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秋田県の雄物川で国交省、成瀬ダム本体工事着手

 国土交通省が秋田県を流れる雄物川の最上流に計画している成瀬ダム。本体工事着工式が9月15日に開かれました。
 
 成瀬ダムの建設地は、映画「釣りキチ三平」のロケ地にもなった、自然豊かなところです。成瀬ダムの集水面積は雄物川の流域面積のわずか1.4%しかありませんので、雄物川に対する治水効果は殆どありません。一方で、雄物川は河道整備がひどく遅れていて、2017年7月と8月に氾濫がありました。ダム偏重の河川行政の弊害は、雄物川でも明らかです。

◆写真右=国土交通省東北地方整備局 成瀬ダム工事事務所ホームページより「工事進捗情報」2018年6月15日撮影
http://www.thr.mlit.go.jp/narusedam/

◆「成瀬ダムをストップさせる会」ホームページ-成瀬ダムは本当に必要ですか?
http://www.stop-narusedam.jp/

◆2018年9月16日 河北新報
http://urx2.nu/M0zY
ー成瀬ダム本体着工 秋田・東成瀬ー

 2024年度完成予定の国直轄の多目的ダム「成瀬ダム」の本体工事着工式が15日、秋田県東成瀬村の建設地であった。地元関係者や自治体幹部、建設会社の担当者ら約300人が出席し、工事の安全を祈った。

 佐竹敬久知事が「待ちに待った本体工事の着工で、心よりうれしく思う」とあいさつ。国土交通省の井上智夫治水課長は「完成に向け、引き続き関係者に協力をお願いする」と述べた。

 1983年に実施計画の調査を始めた成瀬ダムは農業、生活用水の確保や治水、発電が目的。砂利とセメントを混合して固める「台形CSG」のダムとして高さ115メートルは国内最大。総事業費は約1530億円。付け替え道路や仮排水トンネルが既に使われている。

◆2018年8月15日 秋田放送
http://www.news24.jp/nnn/news86114108.html
ー成瀬ダム 本体工事の着工式ー

 総事業費1530億円をかけ国が東成瀬村に建設する成瀬ダムの本体工事が始まることになり、着工式が行われました。
 成瀬ダムの本体工事着工式には、佐竹知事や県選出の国会議員のほか、用地提供者を含む東成瀬村の関係者などおよそ300人が出席しました。成瀬ダムは、雄物川流域への農業用水や生活用水の供給のほか、貯水による洪水の防止などを目的に1973年に県が予備調査を始めました。その後、1991年に国の事業になり、1997年からはダム本体の建設に向けた国道の付け替え工事などが行われてきました。順調に工事が進めば2023年の秋から貯水を始め、2024年度に運用を開始する予定です。

===記事転載終わり===

 今年5月17日の衆議院の委員会質疑で、大河原雅子衆議院議員が成瀬ダム問題を追及しました。雄物川の治水対策と成瀬ダムの問題が浮き彫りになった質疑ですので、以下に転載します。

◆第196回国会 衆議院決算行政監視委員会 第2号(平成30年5月17日(木曜日))
第2号 平成30年5月17日(木曜日)

○大河原雅子委員  次に伺いたいのは、秋田県の雄物川のことです。

 秋田県の一級河川、雄物川の上流には、成瀬ダムの建設が進められています。

 ここも、私、行かせていただきました。御存じの方、あるかと思いますが、「釣りキチ三平」という漫画がありますが、本当に美しい川がこの成瀬川なんですね。こんなところにダムをつくるのかなと思うような場所です。普通、ダムというのは、切り立ったV字のところをぱっとせきとめてダムができるイメージなんですけれども、そうじゃないんですよね。

 この成瀬ダムの問題にも疑問を感じてまいりましたけれども、今年度、このダムは本体の堤体工事が始まるというふうにされております。成瀬ダムは雄物川の最上流に建設されるもので、洪水調節を行っても雄物川の氾濫防止に役立つとは思えません。

 成瀬ダムの集水面積と雄物川の流域面積をお示しください。そして、それはどのぐらいの割合になるのかも含めてお答えください。

○山田政府参考人(水管理・国土保全局長) お答えをいたします。

 成瀬ダムは、秋田県雄勝郡東成瀬村に建設されます多目的ダムでございまして、ダム検証におきまして、ダムを含む案とダムを含まない案との比較、評価等を行って、ダム事業の継続が妥当と判断をして、実施しているダムでございます。

 成瀬ダムは、治水効果といたしまして、ダム直下で約九割の流量を減少させるだけではなく、基準地点であります椿川におきましても流量を低減するなど、全川にわたり効果を発揮するものでございます。

 成瀬ダムの集水面積は六十八平方キロメートルであり、雄物川の流域面積の四千七百十平方キロメートルに対し、その比率は一・四%でございますけれども、玉川ダムなどの他のダムや河川改修の効果と相まって治水安全度の向上に大きく寄与するものと考えており、特に、平成二十九年七月の洪水に対しては、雄物川上流に建設済みの玉川ダム等の効果によりまして、ダムがなければ約六十戸の浸水が見込まれる被害を解消したほか、下流部の水位を低減させるなど、被害軽減に大きく寄与しており、ダムによる治水効果は大きいものと考えているところでございます。

○大河原委員 集水面積を比べると、流域の一・四%ですね。

 今、効果はあるんだというふうにおっしゃいましたけれども、ここにダムを建てる、つくるという意味では、その周辺のすばらしい自然を壊してダムに沈めるというところもありますので、そこも私は極めて問題だと思ってきました。

 この雄物川も河川改修が極めておくれているというふうに聞いています。雄物川で、河川改修にどの程度の予算が使われてきたのか、最近十年間の予算額をお示しいただき、そして同時に、同じように、成瀬ダム建設事業の予算額と比べてみたいと思います。どのぐらいの割合になっているでしょうか。

○山田政府参考人 お答えをいたします。

 雄物川の整備に当たりましても、鬼怒川と同様に、予算制約がある中で、堤防の整備や補強、河道の掘削といったものと、ダムの整備など、さまざまな治水手段を河川の特性や流域の状況に応じて講じてきているところでございます。

 雄物川の河川改修の予算額は、平成二十年度から平成二十九年度までの十年間で、約四百三十六億円でございます。同期間における成瀬ダム建設事業の予算額は、利水者の負担も含めまして約二百九十六億円でございまして、雄物川の河川改修費は、利水者の負担額を含めた成瀬ダム建設事業費の一四七%となってございます。

○大河原委員 雄物川では、昨年になりますね、二〇一七年の七月下旬と八月の下旬に大きな氾濫がありました。これは、雄物川の中下流域において流下能力が極めて低い状況があって、それが長年放置されてきたことによるものだと思います。

 これも、起こるべくして起こってしまったんじゃないか、そういう氾濫であるというふうに思うわけですが、雄物川の中流部及び下流部における昨年時点での堤防整備率、これはどうなっていたでしょうか。

 そしてまた、河川整備計画をつくるときの計画高水流量に対して流下能力が確保されている区間、この割合は中流、下流部についてどのようになっているのか、これについても伺いたいと思います。

○山田政府参考人 お答えをいたします。

 雄物川の整備につきましては、その延長が長いこともございまして、沿川に秋田市を始め横手市や湯沢市などの市街地を抱える区間があります。これらの人口や資産状況等を考慮し、順次進める必要があるということ、二つ目に、上下流の流下能力のバランスを考慮する必要があるということ、三つ目に、堤防用地を取得する際に制約があるということ、これらの条件のもとで、なるべく効率的に改修が進むよう、例えば輪中堤などの手法をとりながら進めてきたところでございます。

 雄物川の中流部及び下流部の完成堤防の整備率についてでございますが、平成二十八年三月末時点におきまして、河口から椿川地点までの下流部区間約十三キロメートルでは約八九%、椿川地点から皆瀬川合流点までの中流部区間約八十三キロメートルでは約五一%となっております。

 次に、雄物川の中流部及び下流部における計画高水流量に対して達成することとなっている流下能力が確保されている区間の割合でございますけれども、平成二十八年三月末時点におきまして、河口から椿川地点までの下流部区間約十三キロメートルでは約七七%、椿川地点から皆瀬川合流点までの中流部区間約八十三キロでは約六〇%となっているところでございます。

○大河原委員 脆弱な部分に水が来たときのことというのはもう想像にかたくないわけで、河川整備計画をつくる段階でも、私は、もうダムの効用というのは限度が見えてきてしまっていると。洪水調節というところは本当に、長年、ダム偏重で日本の河川行政が行われてきたというふうに思います。

 どうでしょうか、ダムの限界というのをどのようにお考えでしょうか。

○山田政府参考人 お答えをいたします。

 先ほど申しましたように、治水事業の実施に当たりましては、堤防と河道の掘削とダムや遊水地の整備というさまざまな治水手段をそれぞれの河川の特性や流域の状況に応じて講じていかなければいけないというふうに考えているところでございます。

 河川改修やダム建設についても、それぞれ予算や用地取得上の制約がある中で計画的に進めているところでございますけれども、引き続き、河川改修とダム建設の双方の適切な役割分担のもと、着実に治水事業を進めていくことが重要であると考えているところでございます。