台風19号による豪雨水害を踏まえ、政府はダムの運用方法を見直すため、内閣官房で国交省部門を担当する和泉洋人首相補佐官を議長に、関係省庁の局長らで構成する検討会を本日開催すると報道されています。
ダムは想定を超える大雨が降ると、緊急放流を行わなければなりませんが、昨年7月の西日本豪雨では、愛媛県の肱川で国が管理する二つのダムの緊急放流により、8人の犠牲者が出ました。ダム下流ではダムの治水効果を前提として河川整備を行っているため、ダムが治水機能を失って緊急放流を行うと、越流・破堤などの水害が発生しやすく、流域住民が逃げ遅れる危険性があります。
報道されている検討会議は、都市用水や農業用水、発電を目的とした利水機能を持つダムの事前放流を促し、洪水時の貯水機能を高める(=緊急放流を回避する)ことを目的としているようです。
八ッ場ダムをはじめとする巨大ダムは、利水と治水の機能をあわせ持つ多目的ダムですが、人口減少、節水機器の普及、漏水防止対策などにより、全国で水需要が低下する傾向にありますので、利水機能を減らしても問題のないダムが多くなってきています。
◆2019年12月26日 上毛新聞一面
ーダムの貯水機能強化 関係省庁で検討会議 降雨期に事前放流ー
政府は25日、大雨時にダムが果たす役割を強化するため、関係省庁による検討会議を設置すると発表した。河川の氾濫が相次いだ台風19号が教訓で、発電や農業用水に水をためておく「利水ダム」も事前に放流し、貯水機能を高める。26日に初会合を開き、年内に基本方針を決定。梅雨などで洪水リスクが高まる来年6月ごろから実施する。
具体的な運用は、ダムを管理する国や自治体などが関係者と協議して決めるが、ダムを頼りにしている農家などに配慮し、対象は言って規模以上になる見込みだ。県内にある19の利水ダムも対象となる可能性がある。
国土交通省によると、利水限定のダムは全国に約900。水道や工業用水のためのダムもある。事前に放流すれば水位が下がり大雨に備えることができるが、本来は貯水が目的のため、短時間で放流できる排出口がない場合もある。予想より雨が少ない時は水位が回復しない懸念もある。
このため検討会議は、施設の改修促進、ダムの水を利用できなかった場合の損失を補う仕組みの創設を検討する。
一方、試験湛水中の八ッ場ダムを含め、大雨の際に水をためる治水機能を備えたダムは約560ある。ただ利水用に水もためておく多目的ダムが多いため、こちらも事前の放流を促す方針だ。
◆2019年11月25日 時事通信
https://trafficnews.jp/post/91632
ー政府、ダム運用見直しで検討会議=26日に初会合ー
政府は25日、台風19号などに伴う大雨で各地に被害が相次いだことを踏まえ、既存ダムの運用見直しに向けた関係省庁による検討会議を設置すると発表した。大雨の際にあらかじめダムの水を放流し、貯水できる量を増やせる仕組みを検討する。26日に初会合を開き、年内に運用見直しの基本的な方向性を策定。来年6月ごろからの運用開始を目指す。
検討会議は、和泉洋人首相補佐官を議長に、国土交通、経済産業、厚生労働、農林水産各省の局長級らで構成。ダムは洪水対策といった治水だけでなく、発電や上水道、農業など利水目的で使われるケースも多いため、大雨の際に活用できる貯水量は限られている。このため政府は、電力会社などダムの水を利用する関係者と協定を結ぶなどして、事前に水位を下げておける仕組みを設ける考えだ。
◆2019年11月26日 ロイター
https://jp.reuters.com/article/idJPT9N27G026
ー水害対策、利水ダムも活用できるよう運用見直しする=菅官房長官ー
[東京 26日 ロイター] – 菅義偉官房長官は26日、閣議後の会見で、台風19号による堤防決壊などを受けた水害対策について、いわゆる多目的ダムに加えて、電力などに使用する利水ダムの活用拡大を図れるよう運用を見直すと明らかにした。
菅官房長官は「台風19号では140カ所で堤防が決壊しまれにみる被害が出た」と指摘した上で、「一方で、国交省が管轄する560の多目的ダムのほか、農業や電力が使用する利水ダムが約900ある。全てのダムの貯水容量のうち、洪水調整容量は3割にとどまっている」と現状を説明した。
菅長官によると、政府はきょう、各省でダムの容量を洪水対策にさらに活用できるよう検討会議を設置し、それぞれのダムを所管する省庁が、国交省を中心に既存の全てのダムの運用の検証を行い、来年に備えることとしたという。
同長官は「どこまでダム容量を増やせるかわからないが、緊急放流を減らし、下流における急激な水位上昇を避けるようにしたい」と述べた。 (中川泉 )
◆2019年11月26日12時1分 NHK
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191126/k10012191361000.html
ー「緊急放流減らす」洪水対策活用へ既存ダム運用検証 官房長官ー
ダムによる洪水調節機能を強化するため、菅官房長官は閣議のあとの記者会見で、発電や農業用水用のダムを洪水対策にも活用することなどを検討する考えを明らかにしました。
先月の台風19号による豪雨では、各地でダムの貯水量が限界に近づき、流入する水と同じ程度の水を放流する「緊急放流」などが行われました。
これについて、菅官房長官は閣議のあとの記者会見で「わが国には国土交通省が所管する、およそ560の多目的ダムのほか、電力や農業用水などの利水ダムが、およそ900あるが、すべてのダムの貯水容量のうち、水害対策に使える洪水調節容量は3割にとどまっている」と指摘しました。
そのうえで26日夕方、関係省庁による会議を開いて議論を始めることを明らかにしたうえで「ダムの容量を洪水対策にさらに活用できるよう、既存のすべてのダムについて運用検証を行う。緊急放流の実施を減らし、下流での急激な水位上昇を回避できるように取り組んでいきたい」と述べ、発電や農業用水用のダムを洪水対策にも活用することなどを検討する考えを明らかにしました。
◆2019年11月15日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/nkd/industry/article/?DisplayType=2&n_m_code=081&ng=DGKKZO52180950U9A111C1PP8000
ー「7兆円計画」延長せず 国土強靱化、利水ダム活用で対応ー