事前放流協定、98水系で 発電・農業用ダム 下流の氾濫防ぐ

 今年10月の台風19号による豪雨では、各地でダムの貯水量が限界に近づき、水害の危険性がある「緊急放流」が行われました。
 このため、菅官房長官が11月、ダムの緊急放流を減らすために、既存ダムの運用を見直す方針を示しました。 
 総理官邸に設置された「既存ダムの洪水調節機能強化に向けた検討会議」は、11月26日と12月12日に会議を開き、12月12日の会議で「既存ダムの洪水調節機能の強化に向けた基本方針」を決定しました。
 これを受けて、国交省は来春までに、ダムの事前放流についての基準を示したガイドラインを作成することになりました。
 
 ダムには利水と治水の役割があります。利水のためにはダムに水を貯めておかなければなりませんが、治水のためには洪水に備えてダムの水位を下げておく必要があります。わが国には治水と利水を一つのダムでこなす多目的ダムが多く、洪水に備えて十分な事前放流を行えないとされてきました。 
 なお、昨年7月の西日本豪雨において肱川の野村ダムと鹿野川ダムもそれなりの事前放流をしていましたが、それでも凄まじい緊急放流を行う事態になりました。

〈参考ページ〉「「緊急放流減らす」 既存ダム運用検証 官房長官」

 関連記事を転載します。

◆2019年12月23日 日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGKKZO53674160S9A221C1NN1000/
ー事前放流協定、98水系で 発電・農業用ダム 下流の氾濫防ぐー

 国土交通省は国内の河川98水系の発電用や農業用の利水ダムを対象に、台風などによる豪雨の前に水位を下げてもらう協定を電力会社や地方自治体と個別に結ぶ。事前放流によって貯水力を高め、下流の河川の氾濫や堤防の決壊を防ぐのが狙いだ。協定には洪水対策に活用できるダムの容量や、事前放流する際の条件となる降雨量などを明記する。洪水対策で既存ダムを有効活用する。

 国内には「国土保全に重要」とされる1級水系が109あり、そのうちダムがある98水系を対象とする。稼働中のダムは1460あり、約180億立方メートルの有効貯水容量がある。ただ発電や農業用水などの目的で整備されている施設も多く、洪水対策に活用できる容量は約3割にとどまる。

 ダムの新設には多額の建設費と長い工期が必要なため、政府は既存のダムの有効活用を進める。そのため利水ダムに事前放流を指示する際の要件を細かく定めて、関係者との間で水系ごとに治水協定を結ぶことにした。2020年6月ごろから運用を始める。

 協定には洪水対策に利用できるダムの容量や、事前放流の量、放流で水不足が生じないようにするための措置などを盛り込む。国交省は事前放流の開始や中断の基準を示したガイドラインを20年春までに作成する。また各ダムの水位や流入・放流量といったリアルタイムのデータを関係者間で共有するための情報網も整備する。

 都道府県が管理する2級水系でも必要に応じて同様の取り組みを進めていく。

◆2019年12月13日 NHKニュース
https://www3.nhk.or.jp/lnews/fukushima/20191213/6050008305.html
ーダム「事前放流」ルール作り始まる/福島ー

 全国で豪雨災害が相次ぐ中、台風19号の際にダムの下流域で氾濫のおそれが出る「緊急放流」が行われた福島県で、大雨の前にあらかじめ放流しておく「事前放流」のルール作りが始まったことが分かった。国土交通省によると、事前放流のルールが定められているダムは、10月時点で全国562か所のうち54か所で、東北には1つもないが、福島県がいわき市にある高柴ダムと四時ダムで「事前放流」のルール作りに着手したことが、県への取材で分かった。福島県河川整備課は「災害の備えとして事前放流の必要性が高まっている。国の意向も確認し、利水者との協議を進めたい」としている。「事前放流」の課題は、雨の量が想定より少なく、水位が戻らなかった場合に水の利用者に影響を与えることだが、今回対象となる2つのダムは工業用水などの供給が目的で、福島県は企業などへの補償に関する協定の締結も検討し、協議を進めることにしている。

◆2019年12月30日 神奈川新聞
https://this.kiji.is/584078808796152929?c=62479058578587648
ーダム洪水調整容量倍増へ 利水活用で政府、台風19号教訓ー

 台風19号を教訓に、政府はダムの洪水調節機能を強化する方針を固めた。発電や農業用に水をためておく「利水ダム」にも洪水調節機能を持たせることで、大雨や台風に対応できる貯水容量の倍増を目指す。来夏の台風シーズンを見据えて調整を進める。

 菅義偉官房長官(衆院神奈川2区)は神奈川新聞社の取材に「現在、全国のダムの容量のうち洪水対策に使える部分は3割しかないが、これを6割まで倍増させることを目指して調整を進めたい」と強調。洪水調整の権限を国土交通省に一元化させる考えも示し、「安心できる仕組みをつくりたい。台風シーズンまでに対応したい」と述べた。

 全国には稼働しているダムが計1460カ所ある。有効貯水容量の合計は約180億立方メートルで、このうち洪水調節に使える容量は約3割(約54億立方メートル)にとどまっている。

 政府は29日までに、洪水調節機能強化に向けた基本方針を策定。一級水系のうち、ダムがある全国の98水系でそれぞれ国がダム管理者や利水者との協議の場を設け、事前放流の実施方針や判断の条件などについて2020年5月までに協定を締結する。国交省が水系ごとに統一的な運用を図るほか、関係自治体との間で即時に連絡を取れる体制の構築も目指す。

 利水ダムが洪水に備えてあらかじめ貯水を出す事前放流を行う際、利水容量が確保できなかった場合の損失補填制度についても検討する。