日本軽金属が管理する山梨県の雨畑ダムは、堆砂率が約93・4%(2016年度)と、全国の中規模以上のダム約500カ所の中で最悪の状況にあります。その影響は、下流の駿河湾のサクラエビ不漁やダム上流域の水害に及んでいます。国土交通省は今年8月、雨畑ダムの堆砂について、日軽金に抜本的な対策を求める行政指導を行いました。
これを受けて、昨日(9/3)、日軽金は山梨県庁で非公開の検討会「雨畑地区土砂対策検討会」を開催しました。この検討会には国土交通省の担当者も参加したとのことですが、静岡新聞の報道によれば、議論は「抜本的な対策」の具体的な中身には至りませんでした。以下の記事は、日軽金の執行役員が語ったという、「全部撤去となると恐らく現実的な案を出せないと思う。」との言葉を伝えています。
◆2019年9月4日 静岡新聞
https://www.at-s.com/sp/news/article/politics/shizuoka/677081.html
ー雨畑ダム堆砂「全撤去は困難」 日軽金、検討会開催ー
駿河湾サクラエビの不漁を受け静岡、山梨両県が濁りの実態調査を進める雨畑ダム(山梨県早川町)で堆砂が深刻化し、水害が頻発している問題で、ダムを管理する日本軽金属は3日、対策を協議する検討会の初会合を山梨県庁で開いた。同社は会議後、土砂の全部撤去の案は困難と説明。「どの程度の土砂を出さなければならないのかを国などの意見を聞き決めたい」と述べ、問題の長期化を示唆した。
国は8月の行政指導で堆砂問題の「抜本的解決」を求めている。出席した国土交通省の担当者は「日軽金には可及的速やかな計画書の提出を求めたい」と注文した。
会合は非公開。同社蒲原製造所(静岡市清水区)の幹部と国交省、山梨県、早川町の関係者ら20人程度が出席した。冒頭、同製造所の敷根功所長=執行役員=が「昨年より早川町では浸水被害を発生させてしまい、誠に申し訳ない」と陳謝した。
終了後、取材に応じた同社関係者によると、会議では山梨県の指導で8月から実施している、ダム上流の雨畑川の河道の掘削や土のうの積み上げなどの応急措置について最初に説明。その後、約1300万立方メートルに上る堆砂の抜本的解決について話し合ったが、具体的方法や数値目標にまで議論は及ばなかったという。
敷根所長は「(出席者からは)『どこまで覚悟があるのか』ということも含め質問があった」と述べた。
■抜本的対策「決めかねる」 日軽金執行役員一問一答
雨畑ダムの堆砂率は約93・4%(2016年度)で、全国の中規模以上のダム約500カ所の中で最悪の状況だ。
堆砂は富士川水系の濁りの一因になっているとみられている。
3日に山梨県庁で開かれた雨畑地区土砂対策検討会後、日本軽金属蒲原製造所長の敷根功執行役員は国や同県などから抜本的な対策を求められていることに対し、「決めかねる」とした。
敷根氏との一問一答は次の通り。
―国から求められた「抜本的解決」の内容は。
「撤去量については現実的な対策案を作らなければならない。全部撤去となると恐らく現実的な案を出せないと思う。どの程度の土砂を出さなければならないのかを国などの意見を聞き決めたい」
―いつまでに出すのか。
「(国の行政指導の内容は)結構ハードルの高い内容。関係機関との調整もあり、今の時点で策定のスケジュールは言えない。基本的には日軽金が責任を持って中身を策定するということになる」
―初会合では国や山梨県からどんな意見が出たのか。
「われわれがどれくらい(土砂を)取ればいいのかということについて、正直決めかねるところもある。それに対して『どこまで覚悟があるのか』ということも含めていろいろな意見は出た」
―具体的には。
「『抜本的な対策』というところで言うと、われわれが認識している『抜本的』とのすり合わせ。どこまでを目標にするか、というところ。まだ何も決まっていないので言えないが『今後目標を決めていかなければならない』という意見も出た」
◆2019年9月3日 テレビ山梨
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190903-00000001-utyv-l19
ーおよそ9割が土砂で埋まり浸水被害も 土砂堆積のダム 初の対策検討会ー
山梨県早川町の雨畑ダムに大量の土砂が堆積し、上流地域で水害が起きている問題で対策検討会が発足しました。
ダムを管理する会社が中心となり、国や県などを交え抜本的な解決を目指します。
早川町の雨畑ダムは、およそ9割が土砂で埋まり上流の雨畑川で河床が上昇。
周辺では大雨の際、浸水被害があり国は8月13日、対策の計画をまとめ報告するよう求めました。
これを受けてダムを管理する日本軽金属は9月3日、抜本的な解決に向けて国と山梨県、それに地元、早川町を交えた対策検討会を設けました。
話し合いは、冒頭を除いて非公開で行われましたが、日本軽金属によりますと堆積した土砂をどの程度まで減らすか、具体的な目標を設定して進めていくことなどを決めたということです。
日本軽金属ではこの検討会の意見を参考に責任持って対策計画を策定するとしています。
なお、雨畑ダムは国の定期検査において2014年から4回連続で「直ちに改善が必要」とされていましたが、これまで抜本的な対策が図られていませんでした。
◆2019年9月3日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/social/shizuoka/676653.html
ー雨畑ダム堆砂、3日に検討会 日軽金、国などに参加求めるー
駿河湾サクラエビの不漁を受け静岡、山梨両県が濁りの実態調査を進める雨畑ダム(山梨県早川町)の堆砂率が9割を超え、周辺で水害が頻発している問題で、ダムを管理する日本軽金属(東京都)は2日、国など関係機関と対策について話し合う検討会を設置、初会合を3日に山梨県庁で開くと発表した。ダムを監督する国土交通省の担当者は取材に対し「日軽金側は堆砂問題の責任を認めている」と明らかにした。
国交省は8月、日軽金に問題の抜本解決を求める行政指導をしていて、検討会設置はそれを受けた対応の一環。由比港漁協(静岡市清水区)の関係者がダムを視察するなど、ダムを起点とする同社の水力発電用導水管を経て駿河湾に強い濁りが注いでいる問題を危惧する向きが広がっている。
検討会の名称は「雨畑地区土砂対策検討会」で、国や山梨県などに参加を求めた。同社蒲原製造所(同)は設置の理由について「2014年より4回実施されている(国の)検査結果が連続して(3段階のうち最も深刻なレベルの)A判定を受けているため」と説明。国交省によると、「A判定」は「直ちに改善措置が必要」な段階とされる。
ダムのある早川水系の濁りの実態調査を静岡県と合同で行う山梨県幹部の一人は「膨大な堆積土砂の処理をどのように行うかを検討する過程で、水質などの環境も議論することになるのでは」と述べた。
国交省の担当者は「堆砂の処理方法など日軽金が国に対して問題の抜本的解決に向けた計画書を提出するに当たり、技術的な助言を求める場と解釈している」とした。その上で「元来、周辺の土砂流入が極めて多い地域で、ダムをこの先どのように維持するかはひとえに日軽金サイドの経営判断となる」と解説した。