八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

「ほたるの里から長崎をかえよう‼千人の集い」(5/6)と石木ダム予定地

 5/6(今週日曜日)、石木ダム予定地を抱える長崎県川棚町で「ほたるの里から長崎をかえよう‼千人の集い」が開かれました。
(写真右=集会のリハーサル。地元住民の合唱とピアノによる「こうばるの歌」に合わせて登紀子さんがギターを弾いた。)

 長崎県が国の補助金で進めようとしている石木ダム事業。最初に発表されたのは半世紀前ですが、現地ではこの間、反対運動が粘り強く続いてきました。今も13世帯の住民は結束して石木ダムに反対しています。
 長崎県は昨年から道路の付替え工事を強行し、強制収用の脅しで住民を追い出そうとしています。抵抗をあきらめさせるための、ダム行政お決まりの手法です。
 石木ダム予定地域でも、かつてはダム問題に触れるのはタブーとされていたそうですが、住民運動が広く共感を呼び、長崎県の強権的な手法は今や多方面から非難を浴びています。今年は住民主役のドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」(山田英治監督、7/7東京・渋谷ユーロスペースで公開)の上映も始まり、住民支援の動きは全国に広がりつつあります。

 加藤登紀子さんをメインゲストに迎えた今回の集会は、石木ダム関連のイベントではこれまでで最も多い千人を超える聴衆が集まりました。
(写真右=「百万本のバラ」を唄った登紀子さんに地元の子どもたちが花束贈呈。)

 市民団体「石木川まもり隊」が集会の動画をYouTube にアップしています。

〇第一部 トーク:鎌仲ひとみ(映画監督)、山田英治(映画監督)
      

〇第二部シンポジウム:加藤登紀子(歌手)、今本博健(京都大学名誉教授・河川工学)、嘉田由紀子(前・滋賀県知事、元環境社会学会
会長)、渡辺洋子(八ッ場あしたの会事務局)
      

 〈集会では第二部の後に加藤登紀子さんによるミニコンサートがありました。)
 
〇フイナーレ:加藤登紀子と住民の皆さんら(”こうばるの歌”合唱、大会宣言など)
      
 
 集会の前日には現地見学会が開催されました。
 右の写真は最初の見学ポイント、川棚川が大村湾にそそぐ河口の風景です。ダム建設地を流れる石木川は川棚川の支流です。
 石木川が川棚川に合流する地点から河口までは、車でわずか10分ほどです。
 
 右の写真は、手前が石木川、奥を流れるのが川棚川です。
 石木ダムはこの合流地点から河口までという、ごく狭い区間の川棚川の洪水調節を建設目的の一つとしています。しかし、ダムによる治水は河川改修よりはるかに非効率です。
 石木ダムのもう一つの目的は、佐世保市への水道の供給です。しかし人口減少の時代、佐世保市では水需要が減少しており、現在確保している水源で十分足りています。
石木川まもり隊 「石木ダム問題とは」参照)
 住民からふるさとを奪い、豊かな自然と地域社会を破壊して石木ダムを建設する必要性はどこにもありません。

 右の写真は石木ダムの建設予定地です。県道の右手に、地元住民がダム事業者の侵入を監視するために建てた小屋がたち、その右手を石木川が流れています。

 石木川は子どもたちの格好の遊び場です。ここには絶滅危惧種の魚類も多いということです。川幅が狭く、小川と呼べるほどの流れですが、ダム計画によれば石木ダムのダム堤の高さは55メートル、幅は234メートルにもなります。
石木川まもり隊 「石木ダム問題とは」より)

 長崎県はダムができると県道が沈むからと、水没線より高い所に新たな県道(付替え県道)をつくる工事を進めています。
 ダムを建設するためには付替え道路を完成させなければなりませんので、住民たちはダム建設を阻止するために、県道沿いで工事車両を入れさせまいと見張ってきました。しかし、県は警戒が手薄な休日の早朝や深夜を狙って侵入。ついに昨年7月に重機を運び入れ、山を大規模に切り崩す工事を始めました。重機を通すための即席の工事用進入路が石木川を跨いで取り付けられています。(右写真)

 住民の方々がこれまでの経緯、反対運動の現状を現場で説明して下さいました。
 滋賀県知事として淀川水系のダム問題に取組んだ嘉田由紀子さんは、大阪府や京都府の知事も巻き込んで、6つのダムを止めたそうです。 
 詩人のアーサー・ビナードさんも現地見学会と交流会に参加されました。

 周辺では付け替え道路の工事が始まり、毎日住民と支援者による重機の周りでの座り込みなどの抗議行動が行われていますが、水没予定地の景観は変わっていません。(2015年に現地を訪ねた時の写真をこちらのページに掲載。)

 石木川を遡ってゆくと、水没予定地の先に全国棚田百選に選ばれた「日向の棚田」の景観が広がってきます。(写真右)
 〈参考〉川棚町観光協会公式サイト 日向の棚田

 関東地方では利根川水系のダムは、海から遠い山間部につくられますが、ここでは山も海もとても近くにあります。
 行政は周辺地域と「こうばる」地区を税金の配分によって分断し、水没住民を孤立させようと画策してきたそうですが、現地を見ると、「こうばる」地区は海と山を繋ぐ里山として、この地域になくてはならない要の集落であることがわかります。

 この日は「こどもの日」でした。「こうばる」の子どもたちと加藤登紀子さん、嘉田由紀子さん。「こうばるの歌」の歌詞看板を背に。

 現地見学会の終了後、公民館で交流会が開かれました。
 公民館が古くなっても、どうせ水没するからと、町からはお金を出してもらえず、住民の皆さんはクラウドファウンディングで屋根を補修する資金を集めました。

 今本博健・京都大学名誉教授が乾杯の挨拶。
 今本先生は河川行政の改革を目指した淀川水系流域委員会の委員長を務めた河川工学者です。石木ダム予定地を幾度も訪ね、石木ダムが役に立たないダムであることを科学的に解明してこられました。

 山菜やしし汁、昆布巻き、煮豆、ちまき、大村寿司・・・心のこもった手料理を用意してくれたのは、「こうばる」のお母さんたちです。
 他のダム予定地では、ダムの会議に出席するのは大抵、世帯主の男性です。八ッ場ダム予定地の川原湯地区では、世帯主さえも全員参加できず、ダムの役員のみで会議が行われています。しかし、「こうばる」では男女問わず会議には全員が参加できるそうです。
 殆どのダム予定地で、住民がダム行政の圧迫に疲れ果て、力を失っていく中で、石木ダム予定地の住民が頑張ってこられたのは、女性たちのパワーが最大限生かされているからかもしれません。
 お母さんたちと仲良く写真に納まっている右の若い男性は、住民を主人公にしたドキュメンタリー映画「ほたるの川のまもりびと」の山田監督です。

 交流会の最後は、「こうばるの歌」の合唱で締め括られました。指揮も歌も女性が主導。
 合唱を聞いて感動した登紀子さんの提案で、翌日の集会のフィナーレでこの歌を歌うことになりました。

★地元の住民や市民団体の皆さんの発信です。
 ・水没予定地区の川原(こうばる)地区住民、石丸穂澄のブログ 「5/6・千人集会を振り返って」
 ・石木川まもり隊ブログ 「こうばるに登紀子さんがやってきた!」
             「1000人が集い、石木ダムにレッドカード!」
 

★関連記事をこちらのページにまとめています。
 https://yamba-net.org/wp/41745/