八ッ場ダムの地域振興事業

 八ッ場ダムの「生活再建事業」の中で大きな位置を占める水没予定地域の「地域振興事業」についての記事が昨日の群馬版各紙に掲載されました。
 農村地帯の林地区で「道の駅」の着工式が行われ、川原湯温泉街を抱える川原湯地区の打越代替地に温泉の配当施設が完成したというニュースです。
 群馬県は八ッ場ダム事業にによる地域振興を掲げており、新聞も全体として明るいニュースとして取り上げています。
 
 これらの地域振興施設の建設は、利根川流域の1都5県が拠出する「利根川・荒川水源地域対策基金」によって賄われますが、運営・維持管理は、最終的には地元の負担となります。
 地元がダム事業を受け入れた1980~90年代、地域振興施設は水源地域振興公社(仮称)によって運営され、その費用は下流都県が負担すると群馬県は地元に説明しました。その約束が反故にされたことが判明したのは、政権交代の2年前の2007年のことでした。
 群馬県の地元への説明によれば、当初から下流都県は維持管理費を負担をする気は無かったとのことです。つまり、地元にダム計画を受け入れさせるために、群馬県は地元を騙していたわけです。こうした事実は、下流都県の議会でも明らかにされていません。
 
 現在、地元では地域振興施設を将来にわたって維持し、利益を生み出すことが果たして可能なのか、多くの住民が不安視しています。朝日新聞が「不安」と書いているのは、このことです。
 住民の多くは、国交省、群馬県、下流都県の対応に不満を抱いていますが、地元・長野原町当局は、八ッ場ダム推進を訴えており、ダム事業のマイナス要素を明らかにすることには極めて消極的です。
 
 林地区と川原湯地区は1960年代、八ッ場ダム反対闘争の中核でした。当時、「ダムで栄えた村はない」現実を踏まえて、八ッ場ダム計画に反対した住民に対して、建設省はダムと地域振興を両立させる「八ッ場方式」を提唱しました。
 しかし、それから40年、水没予定地域の衰退は著しく、川原湯地区では世帯数がかつての四分の一に激減し、林地区でも高齢化が顕著です。以下の記事に書かれている地域振興施設の将来は、前途多難と言わざるをえません。

◆朝日新聞群馬版 2012年6月27日
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581206270001

 -八ツ場ダム代替地、生活再建向け動きー

 八ツ場ダムができれば水没する長野原町内2地区の移転代替地で26日、住民の生活再建に向けた二つの動きがあった。林地区では道の駅の着工式が開かれ、川原湯地区では温泉の配湯施設が完成。住民の声には期待と不安が入り交じっていた。

 林地区で着工した道の駅「八ツ場ふるさと館」は、来年4月開業予定。水没する5地区では、4600億円のダム建設事業費とは別に、下流都県の基金から生活再建施設が整備され、この道の駅が第1号だ。

 不動大橋(湖面2号橋)に近く、八ツ場バイパスに面して立地。地元農産物の直売所のほか、コンビニエンスストアやレストラン、情報コーナーが整備される。駐車場も普通車105台、大型バス6台分確保。ダム湖が望める位置に、52平方メートルの足湯もできる。

 関係者約60人が集まった着工式では、高山欣也町長が「生活再建はもとより、ダム本体も速やかに着工を」と国に注文。大沢正明知事は「下流都県と協力し、ダム完成までに生活再建事業がすべてできるようにやっていく」と述べた。

 道の駅は地元住民が会社をつくって運営する。林地区ダム対策委員会で委員長を務める篠原茂さん(61)は「期待もあるが、不安と重圧が大きい。頑張って地域おこしの核にする」と気を引き締めていた。

 川原湯地区では、高台に完成した「打越配湯所」の見学会があり、地元住民ら約60人が参加した。

 「いい香り」「生きているうちにできるとは」。国土交通省八ツ場ダム工事事務所の職員が、試験として温泉の湯を送ると、歓声が上がった。

 移転代替地での温泉街再建を計画する旅館や商店が待望してきた施設だ。現温泉街にある新湯(あら・ゆ)源泉近くのポンプ所から管を約670メートル設置し、約50メートルの標高差をくみ上げて貯湯。打越配湯所には50トンのタンクが2基あり、旅館や住民に温泉の湯を送る仕組みだ。

 地区の温泉部会長で、2年前の春に休業した旅館「柏屋」社長の豊田幹雄さん(45)は「川原湯温泉は疲弊しているが、終わってはいない。すべての住民が普通の生活が送れるよう、国、県、町と協力していく」と決意を語った。

 一方で課題も残る。川原湯温泉は打越のほか、上湯原にも移転代替地がある。上湯原にも配湯所はできるが、完成時期は未定だ。区長の冨澤吉太郎さん(72)は「両方にできないと喜べない。とりあえずの一歩に過ぎない」と話した。(小林誠一)

◆読売新聞群馬版 2012年6月27日
http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/gunma/news/20120627-OYT8T00054.htm

 -八ッ場生活再建前進へ 川原湯配湯施設が完成ー

 八ッ場ダムが完成すると水没する長野原町川原湯地区で26日、川原湯温泉の源泉から各旅館の代替地までお湯を引き上げる「配湯施設」が完成した。同じく水没予定地の同町林地区では同日、国道のバイパス沿いに道の駅「八ッ場ふるさと館」が着工。住民の生活再建を進める動きが相次いだ。

 配湯施設は、川原湯地区の打越代替地に国交省が整備。現温泉街から約30メートル上の代替地まで約670メートルの管とポンプでお湯を引き上げる。同施設から各旅館にお湯を届ける配湯管も今年度中に整備する計画という。

 完成披露式には温泉関係者ら約60人が出席。二つある貯湯タンク(各50トン)から、仮設の樋(とい)にお湯を流すと、川原湯温泉の特徴のゆで卵のようなにおいが漂った。今年、代替地に移転した酒店経営篠原ヒサさん(82)は「明るい未来が流れているようだ。1日も早く、活気ある町に戻ってほしい」と願った。

 民主党政権は2009年、突然、建設中止方針を打ち出した。昨年暮れに建設継続が決まったものの、ダム計画は3年ほど遅れ、完成見込みは2018年度。ダム問題の長期化で、かつて22軒あった旅館はわずか5軒に減っている。

 配湯施設の整備を見越し、移転を進める旅館が出ている一方、代替地の造成が遅れ、営業再開のめどが立たない旅館もある。今夏、代替地に旅館を着工する計画を持つ「山木館」の樋田洋二さん(65)は「これを契機に、温泉街全体を再建できるようになれば」と語った。

 新しく川原湯地区ダム対策委員長に就任した豊田廣士さん(75)は「まだ移転できない人たちも商売できるよう早く代替地造成を進めてほしい」と注文した。

 一方、道の駅「八ッ場ふるさと館」は来春のオープンを目指し、国道145号バイパス沿いの湖面2号橋(不動大橋)たもとに建設する。木造1部2階建てで、建築面積は約950平方メートル。建設費には、下流都県が負担する利根川・荒川水源地域対策基金をあてる。

 キュウリなど地元農産物の直売所のほか、コンビニ店やレストラン、足湯などを設置。住民らが設立した株式会社が、町の委託で運営に当たる。着工式には、大沢知事ら約60人が出席した。林地区ダム対策委員長の篠原茂さん(61)は「雇用も作りながら、八ッ場の素晴らしさをアピールしたい」と話している。

◆毎日新聞群馬版 2012年6月27日
http://mainichi.jp/area/gunma/news/20120627ddlk10040173000c.html

 八ッ場ダム建設:温泉街移転 川原湯の代替配湯施設の試験通水 /群馬

 八ッ場ダムで水没する温泉街が移転するために新しく造成された長野原町川原湯の移転代替地で26日、旅館などに温泉を行き渡らせる配湯施設の試験通水が行われた。

 約70度の温泉が湧き出すと、あたりには湯気と特有の香りが立ちこめ、集まった川原湯温泉街の旅館経営者ら約15人が手を触れて、「ようやくできた」「安心した」などと喜び合った。

 配湯施設は、総延長約670メートルの送湯管を通じて、標高約583メートルの源泉から同約600メートルの配湯所まで温泉を引き上げる。温泉街移転に不可欠な設備で、旅館経営者らが完成を望んでいた。【奥山はるな】

http://mainichi.jp/area/gunma/news/20120627ddlk10040175000c.html

 八ッ場ダム建設:生活再建事業、道の駅着工式 来年度開業予定 /群馬
八ッ場ダム水没予定地の生活再建事業として下流都県の基金で整備される「道の駅八ッ場ふるさと館」の着工式が26日、長野原町林で行われた。

 09年9月の政権交代後に「十字架のよう」とされ有名になった「不動大橋(湖面2号橋)」のたもとに建設され、来年度に開業予定。足湯や地元農産物の直売所、コンビニエンスストアなどが造られる。

 道の駅の運営は今後、地元住民で造る株式会社に委託される。林地区ダム対策委員会の篠原茂委員長はこの日、「重圧もあるが、住民で意見を出し合って協力し、水没予定地全体のにぎわいを創出したい」と話した。

 着工式では、大沢正明知事が「下流都県と協力してダム完成までにすべての生活再建事業が完了するよう最大限努力する」とあいさつした。【奥山はるな】

◆東京新聞群馬版 2012年6月27日
http://www.tokyo-np.co.jp/article/gunma/20120627/CK2012062702000137.html

 -道の駅着工、配湯施設完成 八ッ場ダム建設事業ー

 長野原町の八ッ場(やんば)ダム建設事業で二十六日、水没五地区の一つの林地区で、生活再建対策として計画される「道の駅八ッ場ふるさと館」の着工式、

 川原湯温泉の各旅館が移転する高台の打越地区の代替地で、温泉を供給する配湯施設の完成披露式が、それぞれ行われた。国がダム建設の継続を決めて半年になるが、ダム本体の着工時期が決まらない中、周辺整備は着々と進む。

 道の駅は吾妻川の不動大橋(湖面2号橋)のたもとで、国道145号付け替え道路(八ッ場バイパス)沿い。敷地面積は約六千八百平方メートルで、コンビニやレストラン、農産物直売所、ダム湖を望む足湯などを整備。乗用車約百台、大型バス六台分の駐車スペースも確保する。

 建設費と用地取得費は計約六億八千万円で、事業費は利根川・荒川水源地域対策基金で賄う。ダム水没に伴う地域振興施設の建設は初めて。事業を実施する町は来年四月中旬のオープンを目指している。

 着工式は建設予定地で行われ、町や県、国土交通省の幹部、地元住民ら約七十人が出席。高山欣也町長は「ダムの速やかな完成を求める。道の駅で地元を活性化させたい」と強調。大沢正明知事も「にぎわいの施設になることを期待する」と祝辞を述べた。

 川原湯温泉の配湯施設は新湯源泉から約六百七十メートルの送湯管で打越配湯所に湯をくみ上げるシステム。国交省八ッ場ダム工事事務所が昨年十二月に着工した。

 二十六日は地元住民らの前で毎分三十リットルの温泉を送り込む配湯試験が行われ、約七十度の温泉が勢いよく流れ出した。 (山岸隆)

◆2012年6月27日 上毛新聞

 -長野原「八ッ場」の生活再建また一歩 川原湯温泉 移転へ前進 代替地に配湯施設完成 林地区では「道の駅」着工ー

 八ッ場ダム建設で水没する川原湯温泉の移転代替地に、源泉をくみ上げて各旅館に送るための配湯施設が完成し26日、長野原町の同所で地元住民を招いた見学会が開かれた。同じく水没予定地の同町林地区では、地域振興施設となる「道の駅八ッ場ふるさと館」の着工式も行われ、水没地区住民の生活再建に向けた動きが新たな一歩を踏み出した。

 「生きているうちに見ることができて良かった。未来が流れているみたい」。川原湯温泉で土産店を切り盛りする樋田ふさ子さん(83)は、待ちに待った配湯施設完成に喜びを隠せない。樋田さんの店は、来年夏までに代替地移転を済ませたいという。すでに代替地で営業を始めている大黒屋篠原酒店の篠原ヒサさん(82)は「これを弾みに、旅館の移転が早く進んでほしい」と話し、人でにぎわう新たな温泉街を思い描いた。
 完成した配湯施設は標高600㍍の打越代替地にあり、50㌧の貯湯タンク2基と配湯ポンプ2台が設置されている。打越代替地には10軒ほどの旅館が移転する見通しだが、最も旅館が集中する温泉街ゾーンはまだ土地の整備が終わっていない。
 ただ、住宅街に移転する「やまた旅館」は7月下旬に地鎮祭を行う予定で、少しずつ移転の動きが出始めている。ほかに旅館が移転を計画している上湯原代替地にも今後、配湯施設が整備される予定。
 現在休業中で、代替地の再開を目指す柏屋旅館の豊田幹雄社長(45)は「『川原湯温泉はもう終わってしまった』という声も聞くが、ここまで来た長い歴史がある。皆が協力しまた作っていきたい」と力強く語った。
 道の駅の着工式には大沢正明知事や高山欣也町長、下保修国交省関東地方整備局長ら60人が出席し、工事の安全を祈願した。
 下流都県の基金事業で整備され、総事業費は約6億8千万円。駐車場を含む敷地面積は約6900平方㍍で、農産物直売所やレストラン、コンビニ、情報コーナーなどを備える。町有施設だが、地元住民による株式会社が指定管理者の委託を受ける予定。来年4月の開業を目指す。
 大沢知事は「今後も代替地の造成が進んで人々が安心して暮らせるようになり、この地が再びにぎわうことを願う」と話した。