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国交省、台風19号豪雨における利根川上流ダム群の治水効果を発表

 国土交通省関東地方整備局はさる11月5日、台風19号豪雨に対する利根川上流ダム群の治水効果の速報値を発表しました。

★関東地方整備局のサイトより
「台風第19号における利根川上流ダム群※の治水効果(速報) ~利根川本川(八斗島地点)の水位を約1メートル低下~」

 同局は同じく5日に、相模川についても次のように発表しています。
「台風第19号における相模川上流2ダムの治水効果(速報)~相模川本川(神奈川県厚木地点)の水位を約1.1メートル低下~」

 以下は、台風19号豪雨に対する八ッ場ダムの治水効果についての論考を「論座」等で公表した嶋津暉之さん(当会運営委員、元・東京都環境科学研究所研究員)による、上記の発表についての見解です。

〈参考ページ〉
「論座「八ツ場ダムは本当に利根川の氾濫を防いだのか?」(嶋津暉之)」
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 国交省関東地方整備局による利根川についてのこのたびの発表値は、群馬県伊勢崎市の八斗島(やったじま)地点での上流ダム群の治水効果であって、八ッ場ダムをはじめ、各ダム個別の効果は示されていません。
 記事によれば、「各ダム個別の治水効果は検証しておらず今後行うかも未定。仮に行う場合でも時間はかかるといい、今回の大雨による治水効果も現段階では「分かっていない」」ということですから、八ッ場ダムだけの効果はわからないままになりそうです。
 しかし、上流ダム群の治水効果は各ダム個別の効果を積み上げて計算されるはずですから、各ダム個別の効果は不明という関東地方整備局の説明は理解できません。
 その点で、「八斗島地点の水位を約1メートル低下」という今回の発表にどの程度の根拠があるのか、大いに疑問です。ダムの効果を発表しておかないと印象が悪いということで、とにかく発表したようにも思われます。

 なお、本豪雨における八ッ場ダムの治水効果について、先に(「論座」等で)お伝えした推定値は、八斗島より下流にある埼玉県久喜市の栗橋地点17㎝の水位低下でした。八斗島地点と栗橋地点では約50㎞の距離があり、下流に行くほどダムの治水効果は小さくなっていきますので、今回の関東地方整備局の発表値とそのまま比較することは困難です。
 とりあえず、関東地方整備局の今回の発表の計算根拠資料を開示請求しましたので、その資料が得られたら、可能な範囲で検討してみたいと思います。

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 関連記事を転載します。

◆2019年11月6日 毎日新聞群馬版
https://mainichi.jp/articles/20191106/ddl/k10/040/116000c
ー台風19号大雨 危険水位超え抑制 7ダムの治水効果を検証 /群馬ー

 国土交通省関東地方整備局は5日、台風19号による大雨に対する利根川上流ダム群の治水効果の速報値を発表した。大雨でこれらのダムには水が計約1億4500万立方メートル(1立方メートルは1トン)たまったという。その結果、観測基準点のある伊勢崎市八斗島地点での観測最高水位は、これらのダムがないと仮定した場合よりも約1メートル低い約4・1メートルにとどまり、氾濫危険水位4・8メートルを超えなかったとしている。

 同ダム群は、矢木沢、奈良俣、藤原、相俣(以上はみなかみ町)、薗原(沼田市)の5ダムに加えて、本格稼働前に安全性を確認するために水をためる「試験湛水(たんすい)」を実施中の八ッ場ダム(長野原町)と藤岡市と埼玉県神川町にまたがる下久保ダム、草木ダム(みどり市)の計8ダムで構成され、今回の調査では草木ダムを除く7ダムの合計の治水効果を検証した。

 八ッ場ダムには1億4500万立方メートルの半分以上を占める約7500万立方メートルの水がたまった。同整備局担当者によると、各ダム個別の治水効果は検証しておらず今後行うかも未定。仮に行う場合でも時間はかかるといい、今回の大雨による治水効果も現段階では「分かっていない」と話している。

 八ッ場ダムについて赤羽一嘉国土交通相は、先月の参院予算委員会で「試験湛水を開始したばかりで水位が低かったため、予定の容量より多い約7500万立方メートルをためることができた」と説明。このことが下流の氾濫防止の大きな要因になったとの見方を示していた。【西銘研志郎】

◆2019年11月6日 上毛新聞
ー利根川水位1㍍低下 上流7ダムで効果 国交省ー

 台風19号に伴う大雨で、国土交通省関東地方整備局は5日、水をためて安全性を確認する試験湛水中の八ッ場ダム(長野原町)を含めた利根川上流の七つのダムが計約1億4500万立方㍍を貯留したと発表した。ダムがないと仮定した場合、利根川の八斗島観測所(伊勢崎市)で水位が1㍍上昇していたとしている。

 整備局によると、今回の台風では10月12日午後11時半に同観測所で最高水位の4.1㍍を観測。ダムがなかった場合は水位が5.1㍍まで上昇し、同地点の氾濫危険水位4.80㍍を超える計算となった。

 流域ごとの貯留量は、矢木沢、奈良俣、藤原、相俣(いずれもみなかみ町)と薗原(沼田市)の5カ所で計約3900万立方㍍。いずれも8~9割の貯水量になった。八ッ場ダムで約7500万立方㍍、下久保ダム(藤岡市)では約3100万立方㍍となり、ともにほぼ満水になった。

◆2019年11月7日 群馬テレビ
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20191107-00010000-gtv-l10
ー台風19号 利根川 7ダム治水効果で水位1m低下ー

 国土交通省関東地方整備局は、台風19号で八ッ場ダムなど利根川上流の7つのダムの治水効果により、利根川の水位がおよそ1メートル低下したと推定されると発表しました。

 国土交通省関東地方整備局は、台風19号で、八ッ場ダムを含む利根川水系の7つのダムが1億4500万立方メートルの水を貯留したと発表しました。利根川の水位は伊勢崎市八斗島地点で最高水位4.1メートルを観測しましたが、関東地方整備局では、ダムが全てないと仮定した場合、およそ1メートル水位が上昇し5.1メートルとなり、氾濫危険水位の4.8メートルを超えていたと見ています。

 流域ごとの貯留量はみなかみ町の八木沢、奈良俣など利根川本流域がおよそ3900万立方メートル、八ッ場ダムがおよそ7500万立方メートル、藤岡市の下久保ダムがおよそ3100万立方メートルでした。