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7月の愛媛豪雨災害、 国、肱川治水に290億円 

 国土交通省は9月7日、7月の西日本豪雨で水害が発生した愛媛県の肱川について、緊急対策工事を行うことを発表しました。同省は7日、岡山県の小田川についても同様の発表を行っています。

◆国土交通省ホームページ、記者発表より転載http://www.mlit.go.jp/report/press/mizukokudo05_hh_000060.html
<平成30年7月豪雨関連>
小田川等及び肱川で緊急的な治水対策を進めます
~平成30年7月豪雨により甚大な被害を受けた小田川等及び肱川で緊急的な治水対策を実施~

<肱川水系肱川 「肱川緊急治水対策」>
〇全体事業費 約290 億円    
 ※概ね5年で実施する河道整備に係る事業費
〇ポイント
・国と県が連携し、緊急的対応を含めた3段階の対応を図ることとし、予備費の使用により、激特事業等に着手します。
[1] 緊急的対応
予備費の使用による河道掘削及び樹木撤去、野村ダム・鹿野川ダムの切迫感が伝わる放流警報の試行等に着手(平成30 年8 月3 日発表)しており、それに加えて、今年度末に完成する鹿野川ダム改造によって可能となる野村ダム・鹿野川ダムの操作規則の変更を実施します。
[2] 概ね5年後
緊急的に実施する河川激甚災害対策特別緊急事業により肱川中下流部において築堤や暫定堤防の嵩上げ等を整備し、それによって可能となる野村ダム・鹿野川ダムの操作規則の変更を実施します。さらに、野村ダム下流においては掘削などの対策を実施します。
[3] 概ね10年後
更なる河川整備等を推進するとともに、山鳥坂ダムの整備を実施します。
http://www.mlit.go.jp/common/001253042.pdf

~~~~~転載終わり~~~~~

 7月7日の豪雨により、国交省四国地方整備局が管理する肱川の野村ダムと鹿野川ダムは、早朝に大量の緊急放流を実施しました。肱川の氾濫では8名の犠牲者が出ています。
 記者発表(プレスリリース)によれば、国交省は野村ダムと鹿野川ダムの緊急放流で、ダムの限界と危険性が明らかになったにもかかわらず、同じ肱川水系で進行中の山鳥坂ダム建設事業を推進することを明らかにしています。
 山鳥坂ダムは鹿野川ダム直下の肱川に合流する河辺川の最下流に建設されるダムですが、西日本豪雨の時、もし山鳥坂ダムが完成していれば、野村ダム、鹿野川ダムだけでなく、山鳥坂ダムも緊急放流を行い、その結果、下流の大洲市の氾濫は一層深刻なものになったと考えられます。
 国土交通省は今回の事態を何ら反省することなく、ダム偏重の河川行政を続けようとしています。

 関連記事を転載します。

◆2018年9月8日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201809080029
ー愛媛豪雨災害 国、肱川治水に290億円 堤防や河道整備ー

【ダム操作規則も変更】

 国土交通省は7日、西日本豪雨で氾濫し流域に甚大な被害を出した愛媛県の肱川や肱川水系の河川で、ハード、ソフト両面の緊急治水対策を行うと発表した。計17.6キロの堤防整備や河道整備による集中的な治水機能強化などに2023年度までの5年間で計約290億円を投じる。野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)の操作規則も変更する。

 国と県が連携し、緊急対応▽おおむね5年後▽同10年後−の3段階で実行。

 緊急対応では、樹木伐採や河道掘削、両ダムの「切迫感が伝わる放流警報」試行に加え、18年度末に改造が完了する鹿野川ダムの容量増加を活用し、両ダムの操作規則を変更する。

 5年間では、河川激甚災害対策特別緊急事業として、中下流部で最大約6.2メートル築堤し、暫定堤防を約3.6メートルかさ上げ。野村ダム下流で河道を掘削する。こうした事業で流下能力を向上させ、ダムへの流入量が多くない段階でも多くの量を放流できるよう、両ダムの操作規則を変更する。緊急対応段階と合わせ変更の詳細は検討中としている。

 10年間では、西日本豪雨時と同規模の洪水でも安全に流下できるよう、26年度までに山鳥坂ダム(大洲市)を完成させ、さらなる河川整備を進める。

 このほか県と流域5市町でつくる「肱川大規模氾濫に関する減災対策協議会」で、関係機関が連携しソフト面の対策を講じる。

 石井啓一国交相は7日の閣議後会見で「関係府省や自治体と連携しながら被災地の生活と生業(なりわい)再建に全力で取り組む」と述べた。

 大洲市は「豪雨災害以降、要望していた内容なので大変ありがたく思う。計画期間内の早期に河川整備が出来上がるのを望んでおり、できる限りの協力をしたい」とコメントした。

 西予市は河道掘削に加え、豪雨時の対応や操作規則の検証を関係機関に要望するとし「同じことが二度と起きないよう操作規則見直しも含め抜本的対策を求める。国が設置した検証の場で、市の考えをしっかり述べ議論したい」とした。

 西日本豪雨では、両ダムの最大放流量が安全とされる放流量の約6倍に達し、肱川が氾濫。西予、大洲両市で計8人が死亡した。

◆2018年9月8日 読売新聞
https://www.yomiuri.co.jp/local/ehime/news/20180908-OYTNT50020.html
ー大洲肱川 緊急治水対策へー 

 ◇国交省と県

 西日本豪雨で肱川が氾濫し、大規模な浸水被害が起きたことを受け、国土交通省と県は7日、肱川の緊急治水対策を実施すると発表した。河道の掘削や堤防の増強工事を集中的に行い、肱川が西日本豪雨レベルの雨にも耐えられるように整備する。

 7月の豪雨の際、肱川水系の野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)では貯水量が満杯に近づいたため、緊急放流が行われたが、その後、下流域で氾濫し、西予市野村町で5人、大洲市で3人が死亡した。

 緊急対策では、速やかに河道掘削や流木の撤去などを進める一方、今後5年間で堤防の新設や補強にあたる。野村、鹿野川両ダムの操作規則の変更を行うほか、10年以内に山鳥坂やまとさかダムを完成させる計画という。また、洪水による被害を最小限に抑えるため、国や県、流域市町の連携を強化する。

 河川整備にかかる総事業費は約290億円。国交省四国地方整備局の前田裕太・河川計画課長は「甚大な被害を受け、治水事業で安全性を高めたい」と話した。

◆2018年9月15日 朝日新聞愛媛版
https://digital.asahi.com/articles/ASL9C5H7GL9CPFIB00C.html?iref=pc_ss_date
ー愛媛)国と県が肱川整備を前倒し 西日本豪雨規模に対応ー

 国土交通省四国地方整備局と県は、西日本豪雨で氾濫(はんらん)して大きな被害を出した肱川の緊急治水対策を発表した。事業費は約290億円。西日本豪雨と同じ規模の雨量でも越水しないよう、5年程度で堤防整備や河道掘削などを完了させるとしている。

 肱川をめぐっては整備局と県が04年、約30年間で堤防整備を完了させるなどとする「肱川水系河川整備計画」を決定している。この整備計画では、戦後最大とされていた1945年9月洪水とピーク流量が同規模の洪水を安全に流下させることを目標としていたが、西日本豪雨の規模は45年洪水の規模を上回った。そのため、計画の一部を前倒して実施し、さらに上回る対策を取ることにした。

 緊急対策では、まず今年度中の対応として、流下能力を上げるために川沿いの樹木伐採や河道掘削などを実施。さらに大洲市の白滝、豊中、八多喜、伊州子、春賀、東大洲、阿蔵の計7地区では、完成した堤防より低い「暫定堤防」を70センチ程度かさ上げする。2004、05、11年の台風による洪水と同規模の洪水に対応できるという。

 また、06年度から進めていた鹿野川ダムの容量拡大の工事が今年度中に完了するため、来年度から野村ダムも含めた両ダムの操作規則を変更する予定。

 23年度をめどに、さらに堤防の整備を進め、西日本豪雨規模の洪水が越水しないようにする。豪雨で大きな被害が出た菅田地区などで新たに堤防をつくるほか、東大洲地区より下流の暫定堤防をさらにかさ上げし、完成堤防にする。(大川洋輔)