長崎県収用委員会、石木ダム用地の明け渡し裁決、その後の報道

 長崎県収用委員会はさる5月21日、13世帯の住民が暮らす石木ダム予定地のすべての用地の強制収用を認める明け渡し裁決を行いました。
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 長崎新聞はこれを批判する論説を掲載、昨日もこの問題を追う記事が多数掲載されました。

 一つ目の記事では、長崎県が石木ダムは川棚川の治水に必要と繰り返し主張している内容を、次のように紹介しています。
(石木ダムは川棚川の支流の石木川に計画されています。)

 「県は川棚川の改修が完了すれば、過去と同規模の大雨に対応できるようになるが、これは、おおむね「60年に1度」起こると想定している。整備計画で定めた「100年に1度」の大雨に対応するためには、石木ダムが必要というのが県の考えだ。」

 川棚川は1990年の洪水のあと、河川改修が進められて、県の計画によるものはほぼ終わっており、県がいう「60年に1度」の洪水にはす
でに対応できるようになっています。
 県がいう「100年に1度」の大雨の洪水は机上の計算によるきわめて過大なものです。さらに、石木ダムができても、県がいう「100年に1度」の洪水が来れば、川棚川流域において、石木ダムで対応できるのは流域全体の数%に過ぎません。
 7月17日に石木ダム差し止め訴訟の裁判が長崎地裁佐世保支部であります。そこで、嶋津暉之さん(元・東京都環境科学研究所研究員、当会運営委員)がそれらの事実を証言する予定です。
 石木ダムは利水面だけではなく、治水面でも不要なダムです。

◆2019年6月2日 長崎新聞
https://this.kiji.is/507807784420738145
ー岐路に立つ「ホタルの里」 石木ダム事業と川棚町 採択から44年 住民翻弄ー

  川のせせらぎとウシガエルの鳴き声が響く田園風景に、夜のとばりが下りた。川沿いの茂みで小さな光の粒が明滅し始める。光は徐々に増え、夏の夜空を縦横無尽に乱舞した。東彼川棚町岩屋郷川原(こうばる)地区を流れる石木川で、今年もホタルが見ごろを迎えている。
 町のホームページや広報紙では紹介されないが、連日多くの見物客が訪れる。5月25日は住民が恒例の「こうばるほたる祭り」を開き、にぎわった。
 大村市から訪れたカップルは「初めて来たけど、思った以上にホタルが多くて驚いた」とうっとり見入っていた。男性が思い出したように記者に尋ねてきた。「ここって本当にダムに沈むんですか」
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 県と佐世保市が川棚町に計画する石木ダム建設事業。5月21日、反対地権者13世帯の宅地を含む土地を強制収用できる県収用委員会の裁決が出た。一方4月の川棚町議選では反対地権者が最多得票で初当選。事業に疑問を持つ町民の世論も浮き彫りになった。事業採択から40年余り。岐路に立つ町で、揺れ動く住民の思いに耳を傾けた。

石木ダム建設予定地の川原地区で乱舞するホタルの群れ=川棚町岩屋郷
◎川原「ほたる祭り来年も」 上流域 分断し「心にしこり」 下流域 大雨不安「でも…」

 石木ダムの水没予定地、東彼川棚町岩屋郷の川原地区。5月25日朝、住民らは夜の「ほたる祭り」を前に慌ただしく準備に追われていた。広場では男性陣がステージや屋台の設営に汗を流し、公民館では女性陣と支援者らが家庭料理や菓子をこしらえる。間を縫うように、子どもたちが自由に駆け回っていた。
 祭りは、石木川に集まるホタルを呼び物に地域活性化を図ろうと、住民が1988年から開く。ダム問題は前面に出さず、自然豊かな集落の原風景や住民との触れ合いを通し、地区の「ファン」を増やすのが目的だ。今年は、住民らの日常生活を追ったドキュメンタリー映画の全国公開も影響し、県内外から見物客が訪れ、会場はにぎにぎしい雰囲気に包まれた。
 だがほんの3日前、住民らの宅地を含む一帯の土地を強制収用できる県収用委の裁決が伝わった。地権者らは「明け渡しには応じない」と固い決意を口にするが、手続き上は今年中に全ての土地が「公有地」となる可能性が高い。そんな状況を知ってか知らずか、ある来場者はこう言って会場を後にした。「来年もまた来ます」
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 川原地区より上流に位置する木場地区。日本の棚田百選の一つ「日向の棚田」の石垣には「ダム反対」の看板がちらほらと見える。反対地権者以外は県との補償契約に応じ、集落を去った川原と異なり、この地区はダムの賛成と反対の住民が混在する。かつてはダムの賛否を巡ってコミュニティーが分裂。20年以上にわたり郷が機能不全に陥った歴史もある。
 15年ほど前、伝統芸能の復活などをきっかけに関係は修復した。「今、地区内でダムの話をする者はいない」と郷総代の長尾俊明さん(70)は言う。それでも「心には、わだかまりは残っている」。
 ダムが完成すると、木場地区と町の中心部をつなぐ県道は沈み、住民はダム湖を迂回(うかい)する付け替え道路を使うことになる。高齢化が進む中、長尾さんは「ダムができれば、郷はさらに衰退するのでは」と懸念する。「ダムは造らずそのままにしてほしいのが、大半の住民の本音ではないか」と明かす。4月の川棚町議選で反対地権者がトップ当選したのも町民の「見えない本音」の表れとみる。
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 ダムで治水の恩恵を受けるとされる下流域の住民は現状をどう見ているのか。
 県によると、川棚川流域では豪雨による洪水被害が戦後4回発生。川棚川の改修が完了すれば、過去と同規模の大雨に対応できるようになるが、これは、おおむね「60年に1度」起こると想定している。整備計画で定めた「100年に1度」の大雨に対応するためには、石木ダムが必要というのが県の考えだ。
 町中心部の栄町で洋服店を営む川尻省三さん(72)は90年7月の洪水被害を鮮明に覚えている。車を高台に運び、客から預かった服や貴重品、仏壇などを家族と2階に運んだ。あっという間に浸水。1階の畳やフローリングは台無しになった。店のシャッターの裏側には冠水した時の汚れが生々しく残る。「あのころは、私も若かったし、息子や両親もいた。ここ数年で全国的にゲリラ豪雨も増え、いつまた起こるかと思うと…」と不安を口にする。
 昨年7月、県内初の大雨特別警報が発表された際も、心配で川棚川の様子を見に行った。氾濫には至らなかったが不安はぬぐえない。一方で「やはりダムは必要と思うか」との問いには「うーん」と苦渋の表情をした。「正直、ダムがすぐにできるとは思えない。どんな方法であれ、早く安心できる治水対策を整えてほしいだけなのだが」
 他の店主も洪水時の苦労や今後の大雨への不安を口にするものの、ダムについては一様に言葉を濁した。ある店主は「川原の住民に『犠牲になってほしい』とまではとても言えない」と声をひそめた。
 75年の事業採択から44年、ダム計画に引き裂かれ、翻弄され続けた地元民たち。それぞれの葛藤と苦悩に折り合いを付けられないまま、13世帯もの宅地を強制収用する前代未聞の事態は、現実味を増しつつある。

https://this.kiji.is/507805605105910881
ー石木ダム事業と川棚町 地権者トップ当選 議会は変わるのか 両町議に聞くー

  4月の川棚町議選で、石木ダム反対地権者の炭谷猛氏(68)が、16人の候補者のうち最多となる795票を獲得し初当選した。過去3回、石木ダム事業推進の決議案を可決するなど長年にわたり「推進派」が多勢を占めてきた町議会は、地権者の参入で変わるのか。炭谷氏と、選挙戦でダムの必要性を訴えた田口一信氏(70)=3期目=に聞いた。

◎炭谷猛氏(68)/「民意」を甘く見るな

「町議選の投票結果は『ダム不要』の民意だ」と語る炭谷さん=川棚町
 -「石木ダム反対」を明確に打ち出しトップ当選した。ダムに対する町民の関心は高まったと言えるか。
 選挙結果で「ダムは要らない」という町民の民意が示されたと受け止めた。2016年に「石木ダム建設に反対する川棚町民の会」を結成。町内各地での学習会やビラ配りを通じ町民にダム問題について啓発してきたが、事業への疑問や反対意見を持っている町民は少なくなかった。
 石木ダムができると川棚町の水道水は今より水質が悪くなるのではないか。ダムに依存した治水は本当に安全なのか。こうした疑問や不信感が町民に存在する。一方で、町議会の反応は鈍く、学習会に顔を出す議員は少なかった。出馬を決意したのは、町民の声をしっかり示したかったからだ。

 -議員として、どのように活動していくのか。
 石木ダムは、人口規模も、経済状況も、環境への考え方も、今と全く異なる前時代の計画。時代に応じて町民の考えが変わっているのに、政治の世界だけが旧態依然としている。「民意」をしっかり訴えていくつもりだ。

 -そんな中、県収用委員会が地権者13世帯の宅地を含む用地の収用を裁決した。
 今更、地権者側の反感をあおるようなことをして何になるのだろう。求められているのは、法的な手続きではなく政治判断。県や佐世保市、川棚町には、今回の選挙結果が示した「民意」を甘く見ないでほしい。

◎田口一信氏(70)/説明不足、町にも責任

「町民の安全の問題は賛成、反対で論じる性質のものではない」と語る田口さん=川棚町
 -選挙戦ではダムの必要性を重点的に訴えた。
 「佐世保市の水需要が減少しているから石木ダムは要らない」という論調を見かけるが、仮に利水目的がなくなったとしても、川棚川流域の治水の課題は残る。県が行政の責任として流域の治水対策を検討した結果、石木ダムが最も合理的と判断した。そもそも町民の安全の問題は、賛成、反対で論じるような性質のものではない。こうしたことを町民に理解してもらう必要があった。

 -反対地権者のトップ当選をどう見たのか。
 予想以上の得票で驚いた。「大型公共事業は無駄」と考えるムードがあったのだろうか。私も選挙戦を通じて、石木ダムの必要性が十分に理解されていないと感じた。きちんと説明してこなかった町にも責任の一端はあると思う。

 -改選前には議会の石木ダム対策調査特別委の委員長を務めていた。ダムを巡る今後の町議会の動きは。
 特別委で反対地権者と対話をしたかったが、かなわなかった。地権者が議会に入ったことで状況が変わると期待している。特別委は6月の定例会で再び設置されると思うが、私は地権者の炭谷議員にも入ってもらいたい。徹底的に意見を言ってほしい。
 町は「事業主体は県と佐世保市」との立場で、この問題から逃げてきたが、地権者が議員になった以上はそうもいかない。同時に私は推進の立場から、これまで消極的だった町の姿勢をただしていくつもりだ。

https://this.kiji.is/507733814079603809?c=39546741839462401
ー石木ダム反対派が長崎市で抗議行動 署名活動、勉強会開催ー

  長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画している石木ダム建設事業に反対する長崎市の市民団体「石木川の清流とホタルを守る市民の会」は1日、同市浜町のアーケードで抗議行動をした。
 同事業を巡っては、反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地について、5月21日、県収用委員会が明け渡しを求める裁決を出した。そのため、県はダム建設に必要な全ての土地を強制的に収用できる状況となっている。
 この日は会員10人が買い物客らに建設反対の署名を呼び掛け、「『合意の上での着工』の約束を守ろう」などと書かれたビラを配布した。
 一方、同市興善町の市立図書館多目的ホールでは、ダム問題への関心を高めるための学習会が開かれ、約80人が参加。熊本県で建設中止となった川辺川ダムの事例を通じ、反対世論を高める住民運動の在り方などについて意見を交わした。
 4月の町議選でトップ当選した反対地権者の炭谷猛さん(68)は「石木ダムが必要ないことを町民目線で訴え、議会の中でも議論し、世論を形成していきたい」と話した。

◆2019年6月2日 長崎放送
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190602-00002507-nbcv-l42
ー長崎市の市民団体「石木ダム」収用裁決に抗議の街頭活動ー

 東彼・川棚町に計画されている石木ダムをめぐり、反対地権者の土地を強制的に収用できるようになる「裁決」が出されたことをうけ、長崎市の市民団体が抗議の街頭活動を行いました。

抗議したのは「石木川の清流とホタルを守る市民の会」のメンバー約10人で「佐世保の水は足りており石木ダムは不要だ」などと訴えました。

 石木ダムをめぐっては建設に反対する13世帯およそ60人が今も水没予定地に住み続けていますが、県の収用委員会が先月21日収用裁決を出したため期限内に退去しなければ県による強制的な収用も可能となります。

 市民の会の西中須盈代表は「公共のために役立つものなら理解もするが石木ダムは利水の面でも治水の面でも必要のないダムだ。世論の力で建設中止に持ち込みましょう」と道行く市民に呼びかけていました。

 守る会では今後、収用委員会に対し収用裁決の取り消しを求める活動などを計画しています