《台風19号検証》北茨城 水沼ダム緊急放流 水位調整、間に合わず

 10月に日本列島を直撃した台風19号の豪雨では、全国6つのダムで緊急放流が行われました。茨城県が管理する水沼ダム(大北川水系花園川、茨城県北茨城市華川)と竜神ダム(久慈川水系竜神川、茨城県常陸太田市下高倉)でも緊急放流が行われました。

 両ダムについて緊急放流に至るまでの経過を伝える記事が地元紙に掲載されました。荒れる気候の時代、貯水量に限りのあるダムの操作が難しいことが伝わってくるようです。両ダムの緊急放流は、相模川水系の城山ダムと同様にドタバタして行われており、もし雨が降り続いていれば、緊急放流が深刻な氾濫を起こしていたと思われます。

 なお、水沼ダムは総貯水容量223万㎥、竜神ダムは総貯水容量300万㎥のダムで、両ダムとも洪水調節のほかに、水道用水、工業用水、不特定利水の目的がある多目的ダムです。

◆2019年11月7日 茨城新聞
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191107-00000002-ibaraki-l08
ー《台風19号検証》北茨城 水沼ダム緊急放流 水位調整、間に合わずー

 台風19号が本県に上陸した10月12日夜から13日未明、水沼ダム(北茨城市華川町)と竜神ダム(常陸太田市下高倉町)は、貯水量が満杯となりダム決壊の危険があるとして、初の緊急放流に踏み切った。管理者の県によると、水沼ダムでは操作要領に従い事前放流による水位調整を2日前から始めたが、想定より早く大雨が降り出し、制限水位まで下げることが間に合わなかった。想定を超えた豪雨は今後のダム運用に課題を突き付けた。

■操作要領に明記
「もっと下げる予定だったが、想定より早く大雨が降り出した」。県河川課の担当者は、12日夜の記録を振り返って説明した。

県内八つのダムではそれぞれ建設時に操作要領が作成されており、「大型の台風の予想進路に基づき、大雨が降りそうな場合、事前に水位を低下させる旨が明記されている」(同課)。

花園川上流の水沼ダムでは10日に事前放流を開始。水位は3日間かけて当初より1メートル55センチ下げたが、計画した水位まで下げ切れずに豪雨が降り出した。結果、水位は上昇を続け、緊急放流を余儀なくされた。

同課によると、12日午後5時20分に「緊急放流の可能性あり」と北茨城市や消防、報道機関に伝達。同7時45分に「緊急放流の基準を超える見込み」、緊急放流を開始する30分前の同8時20分に「緊急放流を開始する」とアナウンス。実際に放流が始まった同50分に「緊急放流開始」をそれぞれに知らせた。

■伴う洪水リスク
北茨城市の防災担当者は県から緊急放流の連絡を受けた時の状況について、「そういうこと(緊急放流)が起こり得ると思っていなかった。甘いことじゃないと感覚的に分かった。花園川と大北川の水量が相当上がり、水があふれるだろうと考え、住民に避難指示を出す判断に至った」と振り返った。市は同8時34分、1万2036世帯に避難指示を発令した。

緊急放流は流入量と同量の水を放流する作業で、下流域の洪水リスクを伴う最終手段。下流域の同市磯原町の大北川では緊急放流の後、氾濫が確認された。

県によると、同日午後6時の花園(同市)の最大1時間雨量は55ミリ。13日午前2時現在、降り始めからの総雨量は464ミリと観測史上最大を記録した。

■竜神ダムも
竜神ダムは、水沼ダムが事前放流を決定した段階で水位がまだ低かったため、要領に従って事前放流を行わなかった。しかし、その後の雨量は予想を上回り、いきなり緊急放流を実施することになった。

二つのダムは40年以上前から運用されている県北地域の多目的ダム。どちらのダムも、緊急放流は今回が初めてだった。

県河川課担当者は当時を「夜間ということもあり、現場は緊迫していた」と振り返り、今後について「事前放流や通知の在り方などを含め検証し、課題を整理していきたい」と話した。

河川氾濫や土砂崩れを研究する茨城大の斉藤修特命教授は「土木事業は経験値でモノが造られているが、これまでにない規模の災害が頻発している。ダムの操作も今後は想定以上があるという心構えが必要。ハードに頼るだけでなく、避難や呼び掛けの仕方などソフト面を強化していくことも考えなければいけない」と語る。(三次豪、小原瑛平)