八ッ場ダム事業における地すべり対策と代替地の安全対策についての記者会見の配布資料

3/14追記 2/26の配布資料に一部間違いがありましたので、修正版に差し替えました。

 昨日2月26日、当会は群馬県庁記者クラブにおいて、八ッ場ダム事業における地すべり対策と代替地の安全対策についての記者会見を行いました。
 記者会見についての記事等は、こちらのページにまとめています。➡https://yamba-net.org/46148/

 八ッ場ダム事業では現在、ダム貯水池周辺で、代替地の安全対策と地すべり対策の工事を行っています。これはダムの試験湛水に備え、ダム貯水池を取り囲む住宅や施設等の安全を確保するためです。
(写真右=川原湯温泉が移転した打越代替地で実施中の「代替地の安全対策工事」。ソイルセメント置換による押え盛土工法が採用されている。1/21撮影。)

 当会では、国土交通省による地質の調査報告書と対策工事の検討報告書を情報公開請求で入手し、専門家の協力を得て、国土交通省が実施しつつある対策工事で、ダム湛水に備えた安全性を確保できるかどうかについて検討を進めてきました。
 その結果、現在の対策工事では、ダム貯水池周辺の安全が確保できるとは言い難いことが明らかになりました。昨日の会見では、この問題の概要をお伝えし、続いて県議会棟の会議室で行った記者レクで、伊藤谷生千葉大学名誉教授が詳しく解説しました。
 
 昨日映写したスライドは、以下の文字列あるいは右の画像をクリックするとダウンロードされます。

「八ッ場ダム建設事業における代替地安全対策及び地すべり対策の問題点 H26八ッ場ダム貯水池周辺地盤性状検討業務報告書(平成29年(2017年)3月発行)を検証する」

 以下をクリックすると、上記のスライドの要点をご覧いただけます。スライド番号が添えてありますので、スライドと合わせてご覧ください。
 ★八ッ場ダムの地すべり対策箇所と代替地安全対策の問題点(要点)
 
 問題の概要とその背景は、以下の通りです。

1.八ッ場ダム事業における代替地の安全対策
 八ッ場ダム事業では、水没住民の生活再建に“現地再建ずり上がり方式”を採用し、切土と盛土による大規模な住民の移転代替地を整備しました。谷埋め盛土は所により、盛土の深さが30メートル以上もある高盛土で、対策工事を実施しなければ宅地造成等規制法等の安全基準を満たしません。

 代替地の安全対策は、2011年、国土交通省関東地方整備局による八ッ場ダム検証で初めて明らかになりました。2016年のダム基本計画の変更(第五回)では、対象箇所は5ヶ所とされ、約44億円の対策費がダム事業費増額要因の一つとされました。しかしその後、対象箇所は3ヶ所に減らされ、対策実施箇所も工法が変更されました。
(右図=記者レクで映写された上記スライドより。代替地の安全対策工事を3ヶ所で実施中の川原湯地区の打越代替地についての国交省資料。盛り土部分が緑色、切り土部分が黄土色に色分けされている。)

 除外された2ヵ所はJR川原湯温泉駅の下流側(「川原湯④」)とJR長野原草津口駅の上流側(「長野原」)です。しかし、「川原湯④」の除外という判断は不適切であり、「長野原」の除外は信頼できるデータに基づいたものではありません。
 
 対象箇所として残された3ヶ所では、対策工法が当初の杭工、アンカー工からソイルセメント置換による押え盛土に変更されましたが、この工法変更は安定度に関して大きな問題があります。

2.八ッ場ダム事業における地すべり対策
 八ッ場ダム貯水池周辺は地質が脆弱なところが多く、八ッ場ダム事業では当初から地すべり対策が必要であるとされていました。しかし、道路等の関連工事により予算が足りなくなり、2004年のダム計画変更(第二回)では、地すべり対策費が約50億円からわずか5.82億円に縮減されました。
 その後、2011年の八ッ場ダム検証では一転して、地すべり対策箇所は10ヶ所(対策済みの小倉を除く)、対策費用は約110億円と試算されましたが、2016年の計画変更の際、5ヶ所が対象から除外されました。

 5ヵ所で地すべり対策が不要とされた主な理由の一つは、ダム貯水池周辺に広く分布する応桑岩屑流堆積物(応桑層)*が地すべりの要因とはならないと判断したことです。
*応桑岩屑流堆積物(応桑層)・・・約2万4000年前、浅間山の前身である黒斑山の山体崩壊により、吾妻川から利根川へ流れ下った泥流堆積物。
(右画像=記者レクで映写された上記スライドより。応桑層の調査結果を示す国交省資料)

 その結果、JR川原湯温泉駅の下流側(上湯原)の地すべり地が対象箇所から外されました。上湯原はJR吾妻線が走っているだけでなく、住宅もあり、2011年のダム検証では約20億円という、最も高額な対策費用が必要と試算されたところです。

 情報開示資料等から伺えるのは、国土交通省による「代替地の安全対策」と「地すべり対策」が、予算の制約の中で最低限の対策であるということです。
 ダム事業の犠牲となってきた水没住民をはじめとする地元住民にこれ以上の犠牲を強いないためには、将来にわたって安全が確保されるよう、ダム湛水前に万全の対策を講じることが求められます。