大戸川ダム協議、京都府と滋賀県の議事録作成で差

 国土交通省が滋賀県に建設を計画している大戸川ダムについての情報です。
 淀川流域の滋賀県と大阪、京都、三重の4府県知事は2008年、「4府県知事合意」により、大戸川ダムは「一定の治水効果がある事は認める」ものの、「京都府の技術検討会における評価においても、中・上流の改修の進捗とその影響を検証しながら、その実施についてさらに検討する必要があるとされており、施策の優先順位を考慮すると、河川整備計画に位置づける必要はない」と共同で凍結を求めました。しかし、滋賀県では嘉田由紀子氏に代わって就任した三日月大造知事が2018年6月の知事選で自民党の支援を受けるため、建設推進へと方針を転換しました。

 その後、滋賀県と京都府の協議が行われ、京都府は建設推進に難色を示しましたが、滋賀県側はその事実を記録に残しませんでした。安倍政権における官僚の忖度が問題となっていますが、滋賀県ではダム推進に舵を切った三日月知事への忖度が公文書の内容を歪めているのでしょうか。
 以下の記事では、公文書の重要性が低くなることの危険性を識者の言葉で指摘しています。
 

◆2019年12月6日 朝日新聞滋賀版
https://digital.asahi.com/articles/ASMD476VYMD4PTJB013.html?iref=pc_ss_date
ー大戸川ダム協議、京都府と滋賀県の議事録作成で差ー

 滋賀県が建設凍結から推進に舵(かじ)を切った大戸川ダム(大津市)について、朝日新聞は7月の県と京都府の担当者会議の協議録を情報公開請求し入手した。府作成の文書は建設に慎重な府の見解があるが、県の文書には見られなかった。巨額の負担が絡むだけに建設合意への壁は高く、専門家は「難しい交渉こそ丁寧に残すべきだ」と指摘する。

 大戸川ダムは1968年に国が計画した。しかし2008年に事業費負担をめぐって県と大阪、京都、三重の4府県知事が「優先順位を考慮すると、河川整備計画に位置づける必要はない」と共同で意見表明。国は翌年、事業を凍結した。

 ただ滋賀県議会では自民党などが17年12月、早期着工を求める決議案を賛成多数で可決。県は翌年5月、治水効果などを検証する独自の勉強会を設置した。三日月大造知事は同年6月の知事選で自民党などの支援を受けて再選。勉強会の結果を踏まえて今年4月、建設推進に方針を転換した。

 その後、県は下流域の両府に方針が変わった経緯や理由を説明し、建設への理解を求めている。県流域政策局の職員らが6月に大阪府、7月に京都府の担当者と協議をしている。

 入手した協議録は京都府との会合分で、府県職員がそれぞれ作成した。府側の協議録では、滋賀側は独自に開いた勉強会で大戸川ダムの治水効果を確認したなどと説明している。これに対して府側は08年に実施した府の技術検討会で「大戸川ダムの緊急性は低い」と評価したことに触れ、「当時評価した状況から大きな変化はないと考えている」と回答していたことなどがわかる。

 一方、滋賀県側の協議録には府側の回答の記述はない。府の対応は①事務レベルで公式に説明を聞いた②大戸川ダムは滋賀県に及ぼす効果が大きいことを理解③今後も相互に意見交換していくことを確認――とだけ箇条書きされていた。

 建設には下流域の合意が欠かせないが、難航が予想される。建設費約1080億円のうち、3割を大阪、京都両府と滋賀県が負担する。滋賀県は8億円程度だが、両府で300億円以上の支出が生じるからだ。

 後々の検証などのためにも交渉過程や協議内容は記録に残す必要がある。京都府河川課の担当者は協議には繊細になる部分があるとの認識をしたうえで「双方の見解はきちんと残すべきだという判断だ」と話す。

 滋賀県流域政策局の担当者は「どこを残すかは職員の判断」と説明。三日月知事には作成した協議録で報告しているといい「知事に上げるかどうかが一つの判断基準で、府側の見解は不要ということ」と話した。

 三日月知事は朝日新聞の取材に「協議で府が述べることは想定内。細かく報告しなくても問題ないと判断したのだろう」と推測。一方で「治水のことは政治的な経緯があり、利害も対立する。発言を残すことは大事だ」との見解を示した。

 行政の政策決定に詳しい同志社大の真山達志教授は「政策決定過程の記録の作成、保管がいい加減な昨今の行政の問題点を象徴している。公文書の重要性への認識が低くなると、行政が不都合な情報を隠すことが当たり前になりかねない。職員の意識を変える必要がある」と指摘する。(山中由睦(よしちか)、新谷(しんや)千布美)