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国交省、肱川の河川整備計画見直すも、ダム優先は変わらず

 昨年7月の西日本豪雨では、愛媛県を流れる肱川流域で、国が管理するダムの緊急放流後の氾濫で大きな水害に見舞われました。その後の経過を伝える記事が地元紙に掲載されています。

 国土交通省四国地方整備局は、肱川の治水対策の大筋を定める肱川水系河川整備計画の見直しを今年中に行い、治水安全度を現行の1/40(40年に一度規模の洪水に対応)から1/100(百年に一度規模の洪水に対応)に引き上げるようです。また、計画の対象外になっていて甚大な被害を受けた、鹿野川ダム直下の約10㎞の区間(大川、肱川(肱川中央、正山)両地区)についても整備計画を策定することになっています。

 現行の肱川水系河川整備計画の根本問題は、ダム優先の計画になっていることにあります。肱川水系には、緊急放流を行った野村ダムと鹿野川ダムという巨大ダムがすでにありますが、国交省はさらに山鳥坂ダムを建設しようとしています。
 住民説明会では、被災住民から厳しい意見が相次いだようですが、国交省は質問をはぐらかして住民の要求や疑問にまともに答えようとはしなかったようです。
 記事では、「山鳥坂ダム(2026年度完成予定)を建設するなら、堤防整備費に充ててほしい」などの声が紹介されています。
 国の河川行政は、流域住民を入れずに水害の検証を行い、責任回避に終始しています。

◆2019年5月11日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201905110023
ー愛媛豪雨災害 肱川整備「年内見直し」 国交省 目標流量 豪雨規模にー

 西日本豪雨での肱川氾濫を受け国と県が変更検討中の肱川水系河川整備計画の見直し時期について、国土交通省大洲河川国道事務所の兵頭英人所長は10日、大洲市で「大きな目標として年内にはしっかり見直したい」と述べた。大洲、西予、内子の3市町でつくる肱川流域総合整備推進協議会の総会後の2019年度事業説明で、二宮隆久大洲市長の要望に対し説明した。

 兵頭所長は現行計画について「治水安全度は40分の1(40年に1度規模の洪水で被害を出さない想定)で、非常に低い」と指摘し、変更後は「100分の1に近いものにしないといけない」と強調。現行計画にない視点を盛り込む必要性にも言及した。

 事務所によると、変更手続きは19年度のできるだけ早い時期に始める。目標流量(大洲第二観測所)は現行計画で毎秒5千トンだが、変更後は西日本豪雨規模の6200トンとなる見込み。

 二宮市長は、特に被害が甚大な大川、肱川(肱川中央、正山)両地区の復興へ個別に定める計画に言及。

 市によると、両地区は現行計画対象区間に含まれておらず、市などは新計画で対象に加え、恒久的な治水対策を要望。一方、堤防の高さなど治水対策が固まらないと、両地区で計画する被災者向け住宅整備など復興施策を進めにくいため、二宮市長は「計画変更の方向性は大きなポイント」と強調し、可能な範囲での速やかな情報提供を求めた。

 現行計画を巡っては、学識者会議が18年10月に「変更が必要」と意見したのを受け、国と県は変更の検討に入った。

【被災踏まえた計画を要望へ 国・県に流域3市町】
 大洲と西予、内子の3市町でつくる肱川流域総合整備推進協議会(会長・二宮隆久大洲市長)は10日、大洲市東大洲の市総合福祉センターで2019年度総会を開いた。山鳥坂ダム完成を含む肱川水系河川整備計画の早期実現や、西日本豪雨災害の検証を踏まえた新たな河川整備計画の策定など国や県への要望(国7項目、県6項目)を決めた。

 新たな河川整備計画策定の要望には、西日本豪雨で甚大な被害を受けた野村・鹿野川両ダム下流の地域を計画対象に加えることや掘削を含む河床の適正管理、野村ダム改造による放流設備の増強などを盛り込んだ。

 このほか、予防的を含めた治水事業費の増額▽「逃げ遅れゼロ」を目指す国・県と連携した情報共有システム構築▽排水機場や排水ポンプ車の整備・増強など内水対策の協力や支援▽国の出先機関事務機能や災害時態勢の強化―なども求める。

 協議会は23日に県や県議会などに、30日には国土交通、財務、総務の各省や県選出国会議員に要望する予定。

◆2019年5月12日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201905110050
ー愛媛豪雨災害 国土交通省と大洲市、野村・鹿野川ダムの操作変更を住民に説明ー

 国土交通省山鳥坂ダム工事事務所と愛媛県大洲市は11日、西日本豪雨での肱川氾濫などに伴う野村・鹿野川ダムの操作規則変更などに関する住民説明会を同市東大洲の市総合福祉センターで開いた。8日に続き2度目。

 説明会には約90人が出席。事務所は、鹿野川ダム改造による治水容量増強▽野村ダムの事前放流による容量確保▽東大洲地域の堤防かさ上げ―を踏まえた放流による被害抑制へ新たな操作ルールの考え方を示した。

 住民は、ダム操作に関し異常洪水時防災操作への移行に気象予測を反映するのは困難としたダム側の方針を疑問視。事務所は「予測が外れた場合、回避できたはずの被害が生じる可能性がある」と説明した。「操作規則変更の効果に期待するが(ルールに縛られず)柔軟に運用してほしい」との住民の意見には「特別防災操作の条件に基づき柔軟に対応する」とした。

 「肱川の(川底を掘り下げる)河床掘削を第一にすべきだ」「山鳥坂ダム(2026年度完成予定)を建設するなら、堤防整備費に充ててほしい」との訴えのほか、堤防かさ上げに関連して内側にたまる内水対策の要望などもあった。

 15日午後7時からは、平公民館(徳森)で説明会がある。(月岡岳)