昨夏の西日本豪雨、関西電力の検討結果と国交省の治水対策

 昨夏の西日本豪雨では、岡山県倉敷市を流れる高梁川支流の小田川が大氾濫し、50名を超える方が亡くなりました。水位が高まった高梁川が支流の小田川の流れをせき止める「バックウォーター現象」が起き、小田川の水位が上昇して小田川で決壊・溢水が起きたのです。

 高梁川上流の成羽川には関西電力の新成羽川ダム(総貯水容量1億2750万㎥)があり、その放流の仕方が問題視されましたので、関西電力は技術検討会を設置し、5月20日にその検討結果を発表しました。

◆中国電力ホームページより「お知らせ」 
新成羽川ダムの治水協力に関する検討結果について(岡山支社、2019年05月20日)

 上記の検討結果は、昨年の西日本豪雨の際のダム操作は、「ダム操作規定」に則ったもので、適正であることを確認した、とした上で、今後は大雨が予想される場合に事前放流を行って、新成羽川ダムの水位を6月中旬から下げるというものです。昨年7月にこの事前放流が行われていれば、倉敷市酒津(小田川合流後の高梁川)の水位を12センチ下げられたと試算されています。事前放流によって発電量が低下した場合の補償については、ダムを所管する国土交通省と協議を続けるとしています。

 ただし、小田川氾濫の主因は、高梁川に比べて小田川の河床勾配がかなり緩いことによるものです(高梁川約1/900、小田川約1/2200)。

 小田川合流点を下流側に付け替えて河床勾配を大きくする計画が半世紀前からありました。この付け替え工事が行われていれば、合流点の水位が4.2mも下がるので、昨年の豪雨で小田川が氾濫しなかった可能性が高いと考えられます。
 小田川付け替えという氾濫回避の有効な対策があったにもかかわらず、その対策の実施を半世紀も先送りしてきた国土交通省の責任は重大です。

 国土交通省は水害後の昨年9月7日に被災地で緊急治水対策を実施すると発表しました。被災地の地名を冠した、この「真備緊急治水対策」の事業費は約500億円、事業は昨年度着工され、小田川と高梁川の合流点を下流側へ付け替える工事(事業費約332億円、工期2023年度)や小田川の掘削など、これまでにやらなければならなかった工事が含まれています。今年4月には、現地に小田川流域の復旧復興を担う国の「高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所」が設けられ、梅雨時までの堤防強化と、5年計画で進む高梁川との合流点の付け替え工事に取り組むことになっています。

 関連記事を転載します。

◆2019年5月21日 山陽新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190521-00010000-sanyo-l33
ー岡山・新成羽川ダムで6月中旬「事前放流」 中電、豪雨教訓に下流域浸水抑制ー

 中国電力(広島市)は20日、高梁川水系にある岡山県内最大の新成羽川ダム(高梁市、総貯水量1億2750万立方メートル)で、大雨が予想される場合にあらかじめダム湖の水位を下げて貯水容量を増やしておく「事前放流」を6月中旬から行うと明らかにした。昨年7月の西日本豪雨を教訓に、下流域での浸水被害を抑制するのが狙い。発電目的の民間ダムが治水対策として事前放流するのは珍しく、中国四国以西では初めてという。

 この日、岡山市内で開かれた高梁川流域の4市(倉敷、総社、高梁、新見)の市長とダム、河川管理者による意見交換会で報告した。事前放流は、西日本豪雨で倉敷市真備町地区が甚大な浸水被害を受けたこともあり、4市長が同社に要請していた。

 計画では、事前放流はダム上流域の合計雨量が110ミリを超えると予想される場合、降雨の2日ほど前から発電用の放流口を使って行う。これにより最大で東京ドーム32個分に相当する4千万立方メートル分の貯水容量を確保でき、大雨当日の放流量を減らせるという。

 新成羽川ダムは西日本豪雨のピーク時に最大毎秒2074トンを放流した。この水量は同じ高梁川水系の上流にある岡山県管理の河本ダム(新見市、総貯水量1735万立方メートル)が実施した最大放流量の約3倍に当たる。中国電力は仮に新成羽川ダムで事前放流を行っていれば、高梁川の水位を総社市日羽で約20センチ、真備町地区に近い倉敷市酒津で約10センチ下げられたと試算している。

 同社は今後、操作規程を見直し、事前放流できるよう国に承認申請する。事前放流によって発電量が低下した場合の補償については、ダムを所管する国土交通省と協議を続ける。

 西日本豪雨では高梁川流域で浸水被害が相次ぎ、真備町地区は高梁川支流の決壊で町域の3割に当たる1200ヘクタールが水没し、51人が亡くなった。

 倉敷市の伊東香織市長は「治水に協力する決断を下した中国電力に感謝したい」と述べ、同社の吉岡一郎執行役員は「現段階で協力できる最大限の内容を示した。下流域の減災につなげたい」と話した。

◆2019年5月20日 毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20190520/k00/00m/040/082000c
ー中国電力 高梁川水系ダムを事前放流へ 西日本豪雨で決壊ー

  中国電力は20日、1級河川・高梁(たかはし)川水系に設置している発電用「新成羽川(しんなりわがわ)ダム」(岡山県高梁市)について、大雨が予想される際には事前に水位を下げる運用を始めると、流域4市(岡山県倉敷市、総社市、高梁市、新見市)に伝えた。昨年7月の西日本豪雨で高梁川や支流の堤防が決壊し、倉敷市の真備町地区などで大規模な浸水被害が起きたことを受け、4市が要望していた。国土交通省によると、民間の発電目的のダムが治水に協力するのは珍しいという。

 中国電力などによると、水力発電は水が落下する力を利用するため、普段は高低差と水量を確保できるよう、高水位を保っている。西日本豪雨の際、新成羽川ダムは梅雨時期の運用として満水より少し水位が低い状態だった。そこに大量の雨水が流れ込んだため、約5時間にわたって全てのゲートを全開にして放流せざるを得なかった。

 豪雨が予想される場合、あらかじめ放流し、貯水余力を確保すれば被害の軽減につながる可能性がある。このため浸水被害を受けた4市は昨年12月、中国電力や国などに豪雨前には水位を下げるよう要望。中国電力は社内に大学教授らを交えた検討会を設置し、議論を重ねていた。【林田奈々】

◆2019年5月21日 瀬戸内海放送
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190521-00010006-ksbv-l33
ー国・県・倉敷市が合同で開催 堤防整備に関する住民向けの説明会 倉敷市真備町ー

 国と岡山県、倉敷市が倉敷市真備町の堤防整備に関する住民向けの説明会を合同で開きました。

 (高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所/桝谷有吾 所長)
「地域の皆さまと協力をさせていただきながらより良い川をつくっていきたいと考えておりますので」

 国交省の緊急治水対策河川事務所の職員らが、堤防の決壊箇所の復旧工事が6月中旬に完了する見通しであることや、9月に堤防の強化工事に着手することなどを報告しました。

 国はさらに高梁川と小田川の合流点の付け替え事業を5年をめどに完了する予定です。 
 住民からは「工事期間中に迂回路が設置されることで川幅が狭くなり不安だ」「合流点の角度をなだらかにしてほしい」といった意見が出ました。

 また、新成羽川ダムなど6カ所のダムで放流を早めに行うことで、下流の水位を10センチから20センチ下げる効果があることも説明されました。

◆2019年5月18日 山陽新聞
https://www.sanyonews.jp/article/899872
ー小田川の堤防強化、9月に着工 国、県、倉敷市が合同説明会ー

  西日本豪雨災害を受け、国と岡山県、倉敷市は18日、甚大な浸水被害に遭った同市真備町地区での堤防整備に関する初の合同説明会を、市真備支所(同町箭田)で開いた。国は、市と連携して行う小田川の堤防強化工事に9月から着手するスケジュールを明らかにした。

 対象区間は、高梁川との合流点から上流約7・2キロまでの両岸(一部除く)。小田川や高梁川の河道掘削で生じた大量の土砂を有効活用し、堤防上部の幅を現在の5メートルから7メートル程度に広げる。堤防の上部は市道で、災害時の緊急車両の通行や避難路に活用する。

 国土交通省高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所によると、6月上旬に地区ごとの説明会を実施。堤防の形状などについて地元と協議を重ね、合意を得た上で、まずは用地の取得が不要な箇所から工事に入る。21年度末の完了を目指している。

 説明会は国、県、市の行政関係者が一堂に会し、同町地区での緊急治水対策プロジェクトの全容を伝える目的で開き、地元住民約110人が出席した。行政側は堤防決壊箇所の復旧の進捗(しんちょく)率も報告。国管理の小田川が80%、県管理の3河川(末政、高馬、真谷川)が60~70%で、いずれも6月中旬の出水期までに完了する見通しを示した。市は同町地区の復興計画(2019~23年度)を説明した。

 住民からは、梅雨期を前に「小田川の堤防を高くしてほしい」「合流点付け替えが完了するまでは安心して暮らせない」といった不安を訴える声が相次いだ。同事務所の桝谷有吾所長は「抜本的な対策にはならないが、河道を掘削して水位を下げるなど、できることはやっていく」と理解を求めた。
 

◆2019年5月19日 NHK岡山放送局
https://www3.nhk.or.jp/lnews/okayama/20190519/4020002790.html
ー小田川堤防復旧の住民説明会ー

 西日本豪雨で甚大な被害を受けた岡山県倉敷市真備町を流れる小田川の堤防の整備計画について国は住民を対象にした説明会を開き、立ち退きが必要な住民もいることなどを説明しました。

 去年7月の西日本豪雨で、倉敷市真備町を流れる小田川は2か所で堤防が決壊し、大きな被害が出ました。
 この小田川の堤防について国土交通省などが整備計画をまとめ、18日、倉敷市真備町で住民を対象にした説明会を開きました。

 その中で、整備の内容について川の底を掘り下げて水位を下げるほか、堤防の幅を広げて内部に浸透した水を排水できる構造にして堤防の強度を高めることなどが説明されました。
 その対象はおよそ8キロに渡り、立ち退きが必要な住民もいることから、補償金は土地の調査にもとづいて決めることや、代替地の確保に向けて一部は事前に支払うことが可能であることも示されました。

 参加した住民からは、「堤防の復旧工事が完了するまでに再び災害が起こらないか心配だ」といった不安の声が、あがっていました。
 参加した70代の男性は「堤防の利用方法について自分たちも考えていきたい」と話していました。
 説明会を開いた「高梁川・小田川緊急治水対策河川事務所」の桝谷有吾事務所長は「地域の方々の意見を反映させながら、復旧事業を進めていきたい」と話していました。