西日本豪雨では、ダムの緊急放流が各地で水害を拡大させました。
広島県呉市の野呂川ダムでは、規則に反して、流入量を上回る放流を行った時間帯があり、ダムを管理する広島県は、8月2日にこれを発表し、9月15日に第一回有識者会議を開催しました。
●広島県ホームページより
平成 30 年7月豪雨災害を踏まえた今後の水害・土砂災害対策のあり方検討会
第1回 河川・ダム部会の開催について
右写真=広島県ホームページ「野呂川ダム」より
ダムは規則では満水になった後は流入量をそのまま放流し、危機的状況が過ぎた後、ダムに貯めた水を放流して貯水量を減らしていくことになっています。しかし、野呂川ダムは7月の西日本豪雨の際、流入量がまだ大きい段階で貯水量を減らす放流も行ったため、放流量が流入量を大きく上回る流量が放流されました。野呂川の下流で氾濫がありましたが、この規則違反の放流が下流の氾濫を引き起こした可能性があります
情報公開請求で野呂川ダムのデータを入手できましたので、流入量と放流量のグラフ、貯水量のグラフを作成しました。当時、ダムが満水になったので、慌てて貯水量を減らす放流を行ってしまった様子を読み取ることができます。(グラフ作成:嶋津暉之)
◆野呂川ダムの流入量と放流量のグラフ
◆野呂川ダムの貯水量のグラフ
関連記事を転載しました。
◆2018年9月15日 中国放送
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180915-00189400-rccv-l34
ー西日本豪雨 ダムを議論ー
7月の西日本豪雨をうけて、今後の災害対応を考えるため県が設置した検討会で、河川やダムについて議論する部会が初めて開かれました。
部会には大学教授や国交省の研究者などが出席。
県の担当者から、3つのダムについての当時の操作状況や下流域の浸水状況のほか、5つの河川の被災状況などが説明されました。
このうち、下流の安浦町で浸水被害が発生した呉市の野呂川ダムでは、7月6日の夜以降、緊急放流した際、規定に反して流入量を上回る量の放水をした時間帯がありました。
担当者からは道路の寸断で5人の職員がたどり着けず2人態勢での操作となったうえ、防災無線以外の情報収集手段が使えなくなった状況が時系列で詳しく示されました。
(広島大学 河原能久教授)
「野呂川ダムは、流木を止める、土砂を下流に流さないという意味で、大きい役割を果たしたと思う」
「今回は流量を規定より放った時期がある。それで氾濫がどのくらい広がったか、時期が早まったか、検証する必要がある」
部会では今後、野呂川ダム下流の河川が氾濫したメカニズムを解明することにしています。
◆2018年9月15日 TSSテレビ
http://www.tss-tv.co.jp/tssnews/000002147.html
ー広島県が豪雨災害を受け有識者会議を開くー
会議では呉市の野呂川ダムで規定量を超える緊急放流が起きた問題などが話し合われ、県の担当者が追加招集した5人の職員が土砂崩れで管理事務所に到着できず、2人で対応に追われていたことを明らかにしました。
これに対し委員からは気象情報などで予測しもっと早く職員を招集できたのではといった意見が出されました。
【河原能久部会長】「今回の場合は流量を規定よりも放った時期があるということが問題でそれに応じて氾濫がどのくらい広がったかとか時期が早まったかとかそういう点については検証する必要がある」
県は今後マニュアル通りの放流を行っていた場合のダム下流域の浸水状況を提示するとしています。
◆2018年9月16日 中国新聞
http://urx2.nu/M0JY
ー【西日本豪雨】過剰放流、土砂が原因か 呉・野呂川ダム、計算誤差招くー
西日本豪雨で初めて緊急放流し、下流で浸水被害が出た野呂川ダム(呉市)について、管理する広島県は15日、周辺の土砂災害でダムに13万立方メートルの土砂が流れ込んだとの分析結果を明らかにした。今回の緊急放流では、下流に流す水量がダムに流れ込む量よりも多いルール外の運用があったと判明している。報告を受けた専門家は「土砂がルール外の運用につながった可能性がある」とみている。
県は分析結果を同日、県の災害対応をチェックする有識者検討会の河川・ダム部会が広島市中区で開いた会合で説明した。ダム内にたまった13万立方メートルは、ダムが洪水を調節する容量105万立方メートルの12・4%に当たる。ダム周辺を空から測量した結果、ダムの斜面や上流で土砂災害が多発し、15万5千立方メートルの土砂が流れ出したと推計した。
緊急放流は、大雨でダムが満水になる恐れがある場合の対応で、水の流入量と同じ量を下流へ流す。野呂川ダムでは7月6日午後11時50分から約10時間半、実施。7日午前0時10分~4時10分と6時10分~10時24分の計約8時間、放流量が流入量を上回っていた。
部会長を務める広島大大学院の河原能久教授(河川工学)は会合後、中国新聞の取材に「土砂の流れ込みで、事前に定めていた水の流入量を割り出す計算式が実態に合わなくなった。その結果、ルールを上回る放流につながった可能性がある」と指摘する。部会はさらに、土砂とルール外の運用の関係を検証する。
県などによるとダムの下流域では、野呂川と支流の中畑川の氾濫で58・1ヘクタールが水に漬かり、住宅約760戸で被害が出た。