長野原東中学の桜の移植とやんば一万本桜プロジェクト

 八ッ場ダムの水没予定地にあった長野原東中学校は、2007年に背後に造成された代替地へ移転しました。校舎の解体と共に、校庭で親しまれてきた8本の桜も伐採される予定だったのですが、一本だけ残して前橋の公園に移植することになったと、新聞が伝えています。

 ニュースでは桜が伐採を免れた美談として取り上げられている話題ですが、地元の一般住民の間ではあまり評判がよくありません。前橋のフラワーパークは同じ県内ではありますが、長野原東中学校の所在地から何十キロも離れており、なじみのある土地ではありません。どうせ桜を移植するのであれば、目の前の代替地へ移転した同じ中学校の校庭に移植してほしかった、1本だけでなく8本すべて残してほしかった、という声を聞きます。(写真右=長野原東中学校 2007年7月18日撮影)
 水没予定地の人口減少に伴い、長野原東中学校の全校生徒数も80人足らずに減少しています。代替地の広い校庭には、桜を植えるスペースはいくらでもありそうですが、移植費用はフラワーパークへ移植という特別な条件がなければ生み出せなかったのでしょうか? 

 国交省八ッ場ダム工事事務所はダム完成後、ダム貯水湖をさくらの名所にするため、「やんば一万本桜プロジェクト」をPRしています。ダム堤のコンクリート打設が進み、毎日多くの観光客が訪れる本体工事見学会でこのプロジェクトの宣伝が行われ、プロジェクト発足の経緯を知らない見学会の参加者は、ダムの犠牲になってきた地元への寄付のつもりでカンパをするので、募金は予想以上に沢山集まっているそうですが、代替地では土壌や地盤が不向きなのか、桜が枯れることがよくあるそうです。
 
◆国土交通省八ッ場ダム工事事務所 やんば桜一万本プロジェクト
 http://www.ktr.mlit.go.jp/yanba/yanba_sakura01.html

◆2018年9月29日 上毛新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20180929-00010000-jomo-l10
ー校庭のサクラ 新天地へ 八ツ場水没地 伐採を回避ー

 八ツ場ダムの建設で伐採される予定だった群馬県・旧長野原東中校庭のソメイヨシノが、前橋市のカネコ種苗ぐんまフラワーパークに移植されることになった。水没地域の歴史や卒業生らの思い出をサクラに託して残そうと、県樹木診断協会(石橋照夫会長)や工事関係者、地元住民らが連携した。移植は来年1〜2月の予定。半世紀余り地域を見つめてきたサクラは、新天地で第二の人生を送る。

前橋・フラワーパークに移植 住民、思い出託す

 長野原東中は2007年、ダム建設に伴って現在地に新築移転し、旧校舎校庭のサクラは伐採されることになっていた。昨年6月に工事関係者らから相談を受けた協会は、県や地元住民らと移植の可能性を協議。今年3月、残っていた8本のうち1本を、同パークに移植することを決めた。

 移植するサクラは推定樹齢50〜60年で、目通り(目の高さの幹囲)約3.8メートル。協会は移植が決まった後、枝を切ったり、根元の周囲を掘ったりして準備を進めてきた。サクラの後継樹をつくって町内に植えようと、接ぎ木と取り木の作業にも取り組んできた。

 準備作業の一環として28日、地元の長野原一小と中央小の児童約40人を招いて「サクラ移植作業見学会」を開いた。

 会員がこれまでの経緯や移植方法などを紹介した。後継樹のつくり方などを説明した後、サクラの根元に活性剤をまく作業を体験してもらった。一小6年の金子凜莉さんは「サクラやダムについて勉強できた」、中央小3年の川井杏珠さんは「サクラの移植の大切さが分かった」と感想を話した。

 旧校舎時代に5年間勤務したという長野原東中の唐沢浩二郎校長は「毎年4月下旬には保護者らとサクラの下で花見をし、いろいろな話をしたことを思い出す。最後の1本がなくなるのは残念だが、新しい場所で花を咲かせ続けてほしい」と感慨深そうだった。

◆2018年9月28日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO35902670Y8A920C1L60000/
ー八ツ場ダムで水没のソメイヨシノ、前橋に移植へー

 八ツ場ダムの建設で水没する群馬県長野原町の旧東中学校跡地にある樹齢約60年のソメイヨシノが、前橋市のカネコ種苗ぐんまフラワーパークに移植されることになり、地元の小学生を招いた見学会が28日開かれた。見学会では移植を控えたサクラの根元への活性剤散布や、近隣の学校やダム周辺に植えるための接ぎ木づくりの作業も行った。

 JR吾妻線長野原草津口駅近くにあった東中学校は、八ツ場ダム着工に伴って2007年に高台へ移転。跡地に残されたサクラの行方が樹木保護の専門家である樹木医らの間で話題になり、群馬県樹木診断協会(前橋市)が中心になって救助方法を検討していた。

 予算の関係から、8本あったサクラのうち1本を前橋に移植することに決定。トレーラーで運搬可能なサイズにまで枝を刈り込み、来年1月をめどに移植する。樹木診断協会の石橋照夫会長は「順調にいけば、来年春は前橋で花を咲かせてくれるのではないか」と話している。

◆2018年10月4日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20181004/k00/00e/040/265000c
ーダム建設 八ッ場の桜、移植進む 小学生「一緒に大きく」ー

  八ッ場ダム(群馬県長野原町)の建設で水没する旧長野原町立東中学校跡地の桜を移植する計画が進んでいる。株分けした苗木を町内の小中学校に植樹するほか、来年1~2月には前橋市の「カネコ種苗ぐんまフラワーパーク」に木ごと移し替える予定だ。事業を進める県樹木診断協会の石橋照夫会長は「八ッ場の桜を大切に守り、町の記憶を多くの人に知ってほしい」と願っている。

 校庭には桜が8本並んで植えられていたが、全てを移植するには多額の費用がかかるため、他の7本は既に伐採され、1本だけ移植する。今年3月から枝切りなどの準備作業が始まった。

 9月28日には、地元の町立第一小学校と町立中央小学校の児童約40人が見学に訪れ、石橋さんや国土交通省八ッ場ダム工事事務所の担当者らから、移植が決まった経緯などについて説明を受けた。児童らは桜の木に養分を送り込む菌類を根元にまき、株分けされた苗木が各校に5本渡された。ダム建設に伴い6年ほど前に転居した町立第一小学校6年の金子凜莉(りり)さん(12)は「私と一緒に桜も成長して、私が大人になっても元気な姿が見られたらいいな」と祈るように話した。

 かつて桜並木は校庭の端にあった。東中学校の唐澤浩二郎校長には、野球部の打球が桜の木を越えると部員から「ホームラン!」の声が飛んだことが懐かしく思い出されるという。今は校舎が取り壊され更地が広がる中で、一本桜が秋晴れの空にその枝を真っすぐ伸ばしている。「景色もすっかり変わってしまいました。本当に変わっていく……。でも、違う所で引き継いでくれるならそれでいい」。唐澤校長は自分に言い聞かせるようにつぶやいた。