ウナギ国際会議、資源保護の具体策先送りに関する海部先生の論考

 4月18~19日にホンウナギの資源管理について話し合う国際会議が東京で開かれました。
今年2月までの4か月間に国内で取れたニホンウナギの稚魚の量は0.8トンと、過去最低の水準に落ち込んでいますが、今回も実効性のある規制策を打ち出すことができなかったと報じられています。

 このニュースについて、ウナギ保全生態学の専門家である海部健三さん(中央大学准教授)が論考を公表されており、これをBLOGOSが紹介しています。

◆2019年4月23日 BLOGOS
https://blogos.com/article/372754/
ー東アジアのニホンウナギ資源管理は機能せず 強制力のある「ワシントン条約」が必要かー

 ニホンウナギの保護と管理について話し合うための国際会議が2019年4月18日、19日と日本で開催されました。参加したのは日本のほか台湾、韓国で、中国は5年連続で欠席しています(報道例:「ウナギ国際会議、資源保護の具体策は先送り」日経新聞)。

 会議では、養殖に用いるシラスウナギ(ウナギの子ども)の量である、「池入れ量」の上限量について話し合いが行われました。その結果、上限量の見直しは行わず、据え置きとすることが決まったようです。

 ニホンウナギの養殖を行なっている主な国と地域である日本、中国、台湾、韓国は、2015年から養殖に用いるシラスウナギの量(以下、「池入れ量」)を制限することに合意しています。池入れ量を制限することによって、ニホンウナギの消費速度を抑制しようという試みです。池入れ量の上限は、4カ国・地域全体で78.8トンと決められました。しかし、例えば2015年漁期(2014年末から2015年中ごろ)の4カ国・地域の実際の池入れ量は全体で37.8トン、2016年漁期では40.8トンと、上限である78.8トンの半分程度しか利用されていません。

 なぜ、「実際に養殖に利用されたシラスウナギの量」が、4カ国・地域で合意した、「養殖に使っても良いシラスウナギの上限」である78.8トンの、半分程度でしかないのでしょうか。それは、現状では78.8トンものシラスウナギを取ることが不可能だからです。実際には取ることができないような、過剰な上限を設定しているこの「合意」が存在していても、存在していなくても、現実の世界で捕獲され、養殖されるシラスウナギの量にほとんど影響はありません。現在のところ、シラスウナギは「取り放題」に近い状況にあるのです。

 今回の会議では、この過剰な池入れ量の上限を据え置くことが決定されました。理由としては、中国が参加していないために上限量の変更が難しいこと、上限量を設定するための科学的知見が乏しいことのほか、関係者、特にウナギに関連する産業界が上限量の変更に消極的であることが考えられます(池入れ上限を増大させることは考えにくいため、この場合の「変更」は「削減」と同義です)。

 どのような理由があるにせよ、東アジアの日中台韓によるニホンウナギ資源管理の枠組みが、適切に機能していないことは明らかです。地域レベルでの自主的な管理が機能しない場合、世界レベルの強制力のある枠組みが必要、との声が強くなると想像されます。

 野生生物の保全と持続的利用に関する「世界レベルの強制力のある枠組み」とは、「ワシントン条約」です。ワシントン条約は、正式名称をConvention on International Trade in Endangered Species of Wild Fauna and Flora(絶滅の恐れのある野生生物の種の国際取引に関する条約。略称「CITES」)と言います。その名の通り、国際取引を規制することによって、野生生物を守るための条約です。

 ワシントン条約には、国際取引を規制する対象種のリスト、「附属書」が存在します。この附属書は、絶滅のリスクなどに応じてⅠ~Ⅲに分類され、とくに規制が必要とされる生物種がⅠとⅡに掲載されます。附属書Iに掲載されている生物、例えばジャイアントパンダ、オランウータンや多くのクジラ類などについては、一切の商業目的の国際取引が禁止されます。附属書IIに掲載されている生物種、例えばケープペンギン、キングコブラやホホジロザメなどについては、種の存続に悪影響を与えない、持続的な範囲でのみ、商業的な国際取引が認められています。

 ウナギの仲間のうち、ヨーロッパと北アフリカに生息するヨーロッパウナギは、すでに附属書IIに掲載され、国際取引が規制されています。ニホンウナギがワシントン条約によって規制されることがるとすれば、ヨーロッパウナギと同じ附属書IIへの記載となるでしょう。

 日本では誤解されている場合も多いのですが、ワシントン条約は、懲罰的な目的を持って国際取引を禁止するのではなく、持続可能な限度を超えた野生生物の取引を規制するものです。特に附属書IIに掲載された生物種は、持続可能な範囲であれば国際的な取引は可能です。このため、野生生物を持続的に利用するのであれば、世界中のあらゆる生物種を附属書IIに掲載し、持続可能な範囲でのみ利用した方が良い、との論理でさえ成り立ちます。ワシントン条約の、特に附属書IIへの掲載は、回避すべきことではなく、むしろ野生生物資源の持続的利用につながる可能性があるのです。

 ニホンウナギについては、このまま、東アジアにおける自主的な資源管理が機能不全に陥っている状況が続けば、ワシントン条約による管理を求める声は当然強くなるでしょう。

 著者としては、より細やかな管理が可能であることから、東アジアによる自主的な資源管理が適切に進むことを望みます。しかし、実際の漁獲量に対して著しく過剰な池入れ量上限が6年連続で維持されるなど、自主的管理が機能していない状況が継続するのであれば、ワシントン条約による規制もやむを得ない、と考えています。・・・(以下略)

◆2019年4月19日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO43967400Z10C19A4EA4000/
ーウナギ国際会議、資源保護の具体策は先送り ー

 ニホンウナギの保護や管理を話し合う国際会議が18~19日に都内であった。稚魚となるシラスウナギについて、国際取引でのトレーサビリティー(生産履歴の追跡)改善に取り組む方針で一致した。資源保護の具体的な対策は決まらず、課題を残した。

 会議にはニホンウナギの漁獲や養殖を手掛ける韓国、台湾の担当者が出席した。中国は5年連続の欠席だった。11月から始まる来漁期について、稚魚を養殖池に入れる量の上限を変更しないことで合意した。中国が会合に欠席したため「(会議参加国だけで)上限を変えることに意義はない」(水産庁)と進展がなかった。

 今年は日本の漁獲量が少ない。前年は3月をピークに国内全体で約9トンとれたが、今年は2トン強にとどまる。資源不足からウナギの不漁が続いている。今夏の土用の丑(うし)の日は「価格が下がることはない」(専門商社)との声が出ている。

◆2019年4月19日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190419/k10011889951000.html?utm_int=nsear
ーウナギの稚魚を保護 日韓台で流通ルートの解明へー

 減少が続くニホンウナギの稚魚を保護するため、日本と韓国、台湾が稚魚の国際的な流通ルートの解明に取り組むことになりました。

 これは、日本と韓国、台湾が参加して19日まで東京で開かれていた、ニホンウナギの資源管理を話し合う国際会議で合意しました。

 水産庁によりますと、ことし2月までの4か月間に国内で取れたニホンウナギの稚魚の量は0.8トンと、過去最低の水準に落ち込んでいます。

 しかし、どこで稚魚が漁獲され、養殖されているかといった取り引きの実態が不透明なため、有効な保護策を打ち出せていないのが現状です。

 このため各国は、今後、稚魚の国際的な流通ルートの解明に共同で取り組むことを決めました。

 一方で、日本は今回の会議で、養殖する池に入れるニホンウナギの稚魚の量の上限について、2014年の実績より20%削減するとしたこれまでの規制を一段と強化することを目指していました。

 しかし、漁獲量が最も多い中国が会議を欠席したため規制強化は見送られました。

◆2019年4月18日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20190418/k10011888041000.html?utm_int=detail_contents_news-related_001
ーニホンウナギの資源保護へ国際会議始まる 中国は欠席ー

 漁獲量の減少が続くニホンウナギの資源管理について話し合う国際会議が18日から東京で始まりました。ただ、中国は欠席していて、実効性のある規制策を打ち出せるかどうかが焦点になります。

 日本をはじめ、中国や韓国、それに台湾の4つの国と地域は、ニホンウナギの資源保護に向けた国際会議を7年前に設置し、毎年、協議を行っています。

 ことしの会議は、18日から2日間の日程で東京で始まり、日本政府の代表を務める水産庁の太田愼吾審議官が「ニホンウナギの持続的な利用には国際協力が不可欠だ」とあいさつしました。

 水産庁によりますと、ニホンウナギは資源の減少が続き、国内では、今シーズンの稚魚の漁獲量が、ことし2月までの4か月間で0.8トンと過去最低の水準に落ち込んでいるということです。

 こうした中、今回の会議では、養殖する池に入れるニホンウナギの稚魚の量の上限について、2014年の実績より20%削減するとしたこれまでの規制を一段と強化するかどうかが話し合われることになっています。

 ただ、漁獲量の最も多い中国は、5年連続で会議を欠席していて、実効性のある規制策を打ち出せるかどうかが焦点になります。