八ッ場ダム予定地の上流側にある草津白根山の本白根山が噴火し、避難訓練を行っていた陸上自衛隊の隊員が死亡しました。
草津白根山では通常は多くのスキーヤーが訪れているスキーシーズンですが、前日からの大雪により小中学生のスキー教室が中止になっていたのは、不幸中の幸いでした。大雪がなければ被害はさらに甚大になった可能性があります。
★気象庁 草津白根山 噴火警報(火口周辺)
http://www.jma.go.jp/jp/volcano/forecast_03_20180123110306.html
草津白根山では、湯釜付近でこれまで何度も噴火が発生していますが、今回噴火した本白根山は、約4800年前の噴火によってできた山で、その後の噴火は確認されていません。今回の火口から約1.7キロ離れている湯釜周辺には観測機器が設置されていますが、今回の噴火口付近では噴火が想定されていなかったため、観測態勢もありませんでした。草津白根山の噴火警戒レベルは、噴火発生まで最も警戒レベルが低いとされるレベル1でした。気象庁は噴火速報も出しておらず、ニュースは火山学者の批判のコメントを紹介しています。
2014年の木曽御嶽山の噴火は、やはり噴火警戒レベル1で発生し、紅葉シーズンで火口付近に集まっていた登山者ら58名が死亡するという大惨事となりました。御嶽山噴火の教訓を踏まえて、警戒体制がとられたはずでしたが、残念ながら火山噴火に対する無力が改めて確認されてしまいました。
火山学者の早川由紀夫群馬大教授がブログやツイッターで今回の噴火について発信しています。報道では草津白根山の鏡池を火口としていますが、実際の火口は鏡池から500メートル離れているとのことです。
★早川由紀夫の火山ブログー草津の本白根山2018年1月噴火
http://kipuka.blog70.fc2.com/blog-entry-791.html
★草津白根山2018年1月23日噴火の迅速解釈
https://togetter.com/li/1192508
草津白根山は八ッ場ダム湖予定地の上流端となるJR吾妻線「長野原草津口駅」から直線で約15キロメートルの距離にある火山です。ダム予定地を流れる吾妻川は、上流域の左岸側に草津白根山、右岸側に浅間山というわが国有数の活火山を抱えてています。硫黄の山、草津白根山の山麓からは幾筋もの酸性河川が流れ込み、吾妻川の水質に影響を与えています。八ッ場ダム事業は鉄もコンクリートも溶かす草津白根山麓の酸性河川において中和事業が軌道に乗ったことにより、1967年に始まった経緯があります。
(右図=青いラインで囲んだところがダム湖予定地)
2011年12月に八ッ場ダム事業に改めてゴーサインが出された際には、浅間山噴火による八ッ場ダムへの影響について、国交省の有識者会議による形ばかりの検証が行われましたが、浅間山噴火の際には、事前に八ッ場ダム湖の水を放流し、浅間山から流れてくる泥流をダムで受け止めることによって減災が可能という、科学的根拠のない杜撰な結論に至りました。草津白根山の噴火による影響は検討されていません。
〈参照〉八ッ場ダム事業の問題点ー浅間山の噴火と八ッ場ダム
https://yamba-net.org/wp/problem/wazawai/chishitsu/funka/
◆2018年1月23日21時3分 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180123/k10011299871000.html
ー草津白根山 専門家「噴火速報出すべきだった」ー
草津白根山の噴火について気象庁は、登山者などに噴火の事実をいち早く伝える「噴火速報」を発表しませんでした。想定していた火口とは別の場所で噴火が起きたことから監視カメラの映像がなく、すぐに噴火が起きたと判断できなかったと説明しています。
草津白根山では23日午前9時59分に噴火が発生しましたが、気象庁は噴火の事実をいち早く伝える「噴火速報」は発表せず、およそ1時間後の午前11時5分に「噴火が発生したもようだ」という情報を発表しました。
気象庁によりますと、噴火が発生した時刻には振幅の大きな火山性微動が観測されていましたが、このデータだけでは噴火と判断していませんでした。その後、地元の火山の専門家や草津町から「噴煙が上がっている」という情報が寄せられましたが、噴火を捉えた監視カメラの映像がなかったためすぐに確認できず、噴火から5分以内をめどに発表する「噴火速報」は出せなかったということです。
今回、噴火が起きたのは草津白根山の本白根山の鏡池付近でしたが、気象庁が噴火の可能性があると想定して観測態勢を整えていたのは、2キロほど北側にある白根山の湯釜火口でした。このため、監視に使っている3台のカメラは、いずれも湯釜火口に向けられていて、今回の噴火を捉えることはできなかったということです。
火山噴火予知連絡会の前の会長で東京大学の藤井敏嗣名誉教授は「噴火の確認に時間がかかったとしても、周囲にいる人やこれから山に登ろうとしている人に注意を呼びかけるために、『噴火したと見られる』と判断した段階で噴火速報を出すべきだった」と指摘しました。
気象庁は、今回、噴火が起きた場所の周辺を撮影できる監視カメラや地震計の設置など、観測態勢を強化することにしています。
◆2018年1月24日6時31分 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180124/k10011300231000.html?utm_int=realtime_contents_news-related_001_002&word_result=%E8%8D%89%E6%B4%A5%E7%99%BD%E6%A0%B9%E5%B1%B1
ー草津白根山 600回超の火山性地震 活発な活動続くー
23日噴火が発生した群馬県北西部にある草津白根山では、23日、600回を超える火山性地震を観測するなど、活発な火山活動が続いています。気象庁は、「入山規制」を示す噴火警戒レベル「3」を継続し、鏡池付近の火口からおおむね2キロの範囲では噴火に伴う大きな噴石などに警戒を続けるよう呼びかけています。
群馬県の北西部にある草津白根山では、23日午前10時前に本白根山の鏡池付近で噴火が発生し、1キロ以上離れた場所まで噴石が飛んだことが確認されました。
気象庁によりますと、草津白根山では噴火直後の23日午前10時から11時までの1時間に火山性地震が159回観測されたあとその後も続き、23日は合わせて625回観測されました。
24日は午前6時までに火山性地震は観測されていないほか、火山性微動も観測されていないということです。
気象庁は、草津白根山では、活発な火山活動が続いていて、今後も噴火が起きるおそれがあるとして、「入山規制」を示す噴火警戒レベル3の火口周辺警報を継続し、鏡池付近からおおむね2キロの範囲で噴火に伴う噴石に警戒するよう呼びかけています。
また、気象台の調査では、噴火のあと、火口から北東に8キロほどの群馬県中之条町でも火山灰が降ったのが確認されています。気象庁は、風下側で降る小さな噴石や火山灰、空振=空気の振動、それに火山ガスにも注意するよう呼びかけています。
一方、鏡池付近ではこれまで噴火は想定されておらず、監視カメラなどが設置されていなかったことから、気象庁は、周辺を撮影できる監視カメラを24日にも設置するなど、観測態勢を強化することにしています。
◆2018年1月24日 上毛新聞
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/29039
ー《草津白根山噴火》陸自隊員 訓練中に被災ー
草津白根山(群馬県草津町)の噴火で死傷した陸上自衛隊の8人は、多くの災害派遣現場で活躍してきた陸自第12旅団(同県榛東村)第12ヘリコプター隊の所属だった。30人でスキー板を着けて歩いたり滑ったり、埋まった人や山火事の火元を探す訓練をしている最中に被災した。
陸自によると、第12旅団は「積雪地部隊」に指定されており、雪の中でも任務が遂行できるよう、能力に応じ、グループに分かれてスキーの訓練をしていた。死亡した男性陸曹長(49)は上級のグループに属していた。噴火に巻き込まれたのは山の上の方にいたスキーが上手な隊員で、救急隊が救助に当たった。訓練予定だったコースが雪崩の危険があり閉鎖されていたため、別のコースへ向かう途中に被害に遭ったという。
ー《草津白根山噴火》雪煙 倒れ込む人 歓喜のゲレンデ 戦場にー
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/29035
まるで容赦なく爆弾が投下される戦場のようだった。草津白根山(群馬県草津町)が噴火した23日、草津国際スキー場に設置されたカメラは、噴火当時の衝撃的なゲレンデの状況を捉えていた。巧みに滑るスキーヤーに降り注ぐ大小さまざまな噴石。その落ちた場所からは次々に雪煙が上がり、倒れ込む人の姿もあった。
◎無数の噴石 次々
映像では、噴火発生時、10人のスキーヤーが1列になってゲレンデを滑っていた。噴石が飛び始めた後、画面右端から大量の黒煙がロープウエーのある左方向に流れ、無数の噴石が次々に落ちていった。山肌やゲレンデに雪煙が立ち上り、10人の中でやや後方にいた人が倒れた後、全員が雪煙に包まれた。
山頂駅に向かうためにロープウエーに乗っていた男性(71)=東京都=によると、直径3、4センチの噴石二つがガラスを割って飛び込んできた。窓の外に目をやると、ゲレンデに滑っていた3人が倒れ、1人は動いていなかったという。「自分もあと10分早かったら危なかっただろう」と顔をこわばらせた。
リフトから3人のスキーヤーを救助した男性係員は「突然のことだったので驚いた。救助した人はリフトに一時取り残され、怖かったと思う」と話していた。
◎残された客 必死の救助
草津国際スキー場周辺には消防や警察、自衛隊などの車両が多く集まり、ゲレンデやロープウエーの駅に取り残された客らの救助に当たった。
「救助に向かった先は火山灰や噴石があり真っ黒だった。信じられない景色だった」。同スキー場パトロール隊長の中沢卓さん(48)は、噴火直後の様子をこう証言した。一変した光景の中に脚や腰を痛めた自衛隊員、息苦しそうにしている人を見た。救助ボートを使っての活動は泥の上を進む感覚だったという。
救助隊員によると、午前11時ごろからゴンドラやリフト、山頂駅近くのレストランにいた人たちが次々と医師や看護師が詰める中腹の山麓駅近くのレストランに運ばれてきた。自力で歩けず支えられたながら入ってきた人もいた。
山頂駅で一時孤立した78人は、自衛隊のヘリやスノーモービル、草津観光公社の雪上車で午後5時55分までに全員が救助された。
ー《草津白根山噴火》爆音「もう終わり」 噴石 顔を横切るー
https://www.jomo-news.co.jp/news/gunma/society/29036
黒煙が上り、噴石が顔を横切った。23日に発生した草津白根山の噴火。救助された草津国際スキー場の客らは、「必死で逃げた」「終わったと思った」と生死を分けかねなかった瞬間をまざまざと振り返った。
◎突然「どーん」 振り向くと黒煙
「(山頂に近い)山頂駅を降りてスキー板を着けようとしたら『どーん』と大きな音がした」と、ヘリで救助された蔵田道子さん(69)=東京都葛飾区。レストランなどの屋根に噴石でできたとみられる直径20センチほどの穴を複数見たという。
山頂駅周辺にいた鎮目悠三さん(73)=同中央区=は「噴石がどんどん飛んできて、顔の横をヒュンと通ったのが分かった。大きな石が直撃したらと思うとぞっとした」。レストランの地下では皆が落ち着いた様子で係員の指示を聞いていたと振り返った。
ゴンドラに乗っていた小池修さん(68)=同八王子市=は噴石が飛んできた後、数分間、周囲が暗くなったと証言した。「怖かった。両手で抱えるくらいの噴石もあったと思う」。金子典子さん(43)=同江戸川区=もゴンドラの中で黒っぽい煙に包まれた。30分くらいで動きだしたがスキーの滑走面は真っ黒になっていた。
鈴木克典さん(77)=同多摩市=は「さらに大噴火が起きたら、もう終わりだなと思った」、佐藤初子さん(76)=横浜市=は「ゴンドラが止まって不安だった」と声を震わせた。「御嶽山の災害が頭に浮かんだ」と、山頂駅で約4時間待った高屋昌平さん(65)=東京都青梅市=と市川幸子さん=同八王子市。山頂に近いコースを滑っていた60代男性(草津町)は振り向くと黒煙が立ち上っていたといい、「3分遅かったら巻き込まれていた」と振り返った。
長男と次男夫婦の3人が山頂に取り残された長野原桜井新聞店の店主、桜井明徳さん(60)のもとには午後5時半ごろ「全員無事」の一報が入った。「助けてくれた人に感謝したいが、亡くなった人もいると聞いた。何とも言えない気持ちだ」と話した。
ー三山春秋】噴石が飛び、レストハウスの…ー
https://www.jomo-news.co.jp/feature/miyama/29038
▼噴石が飛び、レストハウスの屋根を突き破った。ロープウエーのゴンドラも、窓ガラスが割られた。スキー客らの恐怖はどんなだっただろう。草津白根山の本白根山が噴火し、12人の死傷者が出た
▼湯釜火口から離れた、これまで休止状態の地点だったため、観測も手薄で噴火のメカニズムが解明されていない。マグマの上昇と違った水蒸気噴火の可能性が高いとされる一方、予想外の場所での噴火は今後の見通しが難しく、気が気でない
▼ともすれば「群馬は大丈夫」という漠然とした安全神話に漬かっていかねない私たちだろう。2016年1月の本紙アンケートを振り返ると、県内各種団体の代表者が回答した「本県の最大の強み」は「災害リスク(の低さ)」が最も多かった
▼確かにここしばらく、激甚災害に見舞われたことはないが、熊本も神戸も大地震の前までは安全のイメージが先行していたと聞く。安全神話は願望の表れにすぎない
▼世界の地表面積の0.25%の日本の国土に、世界の10%の活火山が集っている。狭い国土で4つものプレートがせめぎ合う。人間の力をはるかに超えた地球の営みである
▼気象庁は、事前に噴火警戒レベルを引き上げるのは困難な状況だったとして観測態勢を強化するという。犠牲者のご冥福をお祈りするとともに、一日も早い沈静化を願うばかりだ。
◆2018年1月24日 建設通信新聞
https://www.kensetsunews.com/web-kan/151539
ー【草津白根山噴火】関東地整がテックフォース派遣 災害対策用機械3台もー
関東地方整備局は23日、群馬県草津町の草津白根山が噴火したことを受け、応援対策本部を設置した。午後1時現在、TEC-FORCE(緊急災害対策派遣隊)2人、リエゾン(現地情報連絡員)3人、災害対策用機械3台を派遣している。火山対策災害本部も設置した。
TEC-FORCEは高崎河川国道事務所と利根川水系砂防事務所から、同局の品木ダム水質管理所に砂防班を各1人派遣した。リエゾンは、八ッ場ダム工事事務所から嬬恋村役場、利根川ダム統合管理事務所から群馬県庁、品木ダム水質管理所から草津町役場に派遣した。
災害対策用機械は、照明車、対策本部車、衛星通信車を高崎河川国道事務所から品木ダム水質管理所に送った。
一方、22日の低気圧に伴う雪害では、雪害対策本部を同日設置し、対応に当たっている。