国土交通省より、平成29年度末時点での全国の990基のダムの堆砂データが開示されましたので、お知らせします。
以下の文字列をクリックすると、データが開きます。ダムの総貯水容量、堆砂容量、平成29年度の堆砂量と共に、ダムのある水系、河川名、管理者名、流域面積、竣工年月が掲載されています。
◆全国のダム堆砂状況について(平成29年度末現在)
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2019/11/5bb317d8f480b5a68d0fe14870d810fd.pdf
ダム計画は100年分の堆砂容量を見込んでおり、少なくとも建設後100年はダムが使えることになっています。しかし、想定よりはるかに早く堆砂が進むダムが少なくありません。堆砂量が堆砂容量を超えたダムは、貯まり続ける土砂によって利水容量、治水容量を食われ、ダムの機能を果たすことができなくなります。流入する土砂は、川の流れが緩やかになるダム湖の上流側から貯まっていきますので、大雨が降るとダムの上流で氾濫が起きやすくなります。
ダムに貯まった土砂を浚渫することで、ダムの寿命を多少は先延ばしすることはできますが、浚渫費用、浚渫土砂の捨て場が必要となり、ダムの維持管理費が嵩みます。
火山性の脆い地質や急峻な地形に富んだわが国では、大量の土砂を運ぶ川が少なくありませんが、堆砂容量を決定するダム計画策定時には、ダムの効果を強調するために堆砂の予測は甘く見積もられがちです。
八ッ場ダムは来年4月から運用が開始されることになっていますが、試験湛水中の10月に関東地方を直撃した台風により、ダム湖の上流側には何メートルもの土砂がたまってしまいました。
全国各地に建設されたダムが老朽化し、堆砂が進行していく中、ダムの維持管理費が将来世代にとって大きな負担となり、洪水被害を拡大させることが懸念されます。
右の表では、上記の表の中から、平成29年度末時点での堆砂量が堆砂容量を超えているダムを黄色で示しました。堆砂量が堆砂容量を超えてはいないものの、以下で取り上げているダムは青色で示しています。
右の表あるいは下の文字列をクリックするとデータが表示されます。
https://yamba-net.org/wp/wp-content/uploads/2019/11/7bed509f7a84efe2f7911123ebe61733.pdf
堆砂量が計画堆砂容量を超えているダムの中には、昭和時代に建設された発電専用ダムや農業用ため池などの小規模ダムと共に、巨大ダムも含まれています。
首都圏では相模ダム(1947年、神奈川県、表7ページ)の堆砂量が堆砂容量の5倍を超えており、総貯水容量の三分の一近くが土砂で埋まっています。
利根川水系のダムとしては、半世紀前に建設された下久保ダム(1968年、表2ページ)で堆砂が進んでいます。平成29年度の堆砂量は985.4万立方メートルと、堆砂容量1,000万立方メートルにかなり近づいています。想定のほぼ倍のスピードで堆砂が進んでいることがわかります。
八ッ場ダム計画とセットで半世紀前にダム予定地上流につくられた品木ダム(1965年、表1ページ)は、吾妻川の中和事業によって生じる中和生成物を貯める、という特異な目的をもつダムです。堆砂量は総貯水容量の85%以上に達しており、国土交通省関東地方整備局はこれ以上堆砂量を増やさないために、年間3億円をかけて浚渫作業を行っています。
全国の巨大ダムでは、天竜川の佐久間ダム(1956年、表9ページ)は堆砂容量の倍近く、那賀川の長安口ダム(1956年、表2ページ)は堆砂容量の3倍超の土砂が貯まっています。黒部ダム(1960年、表8ページ)、吉野川の早明浦ダム(1975年、表2ページ)も堆砂量が堆砂容量を超えています。
北海道の二風谷ダム(1998年、表1ページ)は、当初計画の堆砂容量を大幅に引き上げていますが(総量比45%)、完成から20年を経て堆砂量が堆砂容量に近づいています。
電力ダム等の中には、ダム計画に堆砂容量が見込まれていなかったためか、堆砂容量が空欄になっているダムも多数あります。天竜川の平岡ダム(1952年、表9ぺージ)、泰阜ダム(1936年、表9ページ)は堆砂量が総貯水量の8割を超え、大井川の千頭ダム(1935年、表9ページ)は97%を超えています。
富士川の雨畑ダム(山梨県、日本軽金属、1967年、表7ページ)は、土砂でダムがほぼ満杯の状態となっており、上流の水害と下流の環境汚染が深刻な問題としてしばしば新聞で取り上げられています。雨畑ダムに近いところにある西山ダム(山梨県企業局、1957年、表7ページ)も堆砂量が堆砂容量の86%を超えています。