八ッ場あしたの会は八ッ場ダムが抱える問題を伝えるNGOです

八ツ場ダム完成控え 長野原に団体設立へ

 八ッ場ダムを抱える群馬県長野原町では、3月のダム完成を見据え、地域活性化のための新組織を立ち上げることになりました。
 以下の記事にもあるように、「三つの観光協会が独自に発信してきた観光情報を一元化」するとのことですが、かつては長野原町で最も多くの集客を誇った川原湯温泉街が水没し、ダム湖畔での再建が大きな課題となっています。
 川原湯温泉にとって最も重要なのは、温泉の維持管理ですが、維持管理の問題は未解決なことから公にされておらず、記事でも触れられていません。

 ダム湖畔の代替地に移転した川原湯温泉は、水没地から源泉を複数のポンプで引湯しています。水没地の川原湯温泉では、源泉の周辺に自然に温泉街が形成され、温泉街の高低差を利用して温泉を配湯していたため、維持管理費がほとんどかかりませんでした。現在、電気代、配湯施設保守点検にかかる費用(年間平均1728万円)は国交省八ッ場ダム工事事務所が負担していますが、ダム完成後は地元負担になります。川原湯地区では、将来にわたって地域で温泉を利用できるようにするため、維持管理費を抑える方策を模索していますが、源泉から遠く離れた広大な代替地への引湯には、長距離の引湯管と多数のポンプが必要です。温泉を利用する旅館等の施設も地区人口も激減してしまった川原湯温泉にとって、維持管理費が過重な負担となることが懸念されます。

◆2020年2月12日 朝日新聞群馬版
https://digital.asahi.com/articles/ASN2C71KSN2CUHNB003.html?iref=pc_ss_date
ー八ツ場ダム完成控え 長野原に団体設立へー

 今春予定される八ツ場ダムの完成を見据え、地元の長野原町は4月、新たに一般社団法人「つなぐカンパニーながのはら」(つなカン)を立ち上げる。地域づくりを担う住民や各団体をつなぎ、若い世代の人材を育てるのが狙いだ。11日は住民説明会が開かれた。

 ダム周辺には温泉や道の駅をはじめ、野外遊具、滞在型農園、水没地で発掘された遺物を紹介する歴史遺産展示センターなど様々な振興施設が整備される。ダムから離れた北軽井沢地区にもキャンプ場や季節ごとのイベントなどの魅力があり、ダムだけではなく「オール長野原」での活性化が課題になっている。

 「つなカン」の代表には萩原睦男町長が就き、メンバーには観光協会、川原湯温泉関係者、ボランティア団体関係者らが入る。活動を担う住民の参加を呼びかけている。

 事業として、三つの観光協会が独自に発信してきた観光情報を一元化。つなカンが運営する専用の観光ポータルサイト「ながのはら♪ら♪ら♪」を通じ、町全体で地域情報を発信する。

 住民による提案を資金面も含めて支援する「3人寄ればなんかできる」プロジェクトも始める。定期的に参加自由で住民らが意見を出し合う「つなカンミーティング」も開く予定だ。

 副会長になる予定の北軽井沢地区の黒田美弥子さんは「意見を出し合ってアイデアを実現したい。一人でも多くの女性に参加してほしい」と抱負を語った。

 説明会には住民ら約100人が参加。「若い人が集まるように情報発信を」「元気な年寄りが活躍できる場になってほしい」などの意見や要望が出された。(泉野尚彦)

—転載終わり—

写真=川原湯温泉が移転した打越代替地が左手に、ダム湖に沈んだ旧温泉街跡が右手に見える。八ッ場大橋(湖面橋)より2/15撮影。

写真=ダム堤の右岸側に広がる打越代替地には、八ッ場大橋(湖面橋)の上流側から下流側まで広大な土地に温泉を循環させ、5軒の旅館(民宿含む)と共同湯「王湯会館」で温泉を配湯するため、大きなポンプを利用している。

写真=ダム湖は昨年12月12日より最低水位を維持しているため、水没した旧温泉街の旅館の礎石や雑木林が湖面に姿を見せている。