国土交通省四国地方整備局が6月7日、愛媛県の野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)の操作規則を変更し、運用を始めたと発表しました。昨夏の西日本豪雨の際、野村ダムと鹿野川ダムが緊急放流を行い、肱川は大氾濫となり、8人が犠牲になりました。肱川流域では、今も水害の爪痕が深く、復興は道半ばです。
四国地方整備局の発表の概要は野村ダム管理事務所と山鳥坂ダム工事事務所のホームページに掲載されています。
◆「山鳥坂ダム工事事務所 野村ダム管理所 令和元年6月7日 野村ダム・鹿野川ダムの操作規則を変更しました。」
http://www.skr.mlit.go.jp/nomura/houdou/shiryou/kisya94.pdf
2ページ目の「野村ダム・鹿野川ダムの新操作規則」の操作イメージを見ると、
「※破線は、ダムの容量が満杯になることが想定される場合の流入量及び流下量(異常洪水時防災操作)」の注意書きで、満杯になって放流量(流下量)が急増するケースも書かれており、操作規則を変更しても危うくなるケースがあるようです。
◇2ページ目の画像
◇野村ダムの操作イメージ図を拡大
参議院国土交通委員会では、山添拓議員(共産)が6月6日、昨年の水害、新操作規則、新たに流域に建設される山鳥坂ダムなどについて国土交通省に問いただしています。過去五年間の肱川における河川改修の予算(約70億円)はダム事業の予算(鹿野川ダム改造事業と山鳥坂ダム建設事業の約367億円)の約五分の一にすぎず、肱川の水害の根本的な原因がダム偏重の治水対策にあったことが浮き彫りになっています。
肱川流域では新操作規則についての説明会が行われていますが、昨年の水害の検証には被災者が参加できず、ダムを管理する国交省四国地方整備局はこの間、責任逃れに終始しています。被災者からは行政への不信や疑問の声があがっています。
以下は、フェイスブックに投稿されている被災者の声です。
関連記事を転載します。
◆2019年6月8日 愛媛新聞
https://www.ehime-np.co.jp/article/news201906080012
ー野村・鹿野川ダム新操作規則運用開始ー
国土交通省四国地方整備局は7日、愛媛県の野村ダム(西予市)と鹿野川ダム(大洲市)の操作規則を6日付で変更し、運用を始めたと発表した。野村ダムでは、新たに事前放流の実施要領も策定し、大雨が予想される場合に洪水調節容量に加えて利水容量250万トンを空けておき、洪水調節に利用する。豪雨後に始めた運用を明文化した。
操作規則や、ただし書き操作(異常洪水時防災操作)要領などを、野村ダム管理事務所と山鳥坂ダム工事事務所のホームページで公開した。
新操作規則は、鹿野川ダムのトンネル洪水吐(ばき)設置による洪水調節容量拡大(740万トン)と野村ダムでの事前放流、大洲市東大洲地区の暫定堤防かさ上げを反映させた。
野村ダムでは、洪水調節容量(350万トン)の4割に達するまでの放流上限は毎秒300トンだったが、今後は流入量300トン以上の場合、300トンと超過分の79%を放流して引き上げていく。1000トンを上限とするが治水容量の8割(ダム水位が標高169.4メートル)に達してさらに増える見通しの場合、1000トン以上を放流する防災操作に移行する。
鹿野川ダムは、旧操作規則では、洪水調節容量の4割以上に達すると、放流量を菅田地区で家屋被害が出る毎秒600トン以上に引き上げていた。新規則では洪水調節容量の4割に変更はないが、洪水吐設置により容量自体が大きくなり、菅田地区は現状と比べより多くの洪水で被害が出なくなる。一方、引き上げる放流量は東大洲地区で氾濫しない850トンとしていたのを、暫定堤防整備に合わせ1150トンまで引き上げた。防災操作開始水位は洪水調節容量の80%だったが、新規則では87%となった。
西予、大洲両市は県の意見照会に新規則を評価する意見を文書で提出。整備局によると、県から5日付で「操作規則については問題ない」との意見を受けた。