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福岡県の五ケ山ダムと伊良原ダム

 福岡県は五ケ山ダムを建設し、現在、試験湛水を行っています。
 五ケ山ダムの総貯水容量は4,020万㎥(八ッ場ダムは1億750万㎥)と、国の補助金でつくる、いわゆる補助ダムとしてはかなり大きいダムです。総事業費1,050億円、水没戸数は45戸です。福岡県はこの五ケ山ダムのほかに、今年3月に完成した伊良原ダム(総貯水容量2,870万㎥)も建設してきました。伊良原ダムの総事業費は758億円、水没戸数は86戸です。

◆福岡県公式サイトより 「五ケ山ダムの進捗状況」
 http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/gokayama-shinchoku.html

 五ケ山ダムは2014年2月からダム本体の打設工事が始まり、2016年10月にダム本体が完成して試験湛水が始まりました。わずか2年半余でダム本体が完成するのですから、最近のダム建設技術は大変進歩していることがわかります。
 ただ、試験湛水は大幅に遅れています。五ケ山ダムの集水面積は約19平方キロメートルしかありません。試験湛水は今年3月末に終わる予定でしたが、上記の福岡県のサイトに掲載されている最新のデータ(平成30年5月8日現在)を見ると、「EL397.5m、サーチャージ水位まで あと15.9m」と書かれています。「サーチャージ水位」とは洪水の際の最高水位です。ダムの試験湛水は、サーチャージ水位まで水を貯めてから最低水位まで放流し、安全性を検証しますので、試験湛水を完了させ、ダムを運用するまでにはまだ時間がかかりそうです。

 以下の記事では「40年のときを経てついに完成した県下最大のダムには、渇水対策だけでなく、さまざまな災害に対する“転ばぬ先の杖”としても大きな期待が寄せられている。」と書かれていますが、これからの縮小社会の時代にこれらのダムは本当に必要だったのでしょうか。

 福岡県のサイトには、主要ダムとして運用中の17基のダムの貯水量の情報が掲載されています。完成した筈の伊良原ダムの情報はまだ掲載されていません。
 http://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/damuchosui.html

◆2018年5月5日 Net IB news
www.data-max.co.jp/tokusyu/300505_ib1806/
ー多目的ダムとして運用開始、防災や治水などに大きな期待 五ケ山ダムー

計画から約40年、五ケ山ダムがついに完成

 3月11日、福岡県那珂川町五ケ山地区那珂川上流で建設が進められていた多目的ダム「五ケ山ダム」が完成し、現地で竣工式が開催された。式には小川洋福岡県知事を始め、関係自治体の首長や国会議員、県議会議員、町議会議員、元地権者など多くの関係者が出席。このダムに寄せる期待の高さがうかがえた。

 五ケ山ダムは、型式としては「重力式コンクリートダム」となり、ダム堤の高さ102.5m、長さ556mの大きさをもつ。総事業費は約1,050億円。県営ダムとしては3月に完成したみやこ町の伊良原ダムに続いて17カ所目となるもの。ダム湖は佐賀県吉野ケ里町にもまたがり、総貯水量が4,020万m3でヤフオク!ドーム約22杯分の大きさをもつ。日向神ダム(2,790万m3)や2019年度に完成予定の小石原川ダム(4,000万m3)を上回り、県内最大の貯水量を誇る。水力発電設備も有しており、自らダム管理用の電力を発電し、設備へ供給可能となっている。

 1978年の福岡大渇水を契機に建設計画が持ち上がり、ダムの予備調査が開始されたのが79年。以降、ダム軸の決定(91年)、集団移転完了(06年)、ダム本体工事着手(12年)、ダム本体コンクリート初打設(14年)、そして今年3月の竣工まで、約40年を要した一大プロジェクトである。

 竣工式典のなかで小川知事は、「朝倉市の災害時に、寺内ダムが下流域の水位上昇を大幅に抑え、また、上流からの流木をダムで受け止め被害の拡大を防いだ。ダムは治水対策としても大きな役割をもつ。また、福岡市近隣は幾度となく渇水に見舞われたことから、渇水対策としても有効である」と語った。その後、記念碑除幕やテープカットなどが行われ、堤上で“渡り初め”などが行われた。

熟練の技術を分析して操作プログラムに導入

 五ケ山ダムでは、巡航RCD工法といわれる新しい方法でダム堤体が構築されたほか、さまざまな新しい技術が取り入れられた。

 その1つが、鹿島建設(株)が提唱する次世代建設生産システム「クワッドアクセル」というもの。これは、振動ローラーとブルドーザーを無人化運転するもので、いわゆる建機類の自動化である。このシステムは、人が運転するダンプが現場に到着し、荷台のコンクリートをブルドーザーの待機位置手前に降ろすと、無人のブルドーザーが動き出してコンクリートの山を平らにし、作業終了後は直ちに待機位置に戻るというもの。次のダンプが到着してコンクリートを降ろすと、ブルドーザーは先ほどと同じ作業を行い、再び待機位置に戻る。オペレーターが運転する有人運転では、熟練度によって施工方法や時間のかけ方にバラつきがあり、場合によっては施工状況に大きく影響をおよぼすことも考えられるが、このシステムではその問題が解消されたかたちだ。

 鹿島の担当者は、「熟練者の操作するブルドーザーの動きを細かく分析して制御プログラムに組み込んだことで、効果的に仕事ができ、質の均一化含めて施工の時短に大きく貢献できた」とコメント。五ケ山ダムでの施工に限らず、今後も重機などの自動運転を推進していくとしている。

4つの対策目的、渇水だけでなく洪水も

 五ケ山ダムに寄せられる期待の大きさは、福岡の地理的要因にも起因する。たとえば、東京都では利根川水系や荒川水系、大阪市では淀川水系、名古屋市では庄内川水系など、日本の大都市では一級河川を有しているところが多い。だが、福岡市の場合は、流れ込む河川といえば二級河川の室見川、那珂川、多々良川などしかなく、そのため過去には何度も水不足に見舞われ、“渇水都市”とも揶揄されてきた。今でも一級河川の筑後川の筑後大堰を始め、周辺地域からの供給に頼っているのが現状だ。

 五ケ山ダムには大きく4つの対策目的がある。(1)「那珂川沿岸地域の水害への洪水調節」、(2)「日照り対策として既得取水の安定化と河川環境の保全」、(3)「水道水の確保」、(4)「異常渇水時の緊急補給」だ。そのなかには、福岡地区の悲願である水の安定供給による渇水対策だけでなく、洪水対策も盛り込まれている。小川知事のコメントにあるように、未曽有の大災害を引き起こした昨年7月の九州北部豪雨では、ダム上流の流木がダム湖にとどまることで、減災の威力を大いに発揮した。五ケ山ダムが位置する二級河川・那珂川では、09年7月の豪雨時に増水し、下流に位置する那珂川町の役場や公共施設などが浸水する被害も出たが、五ケ山ダムの完成により、今後はそうした水害も未然に防ぐことができるようになるだろう。

 40年のときを経てついに完成した県下最大のダムには、渇水対策だけでなく、さまざまな災害に対する“転ばぬ先の杖”としても大きな期待が寄せられている。【道山 憲一】

◆2018年3月12日 西日本新聞
 https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/400522/
ー五ケ山ダム竣工 県内最大貯水量4020万立方メートル 現地で式典 [福岡県]ー

  那珂川町五ケ山地区の那珂川上流で建設されていた県内最大貯水量の県営多目的ダム「五ケ山(ごかやま)ダム」が11日完成し、現地で竣工(しゅんこう)式があった。小川洋知事や地元首長、国会議員、県議、町議、元地権者ら関係者が完成を祝った。

 五ケ山ダムは重力式コンクリートダムで、ダム堤の高さ102・5メートル、長さ556メートル。総事業費1050億円。県営ダムは、今月完成したみやこ町の伊良原ダムに続いて17カ所目となる。

 1978年の福岡大渇水を契機に建設計画が持ち上がり、79年に予備調査を開始、88年度に国に事業採択された。洪水調節や水道用水の確保などを目的に、2012年にダム本体工事が始まった。

 ダム湖は佐賀県吉野ケ里町にもまたがり、総貯水量が4020万立方メートルでヤフオクドーム約22杯分。日向神ダム(2790万立方メートル)や19年度に完成予定の小石原川ダム(4千万立方メートル)を上回り、県内最大の貯水量となる。水力発電設備もあり、管理用の電力をまかなえるという。

 福岡市とその周辺自治体でつくる福岡地区水道企業団に1日最大1万立方メートルを提供できる。ただ、水を限界までためてダムの安全性を確認する「試験湛水(たんすい)」の作業が雨不足で完了しておらず、4月に予定していた供用開始には間に合わない見通しとなっている。

 式典では、音楽演奏に合わせて関係者がテープカットや渡り初めをした。小川知事は「この立派に完成したダムが治水はもちろん、渇水対策としても、福岡都市圏の安全安心な生活のために大きな役割を果たす」と話した。

◆2018年3月5日 西日本新聞
 https://www.nishinippon.co.jp/nnp/f_sougou/article/398825/
ー伊良原ダム半世紀かけ完成 みやこ町 [福岡県]ー

  みやこ町犀川下伊良原地区で建設されていた県営伊良原ダムが完成し、4日、現地で完成式があった。1961年の予備調査開始から半世紀以上の月日を経て稼働する。

 ダムは90年度に国が事業採択し、祓(はらい)川上流域の下伊良原地区に、洪水調節と水道水確保などを目的に建設着手。重力式コンクリートダムで、ダム堤の高さ81・3メートル、長さ339メートル。総貯水量は2870万立方メートルで、田川地区水道企業団(1市3町)と京築地区水道企業団(2市5町)に、水道用水(1日3万7千立方メートル)を配水する。総事業費は758億円。

 建設に伴う住民の集団移転や町外への移住は、2012年度に完了。現在、ダムは昨秋から18年度にかけて、水をためる試験湛(たん)水を実施中で、問題がなければ本格的に稼働する。

 みやこ伊良原学園(同町犀川上伊良原)で開かれた式典には、小川洋知事や井上幸春みやこ町長ら田川、京築地方の首長に加え、地元選出の国会議員、地権者ら計約200人が出席。小川知事は「ダムの完成は地域発展の役割を果たす。県は今後も社会基盤の整備に努める」とあいさつ。その後、関係者はダム堤に移動、テープカットなどを行った後、渡り初めをした。

 ダム周辺は橋や道路の整備が進み、サクラなどが植林された公園に加え、物産館やレストランを備えた施設も整備。みやこ町は18日にダム周辺の特設会場でダム完成記念イベント「ダムができたよ!ダム祭!!」を開く。