八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川原湯地区の地域振興施設、間もなく着工

 八ッ場ダム事業では、水没五地区の各地区で地域振興施設をつくることになっています。施設整備費用はダムの関係都県(東京都、埼玉県、千葉県、茨城県、群馬県)による利根川・荒川基金が負担することになっており、これまでに林地区、長野原地区、川原畑地区でそれぞれ、道の駅、JR長野原草津口駅前観光施設、クラインガルテン(菜園付き農園)が整備されています。

 しかし、地元がダム事業を受け入れるまで地域経済の核であった川原湯地区では、地域振興施設の中身が決まらず、ここまできてしまいました。来春のダム完成に向けて、待ったなしの状況で、ようやくキャンプ場などの施設の具体的な中身がわかったと、地元紙、上毛新聞が報道しました。

 川原湯地区の地域振興施設はこれまで、千人収容の観光会館、フィットネスルームやエステティックサロンを備えたエクササイズセンターなど、様々な構想が浮かんでは消え、そのたびに建築家や大学教授、コンサルタント会社が関わってきました。
 地元がダム計画を受け入れた時点では、群馬県が「水源地域振興公社」構想を打ち出し、利根川・荒川基金で整備する地域振興施設の運営はこの公社が担い、水没住民を200人雇用するとの約束がありました。しかし、2007年になって、この構想はもともと利根川流域都県が了承したものではなかったことが露見、公社構想は消えました。

 このため、地域振興施設の整備費約13億円は関係都県が負担しますが、施設の維持管理は地元が負担しなければなりません。以下の記事によれば、川原湯地区の地域振興施設は、4月に立ち上がる地元出資会社が運営し、川原湯温泉協会長の樋田省三氏が社長を務めるとのことです。

 なお、当会では、川原湯地区の地域振興施設が整備される上湯原の代替地(川原湯④)の安全対策を国が「不要」としたことを問題視し、さる3月15日に国交省関東地方整備局に公開質問書を送付しました。
(参照:「八ッ場ダムの代替地安全対策等が 後退したことに関する公開質問書」

◆2019年3月20日 上毛新聞
ー八ッ場でアウトドア 長野原・川原湯 キャンプ、BBQ、温浴施設・・・レジャー施設来年春開業へー

 長野原町が八ッ場ダム水没5地区の一つ、川原湯地区の地域振興施設として計画していたアウトドアレジャー施設の概要が19日、分かった。キャンプ場とバーベキュー場を核に、温浴施設、カフェ、バンジージャンプ事務所などが入る複合施設となる予定。近く着工し、ダム完成後の2020年春の開業を目指す。八ッ場ダム観光の拠点の一つとして注目を集めそうだ。

 町などによると、JR川原湯温泉駅から西へ徒歩1分の立地。キャンプ場を含めた敷地面積は約1万6000平方メートル。複合施設は鉄骨2階建てで、延べ床面積は約1500平方メートルとなる。事業費約13億円は、下流都県が負担する利根川・荒川水源地域対策基金から拠出する。

 4月に立ち上げる地元出資会社(NOA(ノア)」が施設を運営し、キャンプ場やバーベキュー場、カフェ、温浴施設などの営業は都内の会社が行う。建物内には会議室のほか、レンタサイクルや八ッ場大橋で行うバンジージャンプの受付事務所も入居する。

 メインとなるキャンプ場とバーベキュー場の詳細な内容については今後詰めるが、テントといった各種道具を貸し出し、手ぶらで来場しても楽しめるようにする方向。周辺は緑地公園の整備計画もあり、周囲の自然を散策できるようにする。

 八ッ場地域では、道の駅「八ッ場ふるさと館」、JR長野原草津口駅の売店と休憩所を兼ねた「長野原・草津・六合ステーション」、滞在型の市民農園「クラインガルテン」などの地域振興施設が既に開業。今後は、旧役場庁舎の外観を再現した食堂施設、乳製品や干し芋、パンなどの農産物加工施設が建設される予定だ。

 地元出資会社の社長を務める予定の樋田省三・川原湯温泉協会長は「老若男女がレジャーを楽しめる場所であると同時に、情報発信基地としての役割を担う。道の駅や川原湯温泉など周囲とも連携し、八ッ場地域再生のシンボルにしたい」と話している。

—-転載終わり—

写真下=川原湯地区の地域振興施設が整備されることになった上湯原の代替地と水没予定地。