長崎県収用委員会はさる5月21日、13世帯の住民が暮らす石木ダム予定地のすべての用地の強制収用を認める明け渡し裁決を行いました。
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長崎県は今月3日、県収用委員会の裁決書を受理したとして、明け渡しの期限や補償金の金額など、裁決の内容を明らかにしたとのことです。
ダム予定地での生活を続けている13世帯の住民らは、明け渡しを拒否していますが、補償金の受け取りを拒否しても、起業者(長崎県)は法務局に補償金を供託するため、翌年、補償金への税金等が地権者にかかってきます。税金、健康保険料等の徴収額は補償金額の3割にも上るということです。
土地収用法は起業者に有利な仕組みであることがわかります。住民の権利が守られない法律のせいで、これまで八ッ場ダムをはじめ、多くのダム予定地の住民があきらめ、ダム事業を受け入れてきました。決してあきらめない石木ダムの住民運動は、厳しい局面にありますが、世論が味方することによって、長崎県が強制収用という強硬手段に出るハードルが高くなります。
◆2019年6月4日 長崎新聞
https://this.kiji.is/508440718199358561
ー石木ダム 補償額11.8億円 長崎県、収用裁決書を受理ー
長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、県収用委員会が反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地約12万平方メートルの明け渡しを求めた裁決について、長崎県は3日、県収用委の裁決書を同日受理したとして、明け渡し期限や総額約11億8千万円の損失補償額など裁決の内容を明らかにした。地権者らが明け渡しを拒否していることについて、中村法道知事は報道陣に「円満な解決に至らず残念。(家屋の撤去や住民の排除など)行政代執行の手法を除外することは考えていない。あらゆる選択肢の中から総合的に判断する」と述べた。
長崎県庁で会見した県河川課によると、反対地権者の家屋13世帯や公民館1軒、小屋1軒を含む約12万平方メートルの明け渡しを地権者らに求める裁決を、県収用委(弁護士ら委員7人)が5月21日付で出した。同事業で宅地を含む明け渡し裁決が出たのは初めて。
裁決書に示された損失補償額は総額約11億8千万円で、地権者数は支援者ら“一坪地主”を含め計376人。地権者からの土地の権利取得の時期は9月19日とした。県は同日までに地権者に補償金を支払うか、地権者が受け取らない場合は法務局に供託することで、土地の所有権が国に移ることになる。県収用委への県の裁決申請では、権利取得の時期は「裁決の翌日から60日」だったが、県収用委は対象が膨大だとして「120日」に延期した。
明け渡し期限は、家屋などの物件がない土地が9月19日、物件がある土地が11月18日。地権者が期限までに明け渡しに応じなければ、長崎県と佐世保市は知事に行政代執行を請求でき、知事が対応を判断することになる。
会見した県土木部の天野俊男次長は「(県収用委には)丁寧、慎重に審査いただいた。地権者に丁寧に説明する努力は継続する」とした。佐世保市の朝長則男市長は「(ダム建設は)市の水源不足解消に必要不可欠。今後も事業推進に取り組む」とのコメントを発表した。
◆2019年6月4日 長崎放送
http://urx3.nu/mv8t
ー知事「石木ダム行政代執行」検討【長崎県】ー
東彼・川棚町の石木ダム事業で反対地権者の土地や家屋の明け渡しを命じる収用委員会の裁決が出されたことを受け、
中村知事は強制的に収用する「行政代執行」も含めて対応を検討していく考えを示しました。
県の収用委員会は先月、反対地権者の土地や家屋を含む石木ダム建設予定地およそ12万平方メートルを明け渡すよう命じる裁決を出し、その期限を土地のみの場合は9月19日、建物の移転を伴う場合は、11月18日と定めました。
これを受けて中村知事は、「円満に土地を提供いただくことが一番望ましい形」としたうえで、強制的に収用する「行政代執行」も選択肢であり除外することは考えていないと明らかにしました。
一方、反対地権者は収用委員会の裁決に反発しており、期限内に土地が明け渡される見通しは立っていません。
◆2019年6月4日 西日本新聞
https://this.kiji.is/508387963791852641?c=110564226228225532
ー石木ダム明け渡し9、11月まで 長崎県収用委通知 建物有無で期限ー
長崎県と佐世保市が同県川棚町に計画する石木ダム建設事業で、反対地権者所有地の明け渡しを命じる県収用委員会の裁決書が3日、各関係者に届いた。5月21日付。ダム建設予定地からの移転を拒む13世帯などが所有する約12万平方メートルを11月18日までに明け渡すよう命じる内容。所有権は国に移り、建物を強制的に撤去する行政代執行が可能になる。
裁決書によると、土地の明け渡し期限は建物の有無で異なり、ない場合は9月19日、ある場合は11月18日。県に対しては、9月18日までに全ての地権者376人に補償額計約11億8300万円の支払いを命じた。
県は2015年7月以降、ダム本体部約3万平方メートルを含む計12万平方メートルについて県収用委に裁決を申請。収用委は土地の範囲や補償額が適切かどうか協議してきた。中村法道知事は取材に「円満に解決したい気持ちは変わらないが、行政代執行も選択肢の一つ。訴訟や工事の進み具合を勘案して総合的に判断したい」と語った。佐世保市の朝長則男市長は「土地をお譲りいただくことが最善だった。任意での解決に至らなかったのは大変残念な思いがある」との談話を出した。
■「抑え付けおかしい」反対の地権者
石木ダム建設のため、用地の明け渡しを命じる長崎県収用委員会の裁決書は、建設に反対する同県川棚町の地権者にも届いた。ダム建設反対を訴えて約40年。この日も地権者や支援者は、水没する県道の付け替え工事現場で座り込みを続けた。
その中の一人、岩本宏之さん(74)は午後4時半ごろ、「特別速達」と赤い印が付いた封筒を受け取り「いまさら驚きはない。変わらず、ここに住み続ける」。県が家を撤去するため重機を入れるような事態になれば「前代未聞の汚点を残す」と淡々と語った。
石丸勇さん(70)はあえて、届いた封筒を開かなかった。裁判でダムの必要性を争っているさなかの土地収用の手続きは、納得できない。「話し合う姿勢がないまま、地権者を抑え付けるやり方はおかしい」と話した。
◆2019年6月7日 長崎新聞
https://this.kiji.is/509556160542934113?c=174761113988793844
ー石木ダム、IR促進要望 佐世保市が長崎県に29項目ー
佐世保市は6日、県と同市が東彼川棚町に計画している石木ダムの建設やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致、国道205号の整備促進など29項目の施策を県に要望した。
石木ダム建設事業は、県収用委員会が反対地権者13世帯の宅地を含む未買収地約12万平方メートルの明け渡しを求める裁決を出し、全用地が収用可能となった。同市は年々渇水のリスクが高まり、水の安定供給は最低限の基盤として「確実な事業の進捗(しんちょく)を図ってほしい」と求めた。
IRは、県市一体となった取り組みの促進、周辺交通アクセスの改善を要望。国道205号は、針尾バイパスの早期完成、佐世保市-東彼杵町(東彼杵道路)の計画段階評価への早期着手を求めた。
朝長則男市長から要望書を受け取った中村法道知事は、石木ダムについて「治水対策、水源不足対策として必要不可欠。住民の安心安全のため早期に完成させる必要がある。地権者に協力してもらえるようさらにお願いする」と述べた。