八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ッ場ダムの代替地安全対策等に関する再公開質問への国交省回答

 八ッ場ダム事業では、ダム湛水によりダム湖周辺の地盤が変動し、地すべり等が発生することを防ぐため、安全対策工事が行われましたが、事業の最終段階に入って対策箇所が減らされたり、対策工法がより安価な工法に変更されるなどの事実が判明しました。このため、当会では、今年3月に国交省関東地方整備局宛てに公開質問書を送りました。(公開質問書の内容はこちらに掲載しています。)

 これに対して、国交省八ッ場ダム工事事務所から4月に回答が届きましたが、曖昧な点が多かったため、5月には超党派の国会議員連盟「公共事業チェック議員の会」が国交省本省に対して公開ヒアリングを行い、その後も、資料請求、再質問などを行ってきました。
 8月に公共事業チェック議員の会が国交省に提出した再公開質問書に対して、このほど回答が届きましたので、お知らせします。再公開質問書の内容はこちらをご参照ください。

 再質問と国交省の回答内容を以下に整理しました。再質問の部分を黄色、国交省の回答部分(PDFデータ)を青色で色分けしてあります。

前回の質問1-1〈代替地の安全対策を大幅に後退させた理由〉について
〇再質問1―1-1
 2016年の八ッ場ダム基本計画変更時には「川原湯①は鋼管杭、②は鋼管杭、③は鋼管杭、川原湯④は鋼管杭、長野原①はアンカー工法で安全対策を実施することが別紙1のとおり明記されていましたが、現在は川原湯①、②、③はソイルセメント置換盛土工等に変わり、川原湯④と長野原①は対策を実施しないことになりました。このように重要な変更をだれがいつ決定をしたのか、経緯がわかる行政文書を提出してください。

〇再質問1-1-2
① 「河川砂防技術基準(案)同解説(設計編I)」の何条何項に基づいて代替地安全対策を行ったのか、依拠した条項およびその該当ページを明らかにしてください。
② 「宅地造成等規制法施行令」の何条何項に基づいて代替地安全対策を行ったのか、依拠した条項およびその該当ページを明らかにしてください。
③ 「河川砂防技術基準(案)同解説(設計編I)、宅地造成等規制法施行令等」に書いてある「等」とはどのような法令・基準なのか、依拠した法令・基準の名前とその条項よびその該当ページを明らかにしてください。

再質問1-1-1と1-1-2への国交省回答
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2019/10/b3a8a0e5d2a4ef338548dc8d810c671e.pdf
前回の質問1-3(現在の代替地対策工事)について
〇前回の質問1-3「川原湯地区①、②、③で実施した代替地対策工事の内容がわかる図面(平面図、横断図等)を提供してください。」に対して、平面図、横断図等が提供されましたが、PDFの解像度が低く、小さな字を読み取ることができません。
再要請(1―3)  ついては、解像度が高い鮮明な平面図、横断図等をあらためて提供してください。
前回の質問1-4〈川原湯地区①、②、③の鋼管杭・深礎杭工法を不採用とした根拠への疑問〉について
〇再質問1―4-1
① 別紙2のスライド10の図-4(平成26年度報告書(日本工営)の相関式が妥当であることを説明してください。
② 決定係数R2=0.2172に相関があるとする根拠(散布図を含め)を説明してください。
③ なぜ安全側の数値であるc=2~5 KN/m2 を採用しなかったのか、その理由を説明してください。

〇再質問1―4-2
 そこで,以下の質問にもお答えください。
① 図-5(別紙2のスライド11)の相関式が妥当であることを説明してください。
② 決定係数R2=0.2867に相関があるとする根拠(散布図も含め)を説明してください。
③ なぜ安全側の数値であるφ=30°を採用しなかったのかその理由を説明してください。

前回の質問1-5〈川原湯地区①、③で採用したソイルセメント置換盛土工への疑問〉について
〇再質問1―5-1
「技術的な指針等」とはどのような法令・基準なのか、依拠した法令・基準の名前とその条項よびその該当ページを明らかにしてください。

〇再質問1―5-2
酸性水が予想されるダム周辺の地すべり対策として,ソイルセメント置換盛土がこのようなギリギリの安全率(Fs=1.01~1.03 一般的に安全率は少数以下2桁で表現します)でも問題ないとする文献を示してください。

再質問1-4-1,2と1-5-1,2への国交省回答
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2019/10/4f3ccd3b1961563a31d9cb6ab2507926.pdf
前回の質問1-6〈川原湯地区②で採用した置換コンクリート+プレキャスト擁壁工への疑問〉について
〇再質問1ー6
① 置換コンクリート+L型擁壁背後に盛土した土砂全体のすべり出し(八ッ場火山岩類と盛土の境界をすべり面とする地震時に発生する地すべり)に関する検討結果を示してください。
② 置換コンクリート+L型擁壁を乗せた円弧すべりを想定していますが,八ッ場火山岩類をすべり面としているので,粘着力は盛土の50倍の強さを有するC=500KN/m2,内部摩擦角はφ=35°(盛土と同じ)の土質定数となっています。
このような地すべりが想定される根拠を示してください。
③ すべり面は円弧すべりとなっていますが,非円弧すべりにならない根拠を示してください。
前回の質問1-8(信頼できるデータに基づかない長野原地区③の除外への疑問)について
〇再質問1―8
① 長野原地区③の盛土において使用したこの4点の盛土材料の使用割合を明らかにしてください。
② H26年報告書(日本工営)の図-6(別紙2のスライド27)に掲載されている粘土含有率と粘着力cの決定係数はR2=0.384となっていますが,相関があるという根拠(散布図を含め)を示してください。
③ 図-6はデータが4点しかありませんが,この数で統計的な意味があるとする文献を提示してください。
④ 図-6のデータを見る限りでは逆相関(粘土含有率が増えると粘着力が小さくなる)の関係があるようですが,逆相関式(直線の方程式の傾きがマイナス)の検討をお願いいたします。
⑤ 安全側に設計するためには,統計的に意味がない4点から相関式を求めるより,最も小さい粘着力を採用するのが妥当と思いますが,そのようにしなかった理由を明示してください。
⑥ H26年度報告書(日本工営)の図-7(別紙2のスライド28)に掲載されている締め固め度と内部摩擦角φの相関図には相関式がありません。そのため,ここでは平均値を採用しています。このように場所によってφの決定方法を変えるのが妥当とする根拠を示してください。
⑦ c,φをそれぞれ別々に求める方法を採用したことが妥当であることを示す基準書を提示してください。
前回の質問2-1(地すべり対策を大幅に後退させた理由)について
〇再質問2-1
① 2011年の八ッ場ダム検証時には10箇所で地すべり対策を実施することになっていましたが、現在は対策箇所が5箇所に半減しています。このように重要な変更をだれがいつ決定をしたのか、経緯が分かる行政文書を提出してください。
②「技術的な指針等」とはどのような法令・基準なのか、依拠した法令・基準の名前とその条項よびその該当ページを明らかにしてください。
前回の質問2-3(現在の地すべり対策工事)について
〇再要請2―3
① 解像度が高い鮮明な平面図、横断図等をあらためて提供してください。
② 横断図はすべてすべり面を記入したものを提供してください。
前回の質問2-5(川原湯(上湯原)等4地区を対策不要とした理由への疑問)について
〇再質問2-5
① 軟岩だから地すべりしないという根拠を示してください。
② 試験箇所の91%が3MN/m2以下の値を示し,地盤工学会基準では軟岩最低ランクのGにも近い2MN/m2以下が全体の28.4%も占めています。これで応桑層は固結度が高いと言えるのでしょうか?

〇要請(番外)
応桑岩屑流堆積物が切土により表に出てきています。すべての切り土箇所で針貫入試験と水浸試験の実施,特に酸性変質帯での実施をお願いします。

◆再質問2-5および(番外)についての国交省回答
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2019/10/45c8a9fa50c1ab3632d2e0b7c857ba14.pdf