八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川原湯温泉の配湯施設

2012年6月26日

 八ッ場ダムで水没する予定の川原湯温泉の源泉を住民の移転代替地に送る配湯施設が完成したという記事が読売新聞に掲載されました。

◆読売新聞2012年6月26日13時57分
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20120626-OYT1T00597.htm

 -八ッ場ダム移転先に国の配湯施設が完成ー

 昨年末に建設継続が決まった群馬県長野原町の八ッ場(やんば)ダム予定地で、水没する川原湯(かわらゆ)温泉の旅館が移転する高台に、温泉を引き上げる国土交通省の配湯施設が完成した。

 民主党が打ち出した建設取りやめ方針などから、ダム計画は3年ほど遅れる見通し。26日に現地で施設の完成披露式を迎えた地元からは「マニフェスト(政権公約)絡みの混乱はもううんざり」の声が上がった。

 完成したのは、現在の温泉街にある源泉から、約30メートルの高台にある移転先まで、計約670メートルの管とポンプで温泉を引き上げる施設。旅館関係者が待望していた。

 ダムを巡っては、民主党が2009年衆院選の政権公約で建設中止を盛り込み、政権交代後、前原誠司国交相が建設取りやめを表明。

 建設を前提に移転作業を進めていた地元温泉関係者らの強い反発を招いた。昨年12月、前田武志国交相が建設継続を発表したものの、国交相も現在5人目。地元では民主党政権への強い不信感が消えないままだ。

 ~~~転載終わり~~~

 配湯施設についてのニュースは、このところたびたび読売新聞が取り上げています。記事では、住民が八ッ場ダムの生活再建事業の一つである配湯施設の完成を喜んでいるという、行政にとって都合のよい情報のみを取り上げていますが、この配湯施設は暫定的なもので、本格的な配湯施設は、湖岸沿いに造られる予定の町道の下に敷設することになっています。
 6月県議会において伊藤祐司議員(共産党)がこの問題について質したところ、群馬県は、「町道は上湯原の川原湯温泉新駅から現温泉街の上を通って打越代替地へと結ぶルートです。このため、現温泉街から旅館が移転できないと町道ができないので、町道建設はかなり最後の方になるのではないか」という趣旨の答弁をしました。
 町道建設のメドが立たない現状では、当然ながら本格的な配湯施設がいつ造られるのか不明です。配湯施設の建設難航は、「現地再建ずり上がり」による「生活再建」という机上の青写真が現実には実現がきわめて困難であることを示しています。
 暫定的な配湯施設で送るのは、ダム事業で新たにボーリングによって掘り当てた新源泉の温泉だけです。もともとの川原湯温泉の源泉である旧源泉の方がどうなるのかの見通しもはっきりしていません。
 八ッ場ダムの生活再建事業では、ダムによる水没補償として、代替地へ温泉を配湯する施設を造ることは約束されていますが、ダム湖完成後、配湯施設の維持管理費をどこが負担するかは決まっていません。国はハードの設備をつくることには熱心ですが、維持管理の負担には消極的です。
 八ッ場ダム推進を掲げる利根川の下流都県では、コスト縮減委員会を設け、「維持管理費」などの負担は認められないという姿勢です。下流都県は、天下りや土建業者にとってマイナスとなるコスト縮減には言及しません。ダム事業を続けつつコスト縮減を図るという行政の姿勢は、地元では無慈悲な政策と受け止められています。
 国は地元の反発を受けて、何年かは配湯施設の維持管理費を肩代わりするという案を出しているようですが、川原湯温泉がダムに沈めば、代替地で温泉を維持するために配湯施設はこれからずっと必要になります。

 記事の最後には、「地元では民主党政権への強い不信感が消えないままだ。」とありますが、地元の人々の不信感は、政治や行政そのものに向けられています。