八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダム、試験湛水10月頭の開始めざすと国交省

 八ッ場ダムの試験湛水が来月上旬に始まる予定と報道されました。
 ダム予定地を抱える長野原町議会の八ッ場ダム対策会議で国交省八ッ場ダム工事事務所長が答えたと、今朝の上毛新聞と朝日新聞が伝えています。

 町議会の八ッ場ダム対策会議は、国交省八ッ場ダム工事事務所が町議らの質問に直接答える重要な場ですが、非公開で行われているため、その内容が報道されることはほとんどありません。
 国交省は2016年に行われた八ッ場ダム基本計画の五度目の変更の際に、八ッ場ダムの関係都県などに配布した資料の中で、2019年度下半期(2019年10月~2020年3月)に試験湛水を行い、19年度中に八ッ場ダム事業を完了させると説明していましたが、10月まで残すところ二週間という現時点でも、試験湛水の開始時期を公式には発表していません。
 このため、9月13日に開かれた町議会の八ッ場ダム対策会議で試験湛水の開始時期を明らかにするよう求められ、非公表の会議における国交省の回答が大きく報道されることになったのでしょう。

下の表=国交省関東地方整備局「事業評価監視委員会配布資料」より10ページ
    (八ッ場ダム基本計画第五回変更に関する報告、2016年8月12日)

 しかし、以下の朝日新聞の記事には、「水没予定地周辺では遺跡発掘調査が続くなどし、湛水の明確な開始時期は未定だという。」とあり、上毛新聞も「10月頭を目指す」との国交省八ッ場ダム工事事務所長の説明を伝えており、試験湛水の開始時期は依然として明確ではないようです。

 さらに、上毛新聞にあるように、「(ダム湖周辺には)傾斜計や地下水位計などの契機を設置して異変を察知し、地滑りが確認された場合は湛水を止める」ことになっています。
 ダム湖周辺に多くの住宅と交通網がある八ッ場ダムは、他の多くの山奥のダムよりはるかにダム湖周辺の安全確保が求められますが、残事業費が限られる中、八ッ場ダムの安全対策はここにきて後退してきています。
 当会では、この問題の現状を把握するとともに、国交省に万全の対策を求めています。

〈参考ページ〉八ッ場ダムの代替地安全対策および地すべり対策に関する再質問書

◆2019年9月14日 朝日新聞群馬版
https://digital.asahi.com/articles/ASM9F5VQKM9FUHNB00M.html?iref=pc_ss_date
ー八ツ場ダム試験湛水 国交省、10月にも開始意向ー

  国が来春の完成を予定する八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)で、国土交通省八ツ場ダム工事事務所は13日、秋に始めるとしてきたダムに水をためるテスト「試験湛水(たんすい)」を10月初めにも開始する意向を明らかにした。試験湛水でダム本体やダム湖周辺の安全を確かめたうえで、来春以降、ダムとして使い始める予定。

 13日に非公開で行われたダム対策会議で同事務所の朝田将所長が町議らの前で明らかにした。

 同事務所によると、湛水はダム本体の中央下にあるゲートを閉め、吾妻川上流域の水をためる。最高水位までためた後、最低水位まで下げ、ダム本体の強度や、民家や施設などが建つダム湖周囲の造成地などの安全を確かめるという。

 ただ、水没予定地周辺では遺跡発掘調査が続くなどし、湛水の明確な開始時期は未定だという。朝田所長は朝日新聞の取材に「ダムを受け入れてきた地元住民のためにも一つの目標時期を示したかった。ダム建設後の管理も含め責任を持って臨みたい」と話した。(丹野宗丈)

◆2019年9月14日 上毛新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20190914-00010001-jomo-l10
ー八ツ場ダム 10月上旬に試験湛水ー

  本年度中の完成を控える八ツ場ダム(群馬県長野原町)の建設事業で、ダムに水をためる試験湛水(たんすい)を国土交通省が10月上旬に始める予定であることが13日、分かった。約半年間かけて水位を上下させ、ダム本体や貯水池周辺などの安全性を確認する。70年近く地域を翻弄してきたダム建設事業が、完成に向けて大詰めを迎える。

 関係者によると、13日に非公開で開かれた同町議会八ツ場ダム対策会議で、同省八ツ場ダム工事事務所の朝田将所長が方針を説明した。試験湛水の開始時期を巡り、国交省はこれまで、「秋から」と説明していた。湛水前の景色を見ることができる期限がより明確になったため、湛水の開始に向けダム見学者のさらなる増加が見込まれる。

 試験湛水では、ダム堤体内の排水路のゲートを下げ、吾妻川の流れをせき止める。ダム湖の水位を常時満水位(583メートル)まで上昇させた後に1日1メートルのペースで水を抜き、最低水位(536.3メートル)まで降下させる。傾斜計や地下水位計などの計器を設置して異変を察知し、地滑りが確認された場合は湛水を止める。

 同事務所の担当者は開始時期について「秋からという方針通り。10月頭を目指すという、より詳細な目安を示した。今後、地元の方々に説明したい」と話した。雨で吾妻川の水量が多くなるとゲートが下げられないため、詳細な日付を示すのは難しいという。

 八ツ場ダムは堤高116メートル、堤頂長290.8メートルの重力コンクリートダム。流域面積は711.4平方キロメートルで利根川水系ダムで最大となる。2015年に本体の基礎掘削に着手し、16年にコンクリート打設が始まった。今年6月に打設が完了し、同事務所が関係者を招いた式典を開いた。

 大滝ダム(奈良県)や滝沢ダム(埼玉県)など、試験湛水中に地滑りが発生し計画が遅れたダムもある。八ツ場ダムについては、市民グループや超党派の国会議員らが地滑りなどの対策に問題があると指摘し、国に詳細な説明を求めている。

写真下=湖面橋(不動大橋)を挟んで、道の駅「八ッ場ふるさと館」の上流側にある林地区・勝沼の地すべり地(吾妻川の右手)。地すべり対策の押さえ盛り土が吾妻川に迫るように施行されている。

写真下=林地区・勝沼の上を走る国道沿いに設置された地すべり計。2016年の国交省資料によれば、写真に見える吾妻川対岸の堂岩山麓も地すべり対策が予定されていたが、2017年に対策箇所から除外された。