八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムの安全対策に関する 公開質問書への国交省八ッ場ダム工事事務所の回答

 当会では、八ッ場ダムに水を貯めることによるダム湖周辺の安全性をかねてより危惧しています。
 3月15日に国土交通省関東地方整備局宛てに「八ッ場ダムの代替地安全対策および地すべり対策が大きく後退したことに関する公開質問書」(回答期限4月20日)を提出したところ、昨日22日、国交省関東地方整備局八ッ場ダム工事事務所の朝田将所長より郵送で回答(4月19日付)が届きました。この回答についての当会の見解は、後ほどお伝えしたいと思います。

 国交省八ッ場ダム工事事務所からの回答(PDF)
 https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2019/04/547e2681ca6e9b10ff3329ea0407ec39.pdf
 
 質問と回答の内容がわかり易いように、当会の質問項目と国交省からの回答を以下に掲載します。
 (国交省の回答は各質問に一つ一つ対応したものではありません。)

 当会が提出した公開質問書の全文と資料等の情報は、以下のページに掲載しています。
 https://yamba-net.org/wp/46335/

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〔当会の質問項目〕
1 代替地安全対策の疑問点
1-1 代替地安全対策を大幅に後退させた理由
1-2 現在の代替地対策の事業費
1-3 現在の代替地対策工法の規模
1-4 川原湯地区①、②、③の鋼管杭・深礎杭工法を不採用とした根拠への疑問
1-5 川原湯地区①、③で採用したソイルセメント置換盛土工への疑問
1-6 川原湯地区②で採用した置換コンクリート+プレキャスト擁壁工への疑問
1-7 川原湯地区④(上湯原)の除外は不適切ではないのか?
1-8 信頼できるデータに基づかない長野原地区③の除外への疑問

〔質問1に対する国交省八ッ場ダム工事事務所の回答〕
〇 八ッ場ダム貯水池周辺の代替地については、技術的な指針等に基づき必要な安全性を確保することとしており、必要に応じて対策工事を実施するとともに、試験湛水により安全性を確認することとしています。

〇 事業進捗の過程で、代替地の土地利用、調査や検討の結果等が明確化していくため、具体的な箇所や工法の変更はあり得ますが、基本的な方針には変わりありません。

〇 必ずしも、それぞれの対策工事を個別に実施しているわけではないため、それぞれの対策工事の事業費をお示しすることはできませんが、お尋ねの地区で実施した追加的な対策の概要は以下の通りです。

・川原湯地区①
  工法:押さえ盛土工
   幅:約150m(施工幅の最大値)
   長さ:約130m(法肩と法尻の水平距離)
   土量:約8万㎥(ソイルセメント等)

・川原湯地区②
  工法:擁壁工
   幅:約120m(施工幅の最大値)

・川原湯地区③
  工法:擁壁工
   幅:約140m(施工幅の最大値)
   長さ:約160m(法肩と法尻の水平距離)
   土量:約11万㎥(ソイルセメント等)

〇 盛土評価に用いた土質定数(C,ф)は、各地区で使用した盛土材の試験結果から得られた数値を採用しており、安全率等は、土地利用に応じた技術的な指針等に適合したものとなっています。

代替地の安全対策箇所についての国交省資料(2016年の八ッ場ダム第五回基本計画変更の際の説明資料)

〔当会の質問項目〕
2 地すべり対策への疑問点
2-1 地すべり対策を大幅に後退させた理由
2-2 現在の地すべり対策の事業費
2-3 現在の地すべり対策の工法とその規模
2-4 川原湯(上湯原)、川原畑①、②、林の未固形物堆積物層4地区を対策不要とした理由への疑問(1):「応桑岩屑流堆積物を原因とする地すべりは認められない」は誤り
2-5 川原湯(上湯原)等4地区を対策不要とした理由への疑問(2):「応桑岩屑流堆積物は固結度が高く、軟岩以上の強度を有している」は問題があります。
2-6 川原湯(上湯原)等4地区を対策不要とした理由への疑問(3):「応桑岩屑流堆積物には、弱層の連続性が認められない」は誤り
2-7 久森沢地区(地すべり地形地区)を対策不要としたことへの疑問

〔質問2に対する国交省八ッ場ダム工事事務所の回答〕
〇 八ッ場ダム貯水池周辺の地すべり(応桑岩屑流堆積物などの未固結堆積物を含む)に対しては、技術的な指針等に基づき必要な安全性を確保することとしており、必要に応じて対策工事を実施するとともに、試験湛水により安全性を確認することとしています。

〇 事業進捗の過程で、調査や検討の結果等が明確化していくため、具体的な箇所や工法の変更はあり得ますが、基本的な方針には変わりありません。

〇 必ずしも、それぞれの対策工事を個別に実施しているわけではないため、それぞれの対策工事の事業費をお示しすることはできませんが、お尋ねの地区で実施した地すべり対策の概要は以下の通りです。

・二社平地区
    工法:押さえ盛土工及び排土工

   (押さえ盛土工)
     幅:約200m(施工幅の最大値)
     長さ:約100m(法肩と法尻の水平距離)
     土量:約14万㎥

   (排土工)
     幅:約70m(施工幅の最大値)
    長さ:約80m(法肩と法尻の水平距離)
    土量:約2万㎥

・勝沼地区
   工法:押さえ盛土工及び排土工
 
  (押さえ盛土工)
    幅:約520m(施工幅の最大値)
    長さ:約140m(法肩と法尻の水平距離)
    土量:約44万㎥
   
  (排土工)
    幅:約400m(施工幅の最大値)
    長さ:約180m(法肩と法尻の水平距離)
    土量:約32万㎥

・白岩沢地区及び横壁地区
    工法:押さえ盛土工
     幅:約510m(施工幅の最大値)
     長さ:約190m(法肩と法尻の水平距離)
     土量:約59万㎥

・久々戸地区
    工法:押さえ盛土工
     幅:約70m(施工幅の最大値)
     長さ:約40m(法肩と法尻の水平距離)
     土量:約2千㎥

〇なお、八ッ場ダム貯水池周辺の地すべり等(応桑岩屑流堆積物などの未固結堆積物を含む)の調査にあたっては、航空レーザー測量図の活用、高品質ボーリングの活用など、技術的な指針に基づき、より高精度な調査を実施しています。

地すべり対策箇所に関する国交省資料(2016年の八ッ場ダム第五回基本計画変更の際の説明資料)    

写真下=ダム堤に隣接した川原湯地区①(打越代替地)。代替地の安全対策の対象箇所。展望台・やんば見放台より4月3日撮影。

写真下=打越代替地の中央に位置する川原湯地区②。代替地の安全対策の対象箇所。八ッ場大橋より4月3日撮影。

写真下=川原湯地区②の対岸に位置する川原畑地区・二社平(じしゃだいら)。地すべり対策の対象箇所。八ッ場大橋より4月3日撮影。

写真下=林地区・勝沼。地すべり対策の対象箇所。不動大橋より4月3日撮影。