建設省OB、東京新聞に投書「倉敷の堤防決壊は人災」

 昨日の東京新聞に建設省土木研究所で次長を務めた、石崎勝義さんの投書が掲載されました。
 八ッ場ダムを始めとする巨大ダム建設を最優先する現在の河川行政について、真っ向から対立する見解を述べておられます。西日本豪雨の後、国土交通省からは河川の氾濫に際して、自治体の避難指示のあり方や、避難しなかった被災者の問題を指摘する見解ばかりが公表され、多くの報道も河川管理者の責任回避のための見解をそのまま流すケースが多々見られます。
 石崎さんの声がより多くの人々に伝わり、この国の河川行政が利権優先の現在の方針を一刻も早く改め、命を守る本来の防災に舵を切らなければ、水害の悲劇はこれからも繰り返されます。

 全文を転載します。

◆2018年7月30日 東京新聞投書欄
ー倉敷の堤防決壊は人災ー

         元建設省土木研究所次長
         石崎勝義 79 (茨城県つくばみらい市)

 岡山県倉敷市真備町を流れる小田川の堤防が決壊し、五十人以上も亡くなった。原因としてダムの放流、高梁川の増水で小田川が流れにくくなる「バックウオーター現象」、避難指示の遅れなどが指摘されている。私は決壊の危険がある堤防を放置してきた河川管理者に一義的な責任があると思う。

 堤防は原則、土でできている。洪水で越水が始まれば、堤体は容易に侵食され、決壊に至る。大量のエネルギーを持った水が奔流のように流れ出る。人も家も流され避難は容易ではない。しかし国は決壊を防ぐ技術を保有している。

 三十年ほど前、堤体の人家側斜面(裏のり)をシートなどで保護することにより、短時間の越水に耐えられるようにする堤防強化の工法(アーマー・レビー)が開発された。二〇〇〇年からは壊滅的な水害を防ぐ方法として堤防強化が全国に実施され始めた。しかし、ダム建設の妨げになると思ったOBの横やりで事業は中止され決壊の危険は放置されている。

 最近は異常な降雨が頻発する。急流の多いわが国の場合、ダムの貯水容量はもともと大きくなく、洪水のピーク前にしばしば満杯になる。ダムに頼るより堤防強化の方が確実だ。決壊しなければ、越水による氾濫は水量が少なく、浸水の範囲や深さは限定される。ほとんどの場合、二階に上がる垂直避難で間に合うと思う。

 堤防強化の経費は小さい。効果が限定的なダムとスーパー堤防建設を中止し、その費用で堤防を強化すれば、十年程度で全国の主要な堤防の危険はなくなると思う。治水当局に再考を求めたい。

—転載終わり—

 石崎さんがお住まいの茨城県が被災地となった、2015年9月台風による鬼怒川水害について解説した内容を以下のページに掲載しています。東京新聞の投書で述べておられる堤防強化工法についても詳しく説明しておられます。

「鬼怒川の堤防決壊はなぜ起きたのか」(石崎勝義氏による緊急報告)
 https://yamba-net.org/14141/