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石木ダム事業再評価 佐世保市 水需要予測など 年度内完了めざす

 長崎県とともに石木ダム事業を推進している佐世保市が事業の工期3年延長に伴い、石木ダム事業の再評価を行うことになりました。
 石木ダムはこのたびの9回目の延長で、完成予定が2025年度に延期されました。石木ダムダム予定地では、住民らの反対運動により、道路の付替えなどの関連工事も進まず、本体工事に着手する見通しは立っていません。

 石木ダムの建設目的の一つは、佐世保市の水源開発です。佐世保市では人口が減少し、水需要が低迷し、水道漏水の問題なども発覚しているのですが、過大な水需要予測を立てて、事業への参画を正当化してきました。
 再評価は、厚生労働省から利水事業の補助金を受けるために必要な手続きです。佐世保市は1975年の事業採択以降、1999~2012年度に3回の再評価を実施し、いずれも「事業継続」と結論づけてきました。前回、2022年度まで工期が6年間延長されたときは、事業再評価をパスしてしまいました。

 地元住民を中心とした石木ダムの反対運動では、佐世保市が水需要の実績と乖離した架空予測を繰り返さないよう訴えています。西日本新聞は社説で近々行われる佐世保市の水需要予測について、「透明性を確保し、丁寧な評価を望みたい」と記しています。

◆2019年12月5日 長崎新聞
https://this.kiji.is/575135103516001377?c=62479058578587648
ー石木ダム事業再評価を表明 佐世保市 水需要予測など 年度内完了目指すー

  長崎県と佐世保市が東彼川棚町に計画する石木ダム建設事業で、佐世保市水道局は4日、水需要予測を含む利水面の事業再評価をすると表明した。再評価は本体関連工事の着手前だった2012年度以来で、本年度内の完了を目指す。

 佐世保市議会石木ダム建設促進特別委員会で説明した。

 再評価は反対派が疑問視する水需要予測のほか、代替案の可能性、費用対効果などをあらためて分析する。第三者からも意見を聞き、再評価報告書を国に提出して完了する。市水道局は「具体的な時期や内容などは未定」としている。

 佐世保市は利水事業として厚生労働省の補助を受けており、適宜、再評価することが義務付けられている。

 長崎県は15年度に工期を6年延長したが、市側は「大きな社会情勢の変化はない」として再評価を見送った。

 長崎県は11月に工期をさらに3年延長すると決定。市水道局は工期延長が計9年となることから、厚労省が再評価の実施要領に定める「大幅な工期の延長」に当たると判断した。

 特別委の前に開いた市議会本会議で朝長則男市長は「工期延長に伴う所要の手続きを進め、県とともに事業の確実な進展を図りたい」と述べた。

◆2019年12月3日 西日本新聞
https://www.nishinippon.co.jp/item/n/565146/
ー石木ダム事業 必要性の説明が不十分だー

 一度動きだしたら、状況が変わっても止められない。大型公共事業を巡って散々指摘されてきた問題ではないだろうか。私有地の強制収用まで準備しているのなら、慎重な上にも慎重な判断を求めたい。

 長崎県川棚町に県と佐世保市が計画する石木ダム建設(事業費約285億円)である。同市の利水と川棚川流域の治水を目的に1975年、国に事業採択されて44年になるが、本体に着工できていない。予定地の一部住民が反対し、立ち退きにも応じないことが最大の理由だ。

 反対住民らは「水の需要予測が実態とかけ離れている」「治水も河川改修で対応可能だ」として、ダムは必要ないと主張している。

 国の事業認定取り消しを求めた訴訟で、福岡高裁は先週末、一審長崎地裁に続き住民側の訴えを退けた。国や長崎県の判断に不合理はないとの理由だ。

 住民側は上告する方針で、工事差し止めを求める別の訴訟も係争中である。知事の判断で予定地を強制収用する代執行が可能な状態だが、着工はまだまだ見通せないと言える。

 反対がここまで強硬になった理由の一つに、県が82年、予定地の測量に県警機動隊を投入し住民を力ずくで排除した経緯がある。県はまず、信頼関係を損なった事実を重く受け止め、交渉の前提となる信頼回復に努めるべきだ。そうした意味で、県が交渉期間を確保するため工期を2025年度まで3年延長したことは評価できる。

 その上で再検討すべきは、反対住民が問う「水の需要予測」「治水の代替策」についてだ。豪雨災害が相次ぐようになり水害対策は重要で、渇水の不安を解消することも大切である。ただ、人口減少や経済情勢の変化など44年前とは諸条件が大きく異なることもまた明らかだ。

 国立社会保障・人口問題研究所によると佐世保市の人口推計は20年24万8千人、30年23万1千人で、10年の26万1千人から大きく減少する。水需要も比例すると考えるのが妥当だろう。

 石木ダムを造って日量約4万トンの水を新たに確保する必要性が実際にあるのか。佐世保市は水需要予測を含む利水の事業再評価を、予定を早めて実施する方針という。透明性を確保し、丁寧な評価を望みたい。

 治水面でも、県側は「100年に1度の規模の洪水に対応するためのダム」としてきたが、他の手段は本当にないのか。反対住民に限らず誰もが納得できる形で説明すべきだ。

 石木ダム建設は強制収用に反対する国会議員らの組織も発足し、全国的関心も集めている。一度立ち止まる勇気も必要だ。

◆2019年12月6日 長崎新聞
https://this.kiji.is/575484517319591009?c=39546741839462401
ー石木ダム理解、協力を 町長は従来答弁に終始 川棚町議会一般質問ー

 東彼川棚町議会は5日開会し、一般質問に7人が登壇した。県と佐世保市が同町に計画する石木ダム建設事業で、水没予定地に住む13世帯の宅地が11月、土地収用法に基づく明け渡し期限を迎えたのを踏まえ、今後の町の姿勢をただす質問が相次いだ。山口文夫町長は「住民に事業への理解と協力をお願いしたい」と従来通りの答弁を述べるにとどめた。

 水没予定地の住民、炭谷猛議員は、家屋の撤去や住民の排除など行政代執行の手続きが可能となり、「地元は緊迫した日々を強要されている」と指摘。「町長は住民の生命と財産を守るのが責務では」と迫った。

 これに対し、山口町長は「知事には対話の姿勢がある。対話での解決を願っている」と答えた。また、県が予備調査に入る1972年、当時の町長が「県が独断専行、強制執行などに出た場合、総力を挙げて反対する」との内容で住民側と交わした覚書について考えを問われ、「調査結果を住民側に報告した時点で覚書は履行された」と従来の見解を述べた。答弁の締めくくりに「古里に住み続けたいとの思いは理解するが、町長としての古里は川棚町。町民がより安全安心に生活できるよう、議員にも理解と協力をお願いしたい」と呼び掛けた。

 一方、川棚川下流域の治水面でダムの必要性を訴えている田口一信議員は、13世帯に土地の明け渡しを求める土地収用委員会の裁決について「行政庁の命令であり、強制力がある」と強調。「住民は早急に移転の方法を考えなくてはならない」とし、町の移転支援の方針をただした。山口町長は「町としての権限はなく、積極的にお願いできる立場にない。住民の『住み続けたい』という気持ちは尊重したい」とかわした。