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長崎・山梨県知事ら、雨畑ダム問題で日軽金指導を国に要望

 日本軽金属が管理する山梨県の雨畑ダムに大量の土砂がたまり、水害や河川環境悪化との関係が問題視されていることから、国交省は8月に日軽金に抜本的な対策を求める行政指導を行いました。
 これを受けて、日軽金は9月3日、山梨県庁で非公開の検討会を開いたものの、日軽金は具体的な抜本的対策を明らかにしていません。これまで駿河湾のサクラエビ不漁をきっかけに静岡県が声をあげてきましたが、山梨県でも問題意識が高まってきているようです。

〈参考記事〉「雨畑ダム堆砂「全撤去は困難」と日本軽金属」
      「堆砂が進行する雨畑ダムの定期検査結果(国交省開示資料)」

◆2019年9月13日 毎日新聞山梨版
https://mainichi.jp/articles/20190913/ddl/k19/040/181000c
ー雨畑ダム堆積 「早期改善」日軽金指導を 知事ら国に要望 ー

 早川町の雨畑ダムで土砂が堆積(たいせき)し上流の雨畑川の河床が上昇している問題で、長崎幸太郎知事と辻一幸・早川町長は12日、国土交通省を訪れ、ダム設置者の日本軽金属(東京)に早期の改善を指導するよう同省に要望した。

 この日の要望は、今月3日に日軽金や県、国交省の担当者が出席した「雨畑地区土砂対策検討会」での日軽金の対応に「危機感が足りない」(長崎知事)と感じたことから行ったという。長崎知事と辻町長は、技術系職員トップである山田邦博技監に要望書を手渡し、日軽金に水利権を許可している国交省に指導を求めた。

 面会後、長崎知事は「検討会で日軽金から示された計画は悠長で地元の安全を軽視している。我々の危機感は国に理解してもらったと思う」と話した。辻町長は「(日軽金の対応は)地元として理解しがたい。地元住民は長い間不安を抱えている。日軽金にはしっかりした対策を練ってもらいたい」と述べた。

 雨畑ダムは約9割に土砂が堆積していることから上流の雨畑川に流れ込んだ土砂が下流に流れずに河床が上昇しており、民家などへの浸水被害が出ている。台風が接近した今年8月にも家屋が浸水した。県と国交省は日軽金に対し行政指導を行い、同社は応急対策として堤防などの整備を盛り込んだ計画書を県に提出している。【高田奈実】

◆2019年9月13日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/special/sakura_ebi/008/680912.html
ー「日軽金へ指導徹底を」山梨知事、国に要請 雨畑ダム堆砂ー

 駿河湾サクラエビの深刻な不漁をきっかけに静岡、山梨両県が濁りの実態調査を進める雨畑ダム(山梨県早川町)について、長崎幸太郎山梨知事は12日、国土交通省を訪れ、堆砂が9割に達し、水害が頻発するダムの堆砂の解決に向け、管理する日本軽金属への指導を徹底するよう要請した。長崎知事は要請後、同社の対応を「誠意がなさ過ぎる」と批判した。

 国は8月、同社に堆砂の「抜本解決」を行政指導。しかし、今月上旬に同社が国や山梨県に呼び掛けて開いた検討会後の記者とのやりとりの中で、幹部が国の指導について「結構ハードルが高い」などと発言。関係者の間で反発が起きていた。

 長崎知事は山田邦博技監に現場の写真や堆砂の推移を示したグラフを掲げながら「日軽金は地元と危機感を共有できていない。10年も20年もかけて運び出すという計画では不安だ」と訴えた。

 要望書は、計画の速やかな策定、実行の指導を「強く要望する」と記した。同行した早川町の辻一幸町長も「一時的なことではなく雨畑湖を見直してもらいたい」と述べた。水管理・国土保全局にも同様の説明を行った。

 長崎知事は「危機感は国交省幹部に伝わった」と振り返った。一方、堆砂除去のための財政出動の可能性を問われ「筋としてどうか。日軽金がやらなければいけない話」と否定的な考えを示した。

◆2019年9月13日 静岡新聞
https://www.at-s.com/news/article/special/sakura_ebi/008/680925.html
ー濁りとダムの関係慎重 山梨県知事一問一答ー

 県内サクラエビ漁師が危惧する雨畑ダム(山梨県早川町)の濁り。濁水は水力発電用導水管を経て、日本軽金属蒲原製造所(静岡市清水区)から駿河湾に注ぐ。ただ、長崎幸太郎山梨県知事はこれまでの記者会見や12日の国への要望で、ダム周辺の災害防止で日軽金を批判するが、ダムの堆砂と濁りの因果関係の有無には慎重な姿勢を示している。
 長崎知事の11、12両日の発言は次の通り。

 ―山梨県の釣り愛好団体がダム堆砂の生態系への影響調査を国に要望したが。
 「濁りが原因で釣りづらくなっているか現時点では判明していない。濁りの問題とダムの因果関係は分からないのが現状だ。国土交通省がいろいろと調べると思う」

 ―国交省に直接要望に訪れたわけは。
 「先日の検討会を受け、日軽金は極めて長期間をかけ、低レベルの安全度の堆砂除去しか考えていないと認識した。住民の生命財産について感度が鈍すぎる。誠意もない」

 ―日軽金の特にどういう点に怒りを感じているのか。
 「日軽金が『抜本対策』として考えているダムの堆積除去のレベルと期間だ。余りにも常識からかけ離れた悠長なものだった。日軽金とわれわれの認識には相当な開きがある」

 ■早川町長「濁ってない」 報道に不満あらわ
 山梨知事に同行し、国土交通省を訪れた早川町の辻一幸町長は12日、富士川支流の早川に強い濁りがあるとの報道に「迷惑だ」との認識を示した。
 辻町長は、釣り愛好団体が国交省に提出した要望書に対する受け止めを記者に問われ「早川は濁ってない。ちゃんと調べてくれ。濁っているとマスコミに書かれて迷惑、不名誉なことだ」と述べた。
 さらに、ヤマメやイワナが早川で育ち、釣り人が来ていると指摘し「その現実をどう書くのか。迷惑千万な話ですよマスコミは」と強調した。