長野県は県営の二基のダムの堆砂が進んでいることから、来年、改修工事に着手するとのことです。
この改修工事は総事業費710億円、事業完了は2062年度の予定とのことです。
ダムへの堆砂は治水容量を減らし、洪水被害を拡大させる可能性がありますから、対策は必要なのでしょうが、対策工事に42年もかかって大丈夫なのでしょうか?
長野県の事業評価監視委員会のページには、この事業に関する県河川課の説明と委員との質疑が議事録として掲載されており、時間も費用もかかるバイパス工事ありきの改修計画に批判意見もあったようです。
全国には堆砂が進んでいるダムが他にも沢山あり、今後、さらに大きな問題となっていくことが予想されます。以下のページに全国のダムの堆砂に関するデータを掲載しています。
〈参考ページ〉
〇「全国のダム堆砂の最新データ(平成29年度末)を国交省が情報開示」
〇「令和元年度 第2回長野県公共事業評価監視委員会 」(令和元年10月15日) 3~16ページより
〈現行の土砂収支〉
奥裾花ダムー 年間9万立米の土砂が流入。ダムに約7万立米たまり、残り約2万立米が下流に流れる。
裾花ダムー 年間約17万立米の土砂がダムに流入。約10万立米ダムにたまり、約6万立米下流に流れる。
改修工事でバイパスを設置することにより、ダムに貯まる土砂は奥裾花ダムでは約3千8立米、裾花ダムでは3万立米に減らす。奥裾花ダムの上流域では、平成9年5月に大規模地すべりが発生。ダム上流域の荒廃地は約3万平方キロメートル、流域面積の約1%強に及ぶ。総事業費710億円の内訳は、両ダムの土砂バイパス設置に約340億円(20年)、奥裾花ダム嵩上げによる治水容量の確保に370億円。
◆2019年12月17日 信濃毎日新聞
https://www.shinmai.co.jp/news/nagano/20191217/KT191216ATI090011000.php
ー長野の2ダム改修へ調査 県、来年度からー
県は来年度、県営裾花ダム(長野市)と県営奥裾花ダム(同)の改修工事に向けた調査、設計に着手する。両ダムは建設から40年前後が経過。ダム湖の底にたまった土砂の量が計画を上回り、増水時に水をためられる容量「洪水調節容量」が減っている。このため、土砂を含んだ水がダム湖に流れないようにするバイパストンネルの整備などを検討。事業完了は2062年度の予定で、総事業費は710億円を見込む。
裾花ダムは1970(昭和45)年、奥裾花ダムは80年に完成。県河川課によると、ダムの上流域にある山間部の荒廃が進み、土砂が出やすくなっているという。ダム湖に100年でたまると見込まれる「計画堆砂量」は既に、裾花ダムで107%、奥裾花ダムは141%に達している。
改修工事では土砂バイパストンネルを整備し、ダム湖への土砂流入を防ぐ。バイパストンネルの長さは裾花ダムが5・2キロ、奥裾花ダムは3・8キロを見込む。ダムのかさ上げなどで治水容量を確保し、増水時でも必要な水をためられるようにする。
県の想定によると、裾花川流域で100年に1度の雨が降った場合、県庁や長野駅など市街地を含む1259ヘクタールが浸水。住宅は2万1476戸が浸水し、経済被害は5138億円に上るとしている。裾花ダムでは2017年、放流量を調節するゲートに土砂や流木が詰まり、開けなくなる不具合が発生。たまった土砂をさらう「しゅんせつ船」を稼働し、取り除いた経緯がある。
◆2019年8月9日 長野建設新聞
https://www.nikoukei.co.jp/kijidetail/00390723
ー裾花・奥裾花ダム再生は710億円/20年度大型事業 5カ所で新規着手予定 ー
県は2020年度、総事業費10億円を超える大型事業への着手を5カ所で予定している。事業費が最も大きいのは長野市裾花・奥裾花ダムの再生事業。710億円を投じ、土砂流入を抑制する土砂バイパストンネルの建設やダムのかさ上げなどを行う。これ以外の4カ所は全て道路系事業で、伊那インター線道路改築(伊那市)は事業費46億円、諏訪辰野線道路改築(岡谷市~諏訪市)は25億円、国道403号道路改築(飯山市~木島平村)は21億円、若宮線街路事業(千曲市)は13億円を見込む。
5カ所は7日開かれた県公共事業評価監視委員会の本年度初会合に新規評価箇所として諮られた。同委での審議結果などを踏まえ、20年度の着手を目指していく。
■裾花・奥裾花ダム再生事業(長野市)
裾花・奥裾花ダム再生事業は2062年度までの43年間で実施する計画。裾花ダムは建設から40年、奥裾花ダムは50年が経過したところだが、上流域の荒廃が著しく、両ダムとも100年で満砂となる計画堆砂量をすでに超過(裾花ダム107%、奥裾花ダム141%)。奥裾花ダムに至っては治水容量へも影響が及んでおり、ダム管理上支障を来している。このため土砂流入対策として洪水時に土砂を含んだ水を別に流す土砂バイパストンネルを整備し、ダムへの土砂の流入を抑制するとともに、ダムのかさ上げなどによる治水容量の確保対策も行う。
事業期間の前半24年度までは土砂バイパストンネルの整備期間に充てる。トンネルは高さ、幅とも4m(R2000)を想定。延長は裾花ダムが5.2㎞、奥裾花ダムが3.8㎞を見込む。事業費は340億円。25年度以降は治水容量の確保対策を実施する。事業費は370億円。
■伊那インター線道路改築事業(伊那市)・・・(以下略)