2012年9月13日
群馬県では一昨日、夕立がありましたが、しばらくはまだ30度以上の夏のような日が続くようです。
利根川の取水制限について、解説をお送りします。
田んぼでは稲刈りに備えて、水を落とします。これまで大量に取水されていた農業用水の利用が急減する季節を迎えています。
利根川の渇水については、先にお伝えした解説もご参考になさって下さい。
https://yamba-net.org/wp/modules/news/index.php?page=article&storyid=1709
~~~~~
利根川の取水制限について
9月11日から利根川の10%取水制限が始まりました。
テレビは貯水率が最も低くて湖底が露出した矢木沢ダムを取り上げて、渇水到来の危機を伝えてきましたが、節水に努めることは必要だとしても、それほど心配する状況ではありません。
9月中旬以降にもなれば、秋雨前線と台風の到来でまとまった雨が降る可能性が高くなってきますが、問題はそれだけではありません。
まず、矢木沢ダムは、貯水率が5~6%(貯水量600~700万?)となっていますが、これは発電専用容量の貯水3,820万?を含まない貯水率であり、それを入れると、貯水率は30%近くまでに跳ね上がります。
利根川水系8ダム全体の貯水量は上記の3,820万?を除いて、9月12日現在、1億3千万?/程度で、貯水率は約38%ですが、水需要の面でこの貯水率が今後、急速に減っていくことはありません。それは農業用水の取水量がどんどん小さくなってきているからです。
以下の図は利根川で最大の水利用者である利根大堰の農業用水の最大取水量を半旬別(約5日)にみたものです。
〈注〉上図は国交省が利根川の利水計算に用いた計画取水量を示す。
6~8月には最大で60~65?/秒も取水していたものが、9月に入ってからは20?/秒、10?/秒へと次第に小さくなって、10月からはゼロになります(冬期の試験通水のための取水量を除く)。なお、東京都水道の取水量は各水系の河川水と地下水を合わせて、最大で55?/秒ですから、利根大堰の農業用水の取水量は大変大きなものです。それがゼロに向かって小さくなってきているのです。
利根川の渇水は近年では2001年に起きましたが、これは実質たった5日だけの渇水でした。その前の夏期の渇水は1996年で、8月16日に取水制限が始まり、9月14日まで続きました、その間,30%の取水制限まで行われましたが、その段階でも給水制限は給水圧の調整にとどまり、生活への影響は軽微でした。
今回の渇水を1996年渇水と比べると、渇水の時期が1月近く遅れており、その間に上述のとおり、農業用水の需要の急減がありますので、水需要の面ではるかに有利です。
また、首都圏の都市用水も当時と比べると、需要の規模が小さくなっています。
その点で、今回の渇水を冷静に受け止めていただきたいと思います。
なお、八ッ場ダムがあっても、その夏期の貯水容量は2,500万?しかありませんので、渇水の状況を大きく好転させるものにはなりえません。
~~~~~
以下のブログも、利根川の渇水について、わかりやすい解説を載せています。
●http://seisaku-essay.cocolog-nifty.com/blog/2012/09/post-05f1.html
「取水制限」の利用方法~石原都知事の場合
●http://blogs.yahoo.co.jp/spmpy497/7140884.html
ダムと渇水完結編ー政策的思考と渇水対策