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国交省による、台風19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会の資料

 さる2月14日、国土交通省が「第1回 令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会」を開催しました。その配布資料が公開されましたので、お知らせします。

 ★国土交通省ホームページ 水管理・国土保全局 治水課
  「第一回 令和元年台風第19号の被災を踏まえた河川堤防に関する技術検討会」配布資料
   http://www.mlit.go.jp/river/shinngikai_blog/gijutsu_kentoukai/dai01kai/index.html

 上記の資料について、嶋津暉之さん(当会運営委員、元・東京都環境科学研究所研究員)の意見を以下にお伝えします。

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 この資料を見ると、興味深いところがいくつかあります。
 「資料2-1 河川堤防の現状」の10ページ(以下の画像)に被覆型の耐越水堤防(アーマーレビー、フロンティア堤防)の実施例(9河川)が示されています。ただし、「試験施工」となっています。 

 この「耐越水堤」はダム反対運動に取り組んできた私たちが普及を求めてきたものです。建設省が一度は2000年に全国に普及させようと関係機関に通知したものですが、2002年に通知を撤回し、その後は国土交通省が認めない工法となりました。2001年12月に川辺川ダムの是非をめぐる住民討論集会があり、この集会で、「耐越水堤防を導入すれば川辺川ダムは要らないのではないか」と指摘されたために、ダム推進に都合の悪い耐越水堤防工法がお蔵入りになったのではないかと言われてきました。

 「資料3-1 越水を想定した河川堤防強化にあたっての課題」の5ページ(以下の画像)には、「越水を想定した河川堤防強化」として、被覆型の耐越水堤防工法が示され、「裏法面をシートやブロック等で被覆した堤防 100~150万円/m程度」と工費も書かれています。

 同じ資料の6、7ページには「コンクリート等の剛体により土堤法面を被覆した場合、沈下等による内部盛土の空洞化に対して、維持管理上 の注意を払う必要がある。」などの検討事項が書かれていますが、この工法に対して拒絶反応を示してきた従来の国土交通省の姿勢からみると、かなり変わったように思います。

 昨年10月に襲来した台風19号による洪水では、国管理河川の12箇所・県管理河川の128箇所で堤防が決壊しました。国土交通省も背に腹は代えられず、封印してきた耐越水堤防工法の検討を始めたように考えられます。この耐越水堤防工法によって全国の堤防が強化されていくことを強く期待します。