八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

川辺川ダム中止表明10年 水没免れた熊本・五木村、集落存続に力

 川辺川ダムは、民主党政権が中止を表明してから、9月で10年になります。
 水没予定地を抱える五木村では、新たな地域づくりに取り組んでいることを以下の記事が伝えています。
 なお、国土交通省はいまだ川辺川ダム事業の中止手続きをとっておらず、水没予定地は国所有のままです。
 記事掲載の写真右に見える橋は、ダム湖ができることを前提とした湖面橋です。川辺川ダム事業は八ッ場ダム事業ほど関連工事が多くなかったこともあり、八ッ場に先行して本体工事の準備が進んでいましたが、流域住民の運動と熊本県の潮谷義子前知事の尽力により休止されました。この10年間、川辺と八ッ場は反対の道を辿りました。

◆2019年8月18日 産経新聞
https://www.sankei.com/region/news/190818/rgn1908180017-n1.html 
ー川辺川ダム中止表明10年 水没免れた熊本・五木村、集落存続に力ー

 熊本県で国が高度経済成長期から進めた川辺川ダム建設計画は、民主党政権が中止を表明してから、9月で10年になる。水没を免れた同県五木村は、人口減少や高齢化にあえぎながらも、地場産業を立て直して集落の存続を図っている。

 ◆林業を軸に振興

 「ここまで急激に人が減るとは…。村内で経済が回らなくなってしまった」

 在任12年になる和田拓也村長(72)は、地域活性化策への思いを巡らせながら、ため息をつく。

 昭和30年代に6千人超が暮らした五木村は、国がダム計画を発表した41年以降、水没予定地で離村する人々が目立った。人口は今年7月末時点で、1080人にまで減った。65歳以上の割合を示す高齢化率は、県の平成29年10月時点の集計で49%。県内45市町村の中で最も高い。

 かつて立ち並んでいた商店は衰退し、今は村外へ買い出しに行く住民が多い。

 代替の住宅地や道路整備と引き換えにダム建設に同意した村は今、林業を軸にした振興を目指している。

 27年に「森林で自立する村づくり」を宣言。自然乾燥させて強度を高めた地元産のスギで造る「五木源住宅」を、村の森林組合や設計事務所などと連携して売り込む。

 28年4月に起きた熊本地震の被災者向けモデル住宅に選ばれたこともあり、これまでに村外を中心に40棟ほどを建てた。

 ◆上向く観光客数

 村は県と定めた振興計画に基づき、観光にも力を入れる。

 27年以降、国が買収した水没予定地を賃借し、国の交付金も活用しながら、村営公園「五木源パーク」や、第三セクター方式の宿泊施設を整備した。

 村内で川遊びや山登りを手軽に楽しめることも好評で、村ふるさと振興課によれば、20年に12万951人だった観光客数は、29年に約44%増の17万4271人となった。

 首都圏で町おこしの仕事をしていた日野正基さん(32)は昨年、村出身の妻、望生さん(26)と一緒に移り住んだ。

 地域活性化を手掛ける会社を立ち上げ、遠方の大学生に村での就業体験をあっせんしたり、地元産の野菜やシカ肉を使った料理を提供するカフェを営んだりしている。

 「清流があり、人も優しい。人口が減る中でも、みんなが楽しく暮らせる村をつくりたい」。日野さん夫妻は前を向く。

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【用語解説】川辺川ダム建設計画

 日本三大急流に数えられる熊本県の球磨川流域で水害が相次いだことを受け、国は昭和41年、支流の川辺川にダムを設ける計画を発表した。建設賛成派と環境破壊などを懸念する計画反対派が対立。蒲島郁夫知事は平成20年9月、計画反対を表明した。翌21年9月17日、民主党政権の前原誠司国土交通相も中止方針を示した。ダムに代わる治水対策を、国と流域自治体が協議している。