事業凍結の大戸川ダム 知事と住民が意見交換会

 かつて、関西の淀川流域では、関東の利根川流域よりはるかにダム行政見直しの機運が盛り上がっていました。
 1997年の河川法改正後、建設省(2001年より国交省)近畿地方整備局が改正河川法が新たに打ち出した河川行政への「住民参加」を進める「淀川方式」を採用したからです。淀川水系の水源である滋賀県では、環境社会学者の嘉田由紀子氏が知事となり、下流の京都府、大阪府の知事らと連携してダム事業の見直しを進めました。

 しかし、国交省ではこれまでのダム行政を守ろうとする動きが強まり、皮肉なことに八ッ場ダム等の見直しを掲げた民主党政権発足後、守旧派による巻き返しは決定的になりました。
 現在、淀川水系で注目されているのが、嘉田知事らの働きかけによって凍結された大戸川ダムの行方です。国交省は大戸川ダムを凍結したものの、2009年に策定した淀川水系河川整備計画には大戸川ダム計画を位置づけ、大戸川ダム事業再開の布石を打っていました。大戸川ダムをめぐる経緯については、嘉田氏の著書「知事は何ができるのか」(風媒社、2012年)に詳しく書かれています。
(風媒社サイトより「知事は何ができるのか」目次より
 http://www.fubaisha.com/search.cgi?mode=close_up&isbn=1094-5

 滋賀県では嘉田県政二期8年の後、民主党政権で国土交通政務官を務めた三日月大造氏が2014年、知事に就任。三日月知事は来月の知事選で自民党の支援を受けるため、嘉田県政の方針継続を撤回する姿勢を滲ませています。
 昨日16日、三日月知事が大戸川ダム予定地の現地視察を行い、地元住民と意見交換を行ったと報道されています。報道にある地元の「ダム対策協議会」は、ダム事業を推進することを前提として設置された住民組織です。
 「意見交換会」はこれまでの方針を撤回するための儀式のようなものです。民主党政権が発足した2009年、前原大臣が国交省の案内で八ッ場ダム予定地を訪れ、地元の八ッ場ダム対策委員会の役員らの意見を聴いた光景が思い出されます。

◆2018年5月16日 京都新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-00000038-kyt-l25
ー大戸川ダム、住民「進めて」 初現地視察の滋賀県知事に訴えー

 滋賀県の三日月大造知事が16日、国が本体工事を凍結している大戸川ダム(大津市上田上桐生町)の現地視察に初めて訪れ、流域住民と意見交換した。早期着工を求める住民らは「建設の結論に至ることを心から願っている。スピード感を持って前に進めてほしい」と、ダムの必要性を検討する県の勉強会に期待を寄せた。

 同市上田上支所で開かれた意見交換には、大戸川ダム対策協議会メンバーら約20人が出席。三日月知事は「長年にわたりダム問題で多大な負担と心配をかけてきた」と陳謝し、30日の勉強会開催を報告した。
 住民からは、計画を巡り二転三転してきた行政への不満や近年の豪雨災害に対する不安の声が相次いだ。「知事がやっとダム問題に目覚めた。夢で終わらないようお願いしたい」、「もうこれ以上待てない」と改めて早期着工を訴えた。
 三日月知事は「連綿と続く地域の思いを、国や下流府県に伝える責任を果たしたい」と述べ、勉強会の結論を急ぐ考えを示した。

 事業開始から丸50年を迎え、協議会の山元和彦会長(74)は「流域では毎年のように大雨で避難勧告が出ている。国と県は腹をくくってほしい」と話した。
 これに先立ち三日月知事は、大戸川から約40メートル上方の山肌で建設が進む付け替え県道大津信楽線の現場を視察。ダム本体の計画概要や、整備区間の約9割が完了した県道工事について、国土交通省大戸川ダム工事事務所から説明を受けた。
 県は2010年度から大戸川下流域で、ダム建設を前提に100年に1度の洪水に対応できる改修を進めており、延長約4・5キロの約7割が整備されている。

<大戸川ダム> 大津市南部の大戸川に計画され、2009年3月策定の淀川水系河川整備計画で、当初の多目的ダムから洪水調節専用の穴あきダムに変更された。堤高67メートル、総貯水容量2210万立方メートル。滋賀や京都など4府県知事が建設「凍結」を求めた08年11月の知事合意を受け、本体工事は中上流部の河川改修状況や影響を検証しながら「実施時期を検討する」とされている。

◆2018年5月16日 関西テレビ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180516-2001
ー事業凍結の大戸川ダム 知事と住民が意見交換会ー

 滋賀県など4つの府県の知事が反対し、10年前に建設が凍結した大津市の大戸川ダムについて、事業再開に向け検討を進める現職の県知事が住民との意見交換を行いました。

【地元の住民】
「決してダムが夢で終わらないように、一日も早く着工して欲しい」

 滋賀県の三日月大造知事と住民の意見交換会。課題は、長年にわたり建設が凍結されてきた大戸川ダムです。

【滋賀県 三日月知事】
「半世紀にわたり皆様には関わって頂いているんですが、それゆえにスピード感を持ってやりたい」

 大津市の大戸川ダムは、国が50年前に総事業費1080億円で建設を計画。
 国は2005年に一旦事業を凍結したものの、2007年には治水目的のダムとして再び建設に方向転換します。

 しかし、その翌年には滋賀県の嘉田前知事など、大阪・京都・三重の4府県の知事が「緊急性が低い」として、多額の負担金への懸念などを理由に建設に反対する共同意見を表明。

ダム事業は2009年に再び凍結されました。

【ダム建設予定地から移転した住民】
「涙を飲んでここに来たわけやから複雑な気持ち」

 しかし、国はおととし、治水対策のためにはダムを建設する方が河川改修などと比べ「コストが抑えられ有効」と結論付け、滋賀県の三日月知事などはこの結論を概ね容認します。
 滋賀県の県議会も、相次ぐ大雨被害を受け、去年12月にダムの早期建設と4知事の合意撤回を求める決議を可決。
 三日月知事は治水の専門家を招きダムの効果や影響を検証する勉強会を、今月30日から始めるとしています。しかし、検証結果をまとめる時期は決まっていません。
 16日の意見交換会では、ダム建設のために住み慣れた土地を離れた住民たちから早期着工を求める声が相次ぎました。

【地元の住民】
「地域のみなさんは家まで土地まで変わって、協力していただいている」
「人が変われば政策も変わるというのをずっと経験した。(また)そういうことにならないように、切にお願いします」

 三日月知事は今後の勉強会での検証結果を、「国や大戸川下流の府県に滋賀県の事情を説明する材料にしたい」としています。