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石木ダム建設に「災害は追い風」、長崎県課長、失言を撤回、謝罪はせず

 日本列島を次々と台風が直撃し、各地で水害が発生する中、長崎県では水没住民の強制収用手続きを進めている石木ダムを巡って、10月30日にダムを推進する議員らが意見交換を行った非公式の場で、県の河川課長が「災害は追い風」との趣旨の発言をしたことが大きく報道されています。

 問題の発言が行われたことを最初に報道したのは、11月2日の毎日新聞長崎版でした。その後、11月5日には、ダム予定地住民らが長崎県知事に抗議文を提出。この日、問題の発言を行った河川課長が記者会見で発言を撤回、NHKや読売新聞社会面にまで報道されました。

 石木ダム事業では土地収用法に基づき、今月18日にダム予定地の住民は土地や家屋をすべて明け渡さなければならないことになっていますが、不要なダムのために13世帯の暮らしを破壊する強制収用に対して、世論の風当たりは強くなるばかりです。
 

◆2019年11月5日 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191105/k10012165401000.html
ー各地の災害を「追い風」 ダム建設めぐり長崎県課長が発言 撤回ー

 長崎県のダム建設をめぐって県の河川課長が、非公開の意見交換会の中で各地で頻発する災害を「追い風」と発言していたことが分かりました。元地権者の住民らは発言の撤回と謝罪を求める抗議文を出し、県は発言を撤回しました。

 先月、長崎県で建設が進められている石木ダムの建設推進派の県議会議員や県の担当者などが参加して、非公開の意見交換会が行われました。

 県によりますと、この中で事業を担当する県河川課の浦瀬俊郎課長が、台風による大雨災害など各地で頻発する災害を「追い風」と発言したということです。

 これについて元地権者の住民や支援者が5日、県庁を訪れ、「災害をみずからに有利な状況と捉え、ダム建設を強行しようとする認識の表れであり、全国の被災者を愚弄するもの」などとして発言の撤回と全国の被災者への謝罪などを求める抗議文を県側に渡しました。

 これを受けて、県の河川課長らが記者会見を開き、「追い風」と発言したことについて「誤解を生み、適切なことばではなかった。ことば自体は撤回させていただきます」と述べました。

 一方で「県内外で災害が発生し、平常時よりも議論が深まり、防災対策についての必要性も理解いただける状況にあるという趣旨だった」と釈明し、非公開の場での発言だったことを理由に謝罪はしませんでした。

◆2019年11月5日 読売新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191105-00050171-yom-soci
ーダム建設に「災害は追い風」、県課長発言に反対派抗議ー

 長崎県などが同県川棚町に建設を計画している石木ダムを巡り、県河川課の浦瀬俊郎課長が「災害は我々にとって追い風」と発言していたことがわかった。建設に反対する住民らは5日、県に抗議文を出した。

 県河川課によると、発言は10月30日、同町で行われた建設推進派の県議らとの意見交換会の中で出た。課長はその後、上司に対する説明で、「自然災害が多発する中で、激甚災害への対策について考えてもらう機会になるという趣旨だったが、適切ではなかった」と話しているという。

 住民側は抗議文で、中村法道知事に対し、課長に発言を撤回させることや、謝罪記者会見を行うことなどを求めた。5日は中村知事が出張中のため、県秘書課の担当者が「速やかに知事に伝える」と述べた。

 石木ダムを巡っては、13世帯約50人が暮らす建設予定地が18日に全て明け渡し期限を迎え、県は行政代執行による強制収用が可能となる。

◆2019年11月6日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/557153/
ー石木ダム「災害が追い風」 長崎県課長が失言ー

 長崎県と同県佐世保市が同県川棚町で計画する石木ダム事業を巡り、町内で開かれた意見交換会で県河川課の浦瀬俊郎課長が近年続く豪雨などの自然災害を念頭に「(治水対策に向けた)追い風だと思っている。この機会を生かさなければならない」と発言していたことが分かった。反対派の住民らは5日、県に抗議し、浦瀬氏は記者会見して発言を撤回した。

 意見交換会は10月30日、ダム推進派の県議たちが呼び掛け、町内の公民館で非公開であった。発言は、浦瀬氏ら県担当者が佐世保市議や川棚町議を含む議員から、ダムの治水機能の説明を求められた際のものという。浦瀬氏は会見で「防災対策の必要性を理解してもらう趣旨だったが、誤解を生んだ」と述べた。

 事業では、18日に住民13世帯が暮らす宅地などが明け渡し期限を迎え、県の行政代執行が可能となる。この発言に対し、住民ら約40人が県庁で中村法道知事宛てに抗議文を提出した。

 浦瀬氏の会見に同席した県土木部の天野俊男次長は「(事業に)直接的な影響がないよう努めたい」と述べた。 (野村大輔、華山哲幸)

◆2019年11月7日 長崎新聞
https://this.kiji.is/564619188869629025
ー長崎県課長「災害は追い風」 石木ダム反対派抗議、発言撤回ー

 長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業を巡り、県河川課の浦瀬俊郎課長は5日、先月下旬にあった推進派の会合で「去年、今年と大きな災害が起きている。追い風だと思っている」と発言したことを明らかにした上で、「不適切だった」として撤回した。
 県などによると10月30日、同町内で開かれた推進派議員らによる意見交換会で、治水の必要性について理解を深めるべきだという出席議員の意見に対し発言したという。会合は冒頭を除き非公開だった。
 「石木ダム建設に反対する川棚町民の会」(代表・炭谷猛同町議)など計6団体は5日午前、連名で中村法道知事宛ての抗議文を提出。「(発言は)災害を自らに有利な状況と捉え、全国の被災者を愚弄(ぐろう)する」と指摘し、謝罪会見を開きダム建設推進を前提とした姿勢を改めることを求めた。
 県庁で抗議した6団体の代表者や「石木ダム強制収用を許さない議員連盟」の所属議員ら計約40人からは「知事がこんな発言を許していれば命取りになる」「ダム建設ありきだからこんな発言が出た。河川行政のゆがみを正してほしい」などの意見が飛んだ。出張中の中村知事に代わり対応した県秘書課の伊達良弘課長は、知事に抗議内容をできるだけ早く報告すると応じた。
 抗議行動の後、同日午後に県庁で会見した浦瀬課長は、県内外で災害が発生し防災や治水に関心が寄せられていることから、より議論が深まって必要性も理解されるのではないかという趣旨だったと釈明。「災害が発生してよかったとは思っていない。被災者には申し訳ない」と述べた。