八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場の遺跡保存を ダム建設中止 シンポで訴え

 昨日、八ッ場あしたの会で開いたシンポジウム野関連記事が今朝の各紙に載っています。
 今回は、水没予定地の埋蔵文化財の問題を初めて取り上げたこともあり、
各紙が文化財を中心に報じていますが、第二部のテーマ「八ッ場ダムの危険性」も、国交省資料を綿密に分析した結果をまとめた中身の濃いものでした。

 国交省は八ッ場ダムの検証で、新たに地すべり対策と代替地の安全対策が必要だとして、事業費増額の試算を出していますが、検証作業の中では大した調査を実施しておらず、増額の試算も相当いい加減なものであることが明らかになりました。
 地すべり対策では、大きな地すべり地形は無視し、小さい地すべり地形だけを安価な工法で対策することになっています。きちんとした調査を実施すれば、さらに事業費は増額され、工期も延びる可能性がきわめて高いのですが、東京都などの関係都県は、現在、国交省が試算で出している地すべり対策等による事業費増額、工期延長も認めないとしています。

 予告記事も含め、関連記事を転載します。

◆上毛新聞 2012年9月23日

 -八ッ場の遺跡保存を ダム建設中止 シンポで訴えー

 八ッ場ダム(長野原町)建設予定地で発見された埋蔵文化財の重要性を伝えるシンポジウムが22日、高崎市の高崎シティギャラリーで開かれた。約200人の聴衆を前に、専門家らが縄文~江戸時代の遺跡を紹介、ダム建設を中止し、遺跡保存や観光面での活用を訴えた。
 県教育委員会によると、建設予定地周辺には70近い遺跡がある。天明3(1783)年の浅間山大噴火で発生した泥流に埋もれ、当時の生活をそのまま伝える東宮遺跡や、縄文時代に山間地で定住生活が行われていたことを示す楡木Ⅱ遺跡などが発見されている。
 パネリストを務めた考古学者の勅使河原彰さんは東宮遺跡について「泥流の下に当時の生活がパックされリアルに復元できる。非常に重要だ」と指摘。ほかにも多くの遺跡があることに触れ「全部を博物館にしたい」と価値を強調した。作家の森まゆみさんは「遺跡をむやみに壊すことは許されない」と述べた。
 シンポジウムは市民団体「八ッ場あしたの会」が主催。事務局長の渡辺洋子さんは観光振興について「ダム湖観光は実現性がない。地域の本来の力を生かし、歴史遺産を活用する道を考えるべきだ」と話した。

◆朝日新聞群馬版 2012年9月23日
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581209240002

 ー遺跡保存求め ダム建設反対 八ッ場 高崎のシンポに120人ー

 八ッ場ダム(長野原町)建設についてのシンポジウム「ほんとうに造っていいですか? 八ッ場ダム」が22日、高崎市内であった。作家の森まゆみさん、考古学者の勅使河原彰さんらが文化財保護の視点からダム建設に異論を唱えた。約120人が集まった。
 ダム予定地には、縄文、弥生、平安時代の遺跡や、1783(天明3)年の浅間山噴火で泥流にのまれた集落跡がある。パネリストの勅使河原彰さんは「地域全部を博物館にしたい遺跡だ。江戸時代の暮らしが泥流にそのままパックされている。当時の生活のすべてをリアルに復元できる要素がある」と強調した。
 森さんは、全国的な関心の高まりにより、開発からの難を逃れた吉野ヶ里遺跡(佐賀県)などを例に挙げ「先人の生活や歴史を大事にするなら(遺跡を)活用して価値を高めることができる」と指摘。歴史・文化に目を向けることで、ダム湖に頼らない振興につながるとした。
 市民団体「八ッ場あしたの会」が主催。これまで何度もダム建設見直しの催しを開いてきたが、文化財保護の視点を取り上げるのは初めて。1部「予定地の埋蔵文化財」に続き、2部は「ダム湛水による危険性」と題して、予定地の地盤の弱さなどを議論した。(木村浩之)

◆しんぶん赤旗 2012年9月23日
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-09-23/2012092315_01_1.html

 -八ツ場ダム 水没予定地 国交省 影響恐れ調査後ろ向き 貴重な遺跡が多数ー

  民主党・野田内閣が昨年12月に事業再開を表明した八ツ場ダム(群馬県長野原町)の水没予定地から多数の遺跡が見つかったものの、国土交通省が調査費用を渋るなど消極的な対応をしていることを22日、「八ツ場あしたの会」が群馬県高崎市で開いたシンポジウムで、明らかにしました。国交省側の対応は、遺跡の追加調査や保存を工事の妨げとしか見ない、“ダム建設ありき”の姿勢を示すものです。

 シンポで明らかに
 報告した「八ツ場あしたの会」の渡辺洋子さんによると、ダムが完成した場合に全水没または一部水没の5地区から48遺跡が見つかっているとしています。

 遺跡は縄文時代の大集落や天明3年(1783年)の浅間山大噴火で泥流に埋まった屋敷など。特に江戸時代の「東宮遺跡」は、泥流発生の混乱と山村の豊かな暮らしを示すものとして注目が集まっています。こうした貴重な遺跡は、ダム関連工事で今も見つかっているといいます。

 「あしたの会」が入手した群馬県の資料によると、県側は2015年度末までの埋蔵文化財調査費を総額130億円と積算していました。ところが国交省側は「98億円を超えた協定の変更はできない」と突っぱねたことが2007年の県資料には記録されています。当初は約57万平方メートルとした調査面積が、関連工事で遺跡の発見が相次ぎ、約136万平方メートルに倍加。少ない予算に県の教育委員会側が苦労する様子がかかれています。

 また文書によると、東宮遺跡を「江戸時代の遺跡」として、積極的に展示しようとする県などに対し、「(ダム工事事務所)所長に伺っているが、良い返事はない」と国側が難色を示していました。

 地域の財産生かし再建を
 シンポでは、考古学者の勅使河原(てしがわら)彰さんが「岩手県陸前高田市では、『文化財の残らない復興などありえない』と、高台にある遺跡保護に市職員ががんばっている。地域の歴史やアイデンティティーを大切にしてこそ、真の復興になる」と発言。作家の森まゆみさんは「国交省が考えるダム湖観光はあまり成功がみこめない。地域に元々あるものが街づくりの核になる。これだけの財産があるのに、壊しダムに沈めることは問題だ」とのべました。

 第2部では、日本共産党の伊藤祐司群馬県議、地質専門家の中山俊雄さん、全国のダム問題に詳しい嶋津暉之さんが討論。伊藤県議は「建設予定地の生活再建には、ダム建設ではなく、地元の川原湯温泉を生かし、自然を生かし、文化財を生かすことが一番の早道」とのべました。

 シンポは文化財保存全国協議会などが後援。200人近い市民が発言に聞き入りました。

 同ダムをめぐっては、本体工事のための条件として、藤村官房長官が示した「利根川河川整備計画」の策定が進んでおらず、工事は進んでいません。

◆朝日新聞群馬版 2012年9月22日
http://mytown.asahi.com/gunma/news.php?k_id=10000581209240003

 -八ツ場ダムの是非遺跡群から考えるー

 八ツ場ダム(長野原町)建設について考えるシンポジウム「ほんとうに造っていいですか? 八ツ場ダム」(八ツ場あしたの会主催)が22日午後1時半~4時半、高崎市高松町の高崎シティギャラリーコアホールで開かれる。作家森まゆみさん、考古学者勅使河原彰さんを招き、水没予定地に残る遺跡の価値などを議論する。資料代500円。

 県文化財保護課などによると、予定地には1783(天明3)年の浅間山噴火で泥流に埋もれた遺跡が多く残る。集落跡の東宮遺跡では大規模な屋敷跡に座敷や風呂が残り、江戸時代の暮らしや被災状況が生々しくうかがわれたという。古文書などに噴火の記録があるため、日付まで特定できる遺跡も全国的に珍しい。

 同会は県への情報公開請求で、県が2008年当時、130億円を見込んだ予定地の発掘調査費用が国土交通省との協議で98億円に抑えられた経緯を確認。「予算や工期が優先され、恣意(し・い)的に遺跡が限定される恐れがある」と指摘する。

 これに対し、県文化財保護課は「必要な調査はしており、今後も予算が増減することはありうる。調査結果は記録に保存し、公開もしている」と反論する。

 同会の渡辺洋子事務局長は「予定地の価値ある遺跡を県民に知ってもらい、ダム建設ではなく遺跡群を地域振興の柱にすべきだと訴えたい」と話している。

◆2012年9月19日 上毛新聞社会面

 -八ッ場建設予定地の埋蔵文化財を考える 22日・高崎でシンポー

 八ッ場ダム建設反対派の市民団体「八ッ場あしたの会」などは22日午後1時半から、高崎市の高崎シティギャラリーで、建設予定地の埋蔵文化財の重要性を知ってもらおうと、考古学者の勅使河原彰さんらを招いてシンポジウムを開く。
 18日記者会見した同会は、県教委に開示請求した資料を基に、県が県背す予定地の埋蔵文化財調査費を130億円と試算したが、国は98億円と提示したことを明らかにした。国と県、県埋蔵文化財調査事業団は2008年3月にこの額で協定を結んでいる。
 同会事務局の渡辺洋子さんは「十分な調査が行われないのではないか疑問を持っている」と指摘した。
 これに対して県教委は「試掘などをしてみないと98億円で調査が終えるか終えないか何とも言えない。だが必要な調査は必ずやる」としている。