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豪雨被災地の福岡県朝倉市、ダム緊急放流時の避難伝達に新基準

 福岡県の朝倉市は、一昨年夏の九州豪雨、昨夏の西日本豪雨の被災地です。西日本豪雨では、愛媛県を流れる肱川の二基のダムが緊急放流を行ったことにより、甚大な水害が発生しており、朝倉市はこれを踏まえて、独立行政法人・水資源機構が管理する市内の寺内ダムで緊急放流の事前通知があった場合、下流域に避難勧告や避難指示を出す新たな避難基準を策定することになったと報道されています。

 水資源機構から緊急放流の3時間前通知を受けた時点で、ダム下流に当たる佐田川流域に「避難勧告」、1時間前通知で「避難指示(緊急)」を速やかに出すよう改めるというものです。
右図=水資源機構 寺内ダム管理所HPより
 しかし、緊急放流の3時間前や1時間前の避難勧告・避難指示で下流住民は避難できるのでしょうか。ダムに依存しない治水行政に転換すべきではないでしょうか。九州ではこのところ、「数百年に一度」といわれる豪雨が毎年のように発生しています。

◆2019年5月28日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/513958/
ーダム緊急放流前に避難伝達 朝倉市、豪雨教訓に新基準ー

 2017年7月の九州豪雨の被災地、福岡県朝倉市は、市内の寺内ダムで緊急放流の事前通知があった場合、下流域に避難勧告や避難指示を出す新たな避難基準を策定す
る。寺内ダムでは九州豪雨と18年の西日本豪雨の2年連続で想定を超える流入量を記録。愛媛県のダムの緊急放流で18年に生じた甚大な被害も踏まえ、異常気象を前提とした防災に取り組む。

 寺内ダムは有効貯水容量1600万トン。うち900万トンは水道や農業に使う利水用で、残り700万トン分が「150年に1度の雨」の洪水調節に対応する。想定する最大流
入量は毎秒300トンで、うち180トンを貯水し、下流域に影響を及ぼさない限度とされる120トンを放流する計画だ。

 ただ、毎秒300トンを超える流入が続き、貯水量の限界に達すると予測される場合、ダムの決壊を防ぐため緊急放流が必要になる。緊急放流に踏み切る場合、ダムを
管理する水資源機構は下流域の自治体に対し、開始の3時間前と1時間前に通知する決まりがある。

 市は緊急放流の事前通知に基づいた避難勧告や指示は出していなかったが、相次ぐ豪雨を受けて新基準に盛り込むことを決めた。

 機構から3時間前通知を受けた時点で、ダム下流に当たる佐田川流域に「避難勧告」、1時間前通知で「避難指示(緊急)」を速やかに出すよう改める。市民へは
メールや行政防災無線を通じて知らせる。

 新基準策定の背景には二つの豪雨の経験と教訓がある。「数百年に1度の雨」とされる九州豪雨時の最大流入量は、想定を大きく超える毎秒888トンに達した。直前までの渇水で貯水位が低く、1時間前通知まで事態は進んだものの、機構の判断で緊急放流には至らなかった。

 西日本豪雨時は毎秒337トンの流入量を記録。利水容量が満タン状態のダムに雨水の流入が続いたが、3時間前通知後に雨が小康状態となり放流を見送った。

 市は、寺内ダムの緊急放流による浸水面積を約1500ヘクタールと想定。西日本豪雨時、愛媛県のダムの緊急放流で発生した浸水面積は約1400ヘクタールだった。市は「ダムは防災機能が高いが、限界もある。2度の豪雨の経験と愛媛県の教訓も生かし、早期避難の必要性を訴えたい」とし、梅雨が始まる前に新基準の周知を図る。