八ッ場ダム最後の”試練” 試験湛水10月1日以降

 昨日、国交省八ッ場ダム工事事務所は報道関係者を対象とした八ッ場ダムの現場見学会を開きました。
 今回の見学会では、ダム堤付近の名勝・吾妻峡の水没区間の見学と10月に始まる「試験湛水」の説明が目的であったようで、各紙が現場の映像や国交省の説明を掲載しています。

 以下の各紙の記事によれば、試験湛水の開始は10月1日以降、満水は12月~1月頃が想定されているようです。
 試験湛水の主な目的は、ダム湖周辺の地盤の安全を確認することですが、地盤が不安定になり地滑りなどを誘発する可能性があるのは、ダム湖の水位を下げる時です。

 ダムは洪水期(7/1~9/30)には洪水に備えて貯水池の水位を下げます。(参考→国交省利根川ダム統合管理事務所HPより「洪水期と非洪水期の貯水池運用」
 地すべり地や人工造成地に囲まれた八ッ場ダム湖では、試験湛水の時だけでなく、その後も地盤の安全性を注視していく必要があります。

右写真=八ッ場ダムのダム堤と水没地を流れる吾妻川を湖面橋となる八ッ場大橋から撮影。八ッ場大橋の橋桁が吾妻川に横一文字に影を落としている。

 紙面より関連記事を転載します。

◆2019年9月28日 上毛新聞 一面
ー八ツ場ダム 最後の“試練” 試験湛水前に現場見学会ー

  八ツ場ダム(群馬県長野原町)の試験湛水が間近に迫り、国土交通省八ツ場ダム工事事務所は27日、現場見学会を開催。報道関係者ら13人が、ダムの安全性を確かめる試験湛水の概要などについて説明を受けた。

 上毛新聞 社会面
ー八ッ場ダム 湛水「1日以降」 冬に満水見通しー 

 八ツ場ダムの試験湛水を前に開かれた27日の報道陣向け現場見学会。試験湛水の開始時期について、担当者は「10月1日以降に、天候や吾妻川の状況を見て開始する」と説明した。雨で川の流量が増加すれば、流れをせき止めるゲートを降下できないため、詳細な日程を示すことは難しいという。天候次第だが、冬には満水となる見通しも示された。

 見学会ではバスで湛水予定地に入った。ダム堤体近くで説明を受け、旧国道145号線を歩いた。
 担当者によると、ダム上流面に設置されたゲートを1日以降に降下して試験湛水を開始する。約半年間をかけて水位を上下させ、堤体や基礎地盤、貯水池周辺の斜面の安全性を確認していくという。

 常時満水位(標高583㍍)まで水をためた後、1日当たり1㍍以内で水を抜き最低水位(同536.3㍍)まで下げる。満水となる時期について「大雨や台風となれば水量が変化するのであくまでも天候次第だが、12月、1月ごろ」と説明した。水位の状況については今後、同事務所ホームページで毎週データを公表する。

 安全対策については、計器による計測や巡視を通じ、水位の変動に伴う異変を監視する。ダム堤体は漏水量や変形量、貯水池周辺は地下水位や傾斜などを確認。地滑りなどが確認された場合は湛水を止め、安全性を確保する。

 同事務所の遠藤武志副所長は「地元の皆様に理解と協力をいただき、試験湛水の準備が整った。安全性をしっかり確認して無事完成の日を迎えたい」と話した。

写真=水没する旧吾妻線の鉄橋と旧国道145号

◆2019年9月28日 朝日新聞
https://digital.asahi.com/articles/ASM9W30SCM9WUHNB001.html?iref=pc_ss_date
ー群馬)八ツ場ダム 10月1日にも試験貯水開始ー

 国が来春の完成を予定する八ツ場(やんば)ダム(群馬県長野原町)の試験貯水を、最短で10月1日にも始める可能性があると、国土交通省八ツ場ダム工事事務所が27日明らかにした。これまで地元に対して「10月初め」と説明していた。ダム湖の湖底となる水没予定地への一般向けバスツアーは、29日で終了。所々の橋や道路が水没前の姿を残していたが、間もなく湖底に沈む。

 同事務所によると、開始日はダム上流域の天候や吾妻川の流量により判断する。ダム本体中央下のゲートを閉じ、吾妻川をせき止める。3~4カ月で最高水位の標高583メートルまで水をため、その後、原則1日1メートル弱ずつ水を抜き、最低水位の同536メートルまで下げる。半年間で、ダム本体の強度や、基礎地盤とダム湖周辺の斜面の安全性などを確認するという。

 試験貯水の開始日は決まり次第、地元住民にチラシを配布して知らせる予定。

 奈良県川上村の大滝ダムでは試験貯水を始めて間もない2003年4月、地層に水が入り込んだ影響で家屋や道路に亀裂が発生。ダム湖近くの37世帯が移転を強いられ、その後ダム完成まで約10年を要した。08年に完成予定だった埼玉県秩父市の滝沢ダムは、試験貯水中に斜面で亀裂が見つかり、完成が3年遅れた。八ツ場ダム工事事務所は「引き続き安全に留意して進めていく」としている。

 27日はダム本体周辺の水没予定地で報道向け見学会があった。山腹の川原湯温泉街の面影は皆無。吾妻川の川べりに樹木が残る以外、ほぼ更地だ。かつては国道145号やJR吾妻線が通っていた橋は、往時の姿をとどめる。同事務所の遠藤武志副所長は「これらはダム湖の運用管理に影響はないので、そのままにします」と話した。(丹野宗丈)

写真=かつての国道145号とJR吾妻線の橋は、そのまま湖底に沈む。奥に見えるのは長さ494メートル、高さ106メートルの現・八ツ場大橋=2019年9月27日午後3時7分、群馬県長野原町

◆2019年9月27日 毎日新聞社会面
https://mainichi.jp/articles/20190927/k00/00m/040/234000c
ー八ッ場ダムの湖底を公開 10月から試験湛水、見られる期間は残りわずかー

 国土交通省八ッ場ダム工事事務所は27日、10月に開始する八ッ場ダム(群馬県長野原町)の試験湛水(たんすい)を前に、報道陣向けの現地見学会を行った。報道関係者らが国交省の担当者とダムの底を歩いた。担当者によると、試験湛水が始まると最低水位以下まで水位が下がることは無く、ダムの底を見られるのは残りわずかな期間しかないという。【西銘研志郎】

 試験湛水とは、ダムの本格運用開始前に最高水位まで水をためて、ダム本体や基礎地盤、周辺の山などの斜面の安全性を確認するもので、漏水状況や地滑り対策箇所などがチェックされる。試験湛水では最高水位まで水をためた後、1日に約1メートルずつ水位を下げていくが、最低水位以下まで水位を下げることはないため、今回、報道陣にダムの運用直前の「湖底」の状況を確認してもらう目的で公開された。

 報道陣は川原湯湖畔公園駐車場からバスに乗り、約10分かけて最低水位地点より低い場所に位置する旧国道145号線付近まで向かった。現場ではダム本体の下部に設けられた「締切(しめきり)ゲート」と呼ばれる水門が確認できた。試験湛水が始まるとこのゲートは閉じられ、その後再び開けられることはないという。

 担当者によると、試験湛水は10月1日以降に開始予定だが、天候やダムに水を注ぎ込む吾妻川の状況を確認して判断するため、正確な日程は未定という。試験湛水が始まると3~4カ月程度で満水になる見込みという。

写真=試験湛水を前に公開された八ッ場ダムの水没地域。下は吾妻川=群馬県長野原町で2019年9月27日午後3時3分、藤井太郎撮影

◆2019年9月28日 読売新聞群馬版
ー八ッ場ダム貯水安全試験 来月上旬ー

 本体工事がほぼ完了した八ッ場ダム(長野原町)で、国土交通省は10月上旬にも、ダムに水をためて安全性を確かめる「試験湛水」を始める。半年ほど実施した後、来春からは治水と1都4県の利水、発電の多目的ダムとして運用を始める。

 試験湛水では、最高水位の標高583㍍地点まで水をためた後、最低水位の536㍍地点まで下げる。ダム本体の安全性のほか、貯水池周辺の斜面で地滑りが起きる危険性はないか、計器などで確かめる。

 具体的な開始日程は国交省八ッ場ダム工事事務所が天候や吾妻川の流れの状況をみて決める。最高水位に達するには3~4か月かかるとみられ、その後は1日1㍍ずつ水位を下げていく。同事務所はホームページなどで毎週火曜日に水位を公表する予定だ。

 27日には報道機関向けの現地見学会が開かれた。ダムの底に沈むエリアには旧JR吾妻線の陸橋や旧国道145号の路面が残るが、貯水に影響はないという。
 
 試験湛水に伴い、同省が2017年4月から続けてきたダムの無料見学ツアーは今月末で終了する。夜間の工事現場や水没予定地の見学が話題となり、17年度は約2万9000人、18年度は約5万5000人が参加した。1952年のダム計画浮上後、住民の流出で人口が3分の1に減った地元にとっては、新たな観光資源となった。

 10月以降は、地元の観光協会などが有料でダム周辺の見学会を続ける。見学会(約90分間)は1日3回、各回1団体10~50人を対象に行う。木曜定休。12月25日までの参加者を先着順で募集しており、料金は1人300円。問い合わせは長野原観光協会(0279-82-5815)へ。

写真=貯水後にダム湖の底となるエリアに立つ国交省職員ら(27日、長野原町で)