熊本県を流れる球磨川にある瀬戸石ダムの堆砂の進行によって、ダム上流の河川水位が高くなってきたので、熊本県が県道の嵩上げ工事を行っています。市民団体「瀬戸石ダムを撤去する会」がその工事費用を、ダムを管理する電源開発に請求するよう熊本県に要請したとのことです。
瀬戸石ダムは総貯水容量993万㎥、堆砂容量77万㎥の電源開発のダムです。2017年度末の堆砂量は99万㎥で、堆砂容量をかなり上回っています、ダムの堆砂は計画ではダム貯水池の底の方からたまっていくことになっていますが、実際は堆砂の大半はダム貯水池の上流端からたまっていくので、ダム貯水池の上流域が氾濫常襲地帯になることがしばしばあります。
瀬戸石ダムの堆砂は、ダム上流の洪水リスクを高めるとともに、ダム下流の河川環境を悪化させています。球磨川では県営・荒瀬ダムの撤去を求める流域住民の運動が熊本県を動かし、2012年度~2017年度までの6年をかけてわが国初の本格的なダム撤去が実現しました。住民らは瀬戸石ダムが撤去されなければ、球磨川の清流は元には戻らないと、瀬戸石ダムの撤去も求めています。
◆2019年1月7日 毎日新聞熊本版
https://mainichi.jp/articles/20200107/ddl/k43/040/398000c
ー「電源開発に費用請求を」 瀬戸石ダムを撤去する会、県道工事で熊本県に要請ー
熊本県を流れる球磨川の上流に位置する瀬戸石ダム(球磨村、芦北町)によって川の水位が高くなり、降雨時に県道の冠水を起こしているとして、市民団体「瀬戸石ダムを撤去する会」が、県道かさ上げの工事費用を、ダムを管理する電源開発(東京)に請求するよう熊本県に要請した。
瀬戸石ダムは、発電専用の重力式コンクリートダムで1958年に完成した。高さ26・5メートル、長さ139・4メートルあり、最大出力は2万キロワット。
昨年7月の降雨時に、ダム上流の芦北町箙瀬(えびらせ)地区などで球磨川左岸側県道の冠水被害が発生。熊本県は2017年春から冠水防止のため、県道を約1・7キロにわたって1~4・6メートルかさ上げする工事を、24年完了を目標に続けている。工事費は総額約9億5600万円。
「撤去する会」は、ダムが川の水をせき止め、川床に土砂を堆積(たいせき)させたために川の水位が上がったとし、「箙瀬地区では、ダムができる前に比べて水位が10メートル近く高くなっていると推定できる」とした。
県側は「県道には元々低くなっている所がある。電源開発も川の土砂を毎年撤去していると聞いている」と説明したが、「撤去する会」は冠水防止の県道工事費用を、電源開発に負担させるよう県に求めた。【山本泰久】