
 なお、「利根川・江戸川河川整備計画」は、「治水対策に係る目標流量」を設定した上で、その目標流量に対する具体的な施設計画を含む案を提示するなどの段階を経て、決定することとしております。

 意見募集の期間 平成24年5月25日(金)~平成24年6月23日(土) 18:00必着
                            (郵送の場合は当日消印有効)
 意見の提出方法 意見提出様式に記入、または同内容を記入したものを郵送、ファクシミリ、電子メールのいずれかの方法で提出。

 提出先
○ご郵送の場合
〒330-9724 埼玉県さいたま市中央区新都心2-1 国土交通省関東地方整備局 河川部河川計画課 「利根川・江戸川河川整備計画」事務局 宛

○ファクシミリの場合 048-600―1436

○電子メールの場合 tone-plan2@ktr.mlit.go.jp (件名に「利根川・江戸川河川整備計画」事務局 宛と明記ください。)

 資料の入手・閲覧方法 インターネットの他、下記の場所で。 
・関東地方整備局6階情報公開室(埼玉県さいたま市中央区新都心2-1)
・東京都建設局河川部(東京都新宿区西新宿2-8-1)ほか

 <応募手続等に関する問い合わせ> 国土交通省関東地方整備局河川部河川計画課
 藤田、内田 TEL:048-601-3151(代表)、内線 3616、3641